廣至德章第十三
〔広至徳章第十六〕(古文)
子曰、君子之教以孝也、非家至而日見之也。
子曰、君子之教以孝也、非家至而日見之也。
子曰く、君子の教うるに孝を以てするや、家ごとに至って日ごとに之を見るに非ざるなり。
- この章は、「開宗明義章第一」にある「至徳」について詳しく述べている。
- 広至徳 … 至徳を広むる。「至徳」は、無上の徳。孝徳。「広」は、広める。明らかにする。
- 古文では「広至徳章第十六」に作る。
- 君子之教以孝也 … 昔の立派な王が民に孝道を教えるとき。「君子」は、ここでは先王を指す。
- 非家至而日見之也 … 一軒一軒民家を廻り歩いて、毎日毎日民に会って教えたわけではない。古文には「也」の字なし。
教以孝、所以敬天下之爲人父者也。
教うるに孝を以てするは、天下の人の父たる者を敬する所以なり。
- 教以孝 … 民に孝道を教えられたのは。
- 所以敬天下之為人父者也 … 広く世間一般の人々に父たるものを敬うようにさせたいがためである。
教以悌、所以敬天下之爲人兄者也。
教うるに悌を以てするは、天下の人の兄たる者を敬する所以なり。
- 教以悌 … 民に兄に仕える道を教えられたのは。
- 悌 … 兄に仕えること。兄に従うこと。古文では「弟」に作る。
- 所以敬天下之為人兄者也 … 広く世間一般の人々に兄たるものを敬うようにさせたいがためである。
教以臣、所以敬天下之爲人君者也。
教うるに臣を以てするは、天下の人の君たる者を敬する所以なり。
- 教以臣 … 民に臣下としての道を教えられたのは。
- 所以敬天下之為人君者也 … 広く世間一般の人々に君主たるものを敬うようにさせたいがためである。
詩云、愷悌君子、民之父母。
詩に云う、愷悌の君子は民の父母なり、と。
- 詩 … 『詩経』大雅・泂酌篇の一節。ウィキソース「詩經/泂酌」参照。
- 愷悌君子、民之父母 … 楽しみ心和らぐ君子は、まことに民の父母とも仰ぐお方である。
- 愷悌 … 易らぎ楽しむ。にこやかに楽しむ。心和らげる。
非至徳、其孰能順民、如此其大者乎。
至徳に非ざれば、其れ孰か能く民を順うること、此の如く其れ大なる者ならんや。
- 非至徳 … 無上の徳の持ち主でなければ。
- 其孰能順民 … いったい誰が民を従順にさせることが。
- 順 … 古文では「訓」に作る。
- 如此其大者乎 … このように偉大なことであろうか。
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