庶人章第六
〔庶人章第六〕(古文)
用天之道、分地之利、謹身節用、以養父母。
用天之道、分地之利、謹身節用、以養父母。
天の道を用い、地の利を分かち、身を謹み用を節し、以て父母を養う。
- この章は、庶民、特に農民の孝道について述べている。
- 庶人 … 一般の民衆。庶民。ここでは特に農民を指す。
- 古文では、この章を庶人・孝平の二章に分けている。
- 用天之道 … 春夏秋冬の四季の変化に従って農作業をすること。古文では「子曰、因天之時」に作る。
- 分地之利 … 土地の性質の良し悪しに従い、栽培に工夫する。
- 分 … 古文では「就」に作る。
- 謹身 … 身の振る舞いを慎む。
- 節用 … 財産を節約する。
- 以養父母 … 父母に孝養を尽くす。
此庶人之孝也。
此れ庶人の孝なり。
- 此庶人之孝也 … これが庶民の孝行というものである。
〔孝平章第七〕(古文)
故自天子、至於庶人、孝無終始、而患不及者、未之有也。
故自天子、至於庶人、孝無終始、而患不及者、未之有也。
故に天子より、庶人に至るまで、孝に終始無くして、及ばざるを患うる者は、未だ之れ有らざるなり。
- 古文では「故自天子~未之有也」を独立させて「孝平章第七」としている。
- 故自天子 … だから、上は天子から。古文では「子曰、故自天子以下」に作る。
- 至於庶人 … 下は庶民に至るまで。古文では「至于庶人」に作る。
- 孝無終始 … 孝道の始めと終わりとを全うすることができなくて。「始」は開宗明義章の「親に事うるに始まり」(始於事親)を指し、「終」は「身を立つるに終る」(終於立身)を指す。異説多し。古文では「孝亡終始」に作る。
- 患不及者 … 自分には孝の実践に及ぶことができないなどと思い悩む者は。
- 患 … 思い悩む。くよくよと気にする。
- 未之有也 … 絶対にいないものである。
今文孝経 | |
開宗明義章第一 | 天子章第二 |
諸侯章第三 | 卿大夫章第四 |
士章第五 | 庶人章第六 |
三才章第七 | 孝治章第八 |
聖治章第九 | 紀孝行章第十 |
五刑章第十一 | 広要道章第十二 |
広至徳章第十三 | 広揚名章第十四 |
諫争章第十五 | 応感章第十六 |
事君章第十七 | 喪親章第十八 |
閨門章第十九(古文のみ) |