紀孝行章第十
〔紀孝行章第十三〕(古文)
子曰、孝子之事親也、居則致其敬、養則致其樂、病則致其憂、喪則致其哀、祭則致其嚴。
子曰、孝子之事親也、居則致其敬、養則致其樂、病則致其憂、喪則致其哀、祭則致其嚴。
子曰く、孝子の親に事うるや、居るには則ち其の敬を致し、養いには則ち其の楽しみを致し、病には則ち其の憂いを致し、喪には則ち其の哀しみを致し、祭には則ち其の厳を致す。
- この章は、孝子の親への仕え方について具体的に説いている。
- 紀孝行 … 孝行について書き記す。「紀」は「記」に通じ、書き記すの意。
- 古文では「紀孝行章第十三」に作る。
- 孝子 … 親孝行な子。
- 居則致其敬 … 家にいるときは、できるだけ心から親を敬う。
- 致 … 力を尽くす。
- 養則致其楽 … 親を養うときは、できるだけ親を喜ばせる。
- 病則致其憂 … 親が病気のときは、心から心配する。
- 病 … 古文では「疾」に作る。
- 喪則致其哀 … 親が亡くなり喪に服するときは、心から哀しむ。
- 祭則致其厳 … 親の霊を祀るときは、厳粛に行う。
五者備矣、然後能事親。
五つの者備わりて、然る後能く親に事う。
- 五者備矣 … 以上の五つのことができて。この五つのことが完備されて。
- 然後 … 「しかるのち」と読み、「そうしてはじめて」と訳す。
- 能事親 … 親によく仕えることができたと言える。古文では「能事其親」に作る。
事親者、居上不驕、爲下不亂、在醜不爭。
親に事うる者は、上に居て驕らず、下と為って乱れず、醜に在って争わず。
- 事親者 … 親によく仕える者は。
- 居上不驕 … 人の上に立っても驕り高ぶらない。
- 為下不乱 … たとえ人の下となっても反抗しない。
- 在醜不争 … 民衆の中にいても争いをしない。
- 醜 …「衆」に同じ。民衆。大衆。群衆。
居上而驕則亡、爲下而亂則刑、在醜而爭則兵。
上に居て驕れば則ち亡び、下と為って乱るれば則ち刑せられ、醜に在って争えば則ち兵せらる。
- 居上而驕則亡 … 人の上に立って驕り高ぶれば、その地位を失う。
- 為下而乱則刑 … 人の下となって反抗すれば、刑罰を受ける。
- 在醜而争則兵 … 民衆の中で争えば、刃傷沙汰になる。
- 兵 … 武器。ここでは刃物で負傷すること。
三者不除、雖日用三牲之養、猶爲不孝也。
三つの者除かざれば、日に三牲の養いを用うと雖も、猶不孝と為すなり。
- 三者不除 … 以上の三つの事柄を除かなければ。古文では、この前に「此」の字がある。
- 雖日用三牲之養 … 毎日、牛・羊・豕(豚)の珍味で親を養ってあげても。
- 日 … 毎日。
- 三牲 … 牛・羊・豕(豚)を揃えた正式の御馳走。または、この三種の生贄。
- 猶 … なお。相変わらず。古文では「繇」に作る。
- 不孝 … 子として親に十分に仕えないこと。親不孝。古文では「弗孝」に作る。
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