天子章第二
〔天子章第二〕(古文)
子曰、愛親者不敢惡於人。
子曰、愛親者不敢惡於人。
子曰く、親を愛する者は、敢えて人を悪
まず。
- この章は、天子の孝道について述べている。
- 天子 … 天に代わって国を治める者。皇帝。
- 古文も章名は同じ。
- 愛親者 … 親を愛する者。
- 不敢悪於人 … 決して他人を憎まない。
- 敢 … 決して。断じて。
敬親者不敢慢於人。
親を敬する者は、敢えて人を慢らず。
- 敬 … 敬う。尊敬の気持ちを持つ。
- 不敢慢於人 … 決して他人を軽蔑しない。
- 慢 … あなどる。軽蔑する。いい加減にあしらう。小馬鹿にする。
愛敬盡於事親、而徳教加於百姓、刑于四海。
愛敬親に事うるに尽して、而して徳教百姓に加わり、四海に刑
る。
- 愛敬 … 愛することと敬すること。愛と敬の心。
- 尽於事親 … 親に仕える際に、力を十分に出し尽くされると。
- 而 … そうして。そして。古文では「然後」に作る。
- 徳教 … 道徳的教化。
- 百姓 … 万民。庶民。
- 加 … 行き渡る。
- 四海 … 天下。世の中。世界。一説に、「四夷」をいう。「四夷」は、四方の野蛮人で東夷・西戎・南蛮・北狄のこと。
- 于 … 古文では「於」に作る。
- 刑 … 「のっとる」と読む。則る。模範として倣う。
蓋天子之孝也。
蓋し天子の孝なり。
- 蓋 … 「けだし」と読み、「それがまあ」「たぶん」「思うに」「考えてみるのに」と訳す。
- 天子之孝也 … 天子たる者の孝行というものである。
甫刑云、一人有慶、兆民賴之。
甫刑に云う、一人慶有れば、兆民之を頼る、と。
- 甫刑 … 『書経』呂刑篇の一節。呂侯が周の穆王(在位前976~前922)の司寇(周代の官名で刑罰・警察を掌った)となり、「呂刑」と呼ばれる刑法を作って四方に訓示したもの。今文が「甫刑」に作るのは、呂侯が後に封ぜられて甫侯になったことからと思われる。古文では「呂刑」に作る。ウィキソース「尚書/呂刑」参照。
- 一人有慶 … 天子に善きことがあれば。
- 一人 … 「いちじん」と読む。天子を指す。天下に予一人しかいないの意。
- 慶 … 善きこと。
- 兆民 … 多くの民。万民。
- 頼之 … 恩恵を蒙る。また「之に頼る」「之に頼る」と読んでもよい。
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