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開宗(かいそう)明(めい)義(ぎ)章第一

〔開宗明義章第一〕(古文)
仲尼居、曾子侍。
仲(ちゅう)尼(じ)居(きょ)し、曾(そう)子(し)侍(じ)す。
  • この章は、孝が徳の根本であり、すべての教えの生まれてくる根源であることを説き、また孝道の実践の始めと終りについても述べている。
  • 開宗明義 … 大本(おおもと)を開き、義を明らかにする。「宗」は、おおもと。根本。「義」は、意味。
  • 古文も章名は同じ。
  • 仲尼 … 孔子の字(あざな)。名は丘(きゅう)。ウィキペディア【孔子】参照。
  • 居 … することもなく、暇で寛(くつろ)いでいる。古文では「間居」に作る。
  • 曾子 … 孔子の弟子で、姓は曾(そう)、名は参(しん)、字(あざな)は子輿(しよ)。ウィキペディア【曾子】参照。
  • 侍 … 目上の人のそばに控える。古文では「侍坐」に作る。
子曰、先王有至徳要道、以順天下。
子(し)曰(いわ)く、先王(せんのう)、至(し)徳(とく)要道(ようどう)有(あ)って、以(もっ)て天(てん)下(か)を順(おさ)む。
  • 子 … 先生。孔子を指す。
  • 先王 … 昔の優れた王様。堯・舜・禹(う)・湯(とう)・文・武を指す。古文では先王の前に「参(しん)」の字がある。
  • 至徳 … 無上の徳。孝徳。
  • 要道 … 肝心な道。大事な道。正しい道。孝道。
  • 天下 … 国家。
  • 順 … 統治する。また「天下を順(じゅん)にす」「天下順(したが)う」と読んでもよい。古文では「訓」に作る。こちらは「訓(おし)う」と読み、「天下万民を教え導く」と訳す。
民用和睦、上下無怨。汝知之乎。
民(たみ)用(もっ)て和(わ)睦(ぼく)し、上(しょう)下(か)怨(うら)み無(な)し。汝(なんじ)之(これ)を知(し)るか、と。
  • 民 … 万民。
  • 用 … 「もって」と読む。「以」に同じ。
  • 和睦 … 打ち解けて仲良くする。
  • 上下 … 「上」は君父。「下」は臣子。身分の高い者も低い者もの意。
  • 無怨 … 不平を抱いて恨み合うようなことがない。
  • 無 … 古文では「亡」に作る。
  • 汝 … 「なんじ」と読み、「お前」と訳す。今文は「汝」、古文は「女」に作る。ただし、今文である四部叢刊本では「女」に作る。
曾子避席曰、參不敏。何足以知之。
曾(そう)子(し)席(せき)を避(さ)けて曰(いわ)く、参(しん)不(ふ)敏(びん)なり。何(なん)ぞ以(もっ)て之(これ)を知(し)るに足(た)らん。
  • 避席 … 起(た)って席から離れる。辟席。当時の席は椅子ではなく、蓆(むしろ)を敷いて坐った。目上の人に対し、席から離れて起つのを礼とした。
  • 参 … 曾子の名。弟子が師匠に対し、自ら名を言うのを礼とした。
  • 不敏 … 賢くないこと。転じて自己の謙称。「不才」に同じ。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
  • 何足以知之 … どうしてそのようなことを心得ておりましょうか。「之」は先王の至徳要道を指す。古文では「之」の後に「乎」の字がある。
子曰、夫孝徳之本也。教之所由生也。
子(し)曰(いわ)く、夫(そ)れ孝(こう)は徳(とく)の本(もと)なり。教(おし)えの由(よ)って生(しょう)ずる所(ところ)なり。
  • 夫 … 発語の助辞。そもそも。いったい。
  • 徳之本 … 道徳の根本。
  • 教之所由生也 … すべての教えが生まれてくる根源である。
  • 由 … 古文では「繇」に作る。「繇(よ)る」と読む。「由」に同じ。
復坐、吾語汝。
坐(ざ)に復(かえ)れ。吾(われ)、汝(なんじ)に語(かた)らん。
  • 復坐 … まあ、坐りなさい。元の席に帰ること。「復(かえ)り坐(ざ)せ」と読んでもよい。
  • 吾語汝 … わたしがお前に篤(とく)と話してやろう。
  • 汝 … 「なんじ」と読み、「お前」と訳す。今文は「汝」、古文は「女」に作る。ただし、今文である四部叢刊本では「女」に作る。
身體髮膚、受之父母。
身体(しんたい)髪(はっ)膚(ぷ)、之(これ)を父母(ふぼ)に受(う)く。
  • 身体髪膚 … 肉体と毛髪と皮膚。転じて、身体(からだ)全体のこと。
  • 受之父母 … すべて父母から頂戴したものである。
  • 之 … 古文では「于」に作る。
不敢毀傷、孝之始也。
敢(あ)えて毀(き)傷(しょう)せざるは、孝(こう)の始(はじ)めなり。
  • 不敢毀傷 … 訳もなくいため傷つけないようにするのは。
  • 不敢 … 「あえて~せず」と読み、「いわれもなく~しない」「軽々しく~しない」「決して~しない」と訳す。「不」は古文では「弗」に作る。
  • 毀傷 … いため傷つける。
  • 孝之始也 … 孝道の実践の始めである。孝道の出発点である。
立身行道、揚名於後世、以顯父母、孝之終也。
身(み)を立(た)て道(みち)を行(おこな)い、名(な)を後世(こうせい)に揚(あ)げ、以(もっ)て父母(ふぼ)を顕(あら)わすは、孝(こう)の終(おわ)りなり。
  • 立身 … 修養して人格を完成させ、立派な人物になる。
  • 行道 … 人として行うべき道を実践する。孝道を実践する。
  • 揚名於後世 … その名が後の世まで語り継がれるよう、広く行き渡らせる。
  • 揚名 … 名をあげる。世間の評判を得て有名になること。
  • 以顕父母 … あれは誰々の子だよ、と父母の名が世間に知られるようになることが。
  • 孝之終也 … 孝道の実践の終りである。孝道の完成である。
夫孝、始於事親、中於事君、終於立身。
夫(そ)れ孝(こう)は、親(おや)に事(つか)うるに始(はじ)まり、君(きみ)に事(つか)うるに中(ちゅう)し、身(み)を立(た)つるに終(おわ)る。
  • 夫 … 発語の助辞。いったい。
  • 孝 … 孝ということは。孝行ということは。
  • 始於事親 … 家にいて親に仕えることが始まりである。
  • 中於事君 … 家を出て君主に仕えることがその中間である。
  • 終於立身 … 立派な人物になることが終りである。
大雅曰、無念爾祖。聿脩厥徳。
大(たい)雅(が)に曰(いわ)く、爾(なんじ)の祖(そ)を念(おも)うこと無(な)からんや。厥(そ)の徳(とく)を聿(の)べ脩(おさ)む、と。
  • 大雅 … 『詩経』大雅・文王篇の一節。ウィキソース「詩經/文王」参照。
  • 無念爾祖 … 汝の祖先のことを思わないでよいだろうか。祖先を忘れてはいけない。「無念」は「念(おも)うこと無からんや」と反語に読む。
  • 念 … 思う。思慕する。
  • 無 … 古文では「亡」に作る。
  • 聿脩厥徳 … 祖先の徳を慕い、それを明らかにして修める。祖先の徳を受け継ぎ、一層盛んにしなければならない。
  • 厥 … その。古文では「其」に作る。
  • 聿脩 … 受け継いで盛んにする。「聿」は、述べる。一説に、リズムを整える助辞とし、「聿(ここ)に」と読む。「脩」は、明らかにして修める。一層盛んにする。古文では「修」に作る。
今文孝経
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閨門章第十九(古文のみ)