一敗地に塗る
一敗地に塗る
- 出典:『史記』高祖本紀(ウィキソース「史記/卷008」参照)
- 解釈:たった一度の敗北で、二度と立ち直れないほどになること。再起不能の完敗。「地に塗る」とは、惨殺されて、肝臓や脳みそが泥まみれになること。
秦の始皇帝が崩御し、その翌年の二世皇帝元年(前209)、陳勝・呉広が反乱を起こしたのを契機として、各地でも反乱が蜂起した。楚の沛県(現在の江蘇省沛県)でも長老たちが県令を殺し、劉邦を新しい県令にしようとした。劉邦は「今、天下は乱れ、諸侯が各地で反乱を起こしている。もし大将を選び損なえば、たった一度の敗北でも再び立ち上がることは不可能になるだろう。自分はその任ではない」と言って何度も辞退したという故事に基づく。その後、再三の説得で劉邦は県令となり、沛公と呼ばれるようになった。
- 史記 … 前漢の司馬遷がまとめた歴史書。二十四史の一つ。事実を年代順に書き並べる編年体と違い、人物の伝記を中心とする紀伝体で編纂されている。本紀十二巻、表十巻、書八巻、世家三十巻、列伝七十巻の全百三十巻。ウィキペディア【史記】参照。
父老乃率子弟、共殺沛令、開城門迎劉季、欲以爲沛令。
父老乃ち子弟を率いて、共に沛の令を殺し、城門を開きて劉季を迎え、以て沛の令と為さんと欲す。
- 父老 … 老人に対する尊称。長老。
- 令 … 県令。
- 劉季 … 劉邦。季は、劉邦の字。
劉季曰、天下方擾、諸侯竝起。今置將不善、壹敗塗地。吾非敢自愛、恐能薄不能完父兄子弟。此大事。願更相推擇可者。
劉季曰く、天下方に擾れ、諸侯並び起る。今、将を置くこと善からずんば、壱敗、地に塗れん。吾、敢えて自ら愛するに非ず、能薄くして父兄子弟を完うすること能わざらんことを恐る。此れ大事なり。願わくは更に相推して、可なる者を択べ、と。
- 能薄 … 才能が乏しい。
- 可者 … 適任者。

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