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与高適薛拠同登慈恩寺浮図(岑参)

與高適薛據同登慈恩寺浮圖
高適こうせき薛拠せつきょおなじく慈恩寺じおんじ浮図ふとのぼ
岑参しんじん
  • 五言古詩。宮・空・工・穹・風・東・瓏・中・濛・窮(平声東韻)、宗(平声冬韻)通押。
  • 詩題 … 『全唐詩』では「與高適薛據登慈恩寺浮圖」に作る。
  • 浮図 … 寺塔。
  • 岑参 … 715~770。盛唐の詩人。湖北省江陵の人。天宝三載(744)、進士に及第。西域の節度使の幕僚として長く辺境に勤務したのち、けつかく州長史(次官)・嘉州刺史などを歴任した。辺塞詩人として高適こうせきとともに「高岑」と並び称される。『岑嘉州集』七巻がある。ウィキペディア【岑参】参照。
塔勢如湧出
塔勢とうせい 湧出ゆうしゅつするがごと
  • 塔勢 … 塔のそびえるさま。
孤高聳天宮
孤高ここう 天宮てんきゅうそび
  • 孤高 … 一つだけとびぬけて高いこと。
  • 天宮 … 天上にあるといわれる宮殿。
登臨出世界
登臨とうりん 世界せかい
  • 登臨 … 高い所に登って見おろすこと。
磴道盤虚空
磴道とうどう 虚空こくうわだか
  • 磴道 … 石の坂道。
  • 盤 … とぐろを巻いたようにめぐっている。
突兀壓神州
突兀とっこつとして神州しんしゅうあっ
  • 突兀 … 高くつき出ているようす。
  • 神州 … ここでは長安一帯を指す。
崢嶸如鬼工
崢嶸そうこうとして鬼工きこうごと
  • 崢嶸 … 高くけわしい。
  • 鬼工 … 鬼神のなすわざ。
四角礙白日
四角しかく 白日はくじつさえぎ
  • 四角 … 四方ののきかど。
七層摩蒼穹
七層しちそう 蒼穹そうきゅう
  • 蒼穹 … 青空。
  • 摩 … こすりつける。
下窺指高鳥
下窺かきして高鳥こうちょうゆびさし
  • 下窺 … 下の方をのぞきこむ。
  • 高鳥 … 空高く飛ぶ鳥。
俯聽聞驚風
俯聴ふていして驚風きょうふう
  • 俯聴 … うつむいて耳をすます。「ふちょう」とも。
  • 驚風 … 突風。
連山若波濤
連山れんざん とうごと
奔走似朝東
奔走ほんそう ひがしちょうするにたり
  • 走 … 『全唐詩』では「湊」に作る。
  • 朝東 … 東に向かう。諸侯たちが天子のもとに入朝するのにたとえている。
青松夾馳道
せいしょう 馳道ちどうさしはさ
  • 松 … 『全唐詩』では「槐」に作る。
  • 馳道 … 天子が行幸の際に通る道。お成り道。王延寿の「魯の霊光殿の賦」(『文選』巻十一)に「ここいてか連閣れんかくきゅうけ、どうしゅうかんす」(於是乎連閣承宮、馳道周環)とあり、李善注に「馳道は、人君の行く所の道なり。君必ず車馬に乗る。故に馳を以て名と為すなり」(馳道、人君所行之道也。君必乘車馬。故以馳爲名也)とある。ウィキソース「昭明文選/卷11」参照。
宮觀何玲瓏
宮観きゅうかん なん玲瓏れいろうたる
  • 宮観 … 宮殿。離宮。観は楼閣。
  • 觀 … 『全唐詩』では「館」に作る。
  • 玲瓏 … 美しく澄みきっている様子。前漢の楊雄「甘泉の賦」(『文選』巻七)に「前殿さいとして、和氏かし玲瓏たり」(前殿崔巍兮、和氏玲瓏)とある。崔巍は、高く険しいさま。和氏は、和氏の璧。美玉の代名詞。その晋灼の注に「玲瓏は、明見のかたちなり」(玲瓏、明見貌也)とある。ウィキソース「昭明文選/卷7」参照。また南朝斉の謝朓「中書省に直す」(『文選』巻三十)に「玲瓏としてせんを結び、深沈として朱網しゅもうに映ず」(玲瓏結綺錢、深沈映朱網)とある。ウィキソース「昭明文選/卷30」参照。また張祜「東山寺」に「半夜四山鐘磬尽き、水精の宮殿月玲瓏たり」(半夜四山鐘磬尽、水精宮殿月玲瓏)とある。
秋色從西來
秋色しゅうしょく 西にしよりきた
  • 秋色 … 秋の気配。
蒼然滿關中
蒼然そうぜんとして関中かんちゅう
  • 蒼然 … 青く澄んでいる。
  • 関中 … 長安付近一帯を指す。
五陵北原上
りょう 北原ほくげんほとり
  • 五陵 … 漢の五帝の陵墓。高祖の長陵、恵帝の安陵、景帝の陽陵、武帝の茂陵、昭帝の平陵を指す。長安の西北にあった。
萬古青濛濛
ばん せい濛濛もうもうたり
  • 濛濛 … 草木が青く生い茂っている形容。
淨理了可悟
浄理じょうり ついさと
  • 浄理 … 仏の教え。
勝因夙所宗
勝因しょういん つとそうとするところ
  • 勝因 … すぐれた因縁。
  • 宗 … むねとする。
誓將挂冠去
ちかってまさかんむりけて
  • 挂冠 … 官職を辞めること。後漢の逢萌ほうぼうが、王莽おうもうに仕えることを好まず、自分の冠を東都の城門にかけて去った故事(『後漢書』逸民伝)に基づく。
覺道資無窮
覚道かくどう きゅうせんとす
  • 覚道 … 正しいさとりの道。
  • 資無窮 … 未来永劫尽きることのない仏道を悟る助けとする。
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