早秋与諸子登虢州西亭観眺(岑参)
早秋與諸子登虢州西亭觀眺
早秋、諸子と虢州の西亭に登りて観眺す
早秋、諸子と虢州の西亭に登りて観眺す
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻四、『全唐詩』巻二百一、『岑嘉州詩』巻四(『四部叢刊 初篇集部』所収)、『岑嘉州集』巻下(『前唐十二家詩』所収)、『岑嘉州集』巻七(『唐五十家詩集』所収)、『岑嘉州詩』巻七・寛保元年刊(『和刻本漢詩集成 唐詩5』所収、164頁、略称:寛保刊本)、『古今詩刪』巻十九(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、47頁)、『唐詩品彙』巻七十六、『唐詩別裁集』巻十七、他
- 五言排律。齊・低・西・溪・攜・迷(平声齊韻)。
- ウィキソース「早秋與諸子登虢州西亭觀眺」参照。
- 詩題 … 『四部叢刊本』には題下に「低の字を得たり」(得低字)とある。これは、数人で韻字をくじ引きで決め、作者は「低」の字が当たったということ。
- 早秋 … 秋の初め。初秋。
- 諸子 … 友人たち。諸友。
- 虢州 … 今の河南省三門峡市一帯。隋の開皇三年(583)、東義州を改めて置いた。治所は盧氏県(今の河南省盧氏県)。大業三年(607)に廃し、唐の武徳元年(618)に再び置いた。貞観八年(634)、弘農県(今河南省霊宝市)に移して治めた。『読史方輿紀要』歴代州域形勢、唐上、虢州の条に「漢は弘農郡と曰い、唐に虢州を置く、亦た弘農郡と曰い、弘農等県の六つを領す。今の陝州霊宝県の西南三十里、故の弘農城は是なり」(漢曰弘農郡、唐置虢州、亦曰弘農郡、領弘農等縣六。今陝州靈寶縣西南三十里故弘農城是)とある。ウィキソース「讀史方輿紀要/卷五」参照。ウィキペディア【虢州】参照。
- 西亭 … 虢州の西にあった亭。亭は、あずまや。休憩所。展望所。
- 観眺 … 遥かに眺めて観察する。ここでは眺望すること。
- 乾元二年(759)五月、作者は虢州の長史として赴任した。この詩は、この年の初秋のある日、友人たちと町の西にある亭に登り、酒を酌み交わしながら景色を眺望して詠んだもの。
- 岑参 … 715~770。盛唐の詩人。湖北省江陵の人。天宝三載(744)、進士に及第。西域の節度使の幕僚として長く辺境に勤務したのち、右補闕・虢州長史(次官)・嘉州刺史などを歴任した。辺塞詩人として高適とともに「高岑」と並び称される。『岑嘉州集』七巻がある。ウィキペディア【岑参】参照。
亭高出鳥外
亭高くして鳥外に出で
- 亭高 … このあずまやは高く。
- 出鳥外 … 鳥の通い路の上にそびえている。飛ぶ鳥の上に出ている。
客到與雲齊
客到れば雲と斉し
- 客到 … ここに人が登ると。
- 与雲斉 … 空に浮かぶ雲と同じ高さである。「古詩十九首 其の五」(『文選』巻二十九、『玉台新詠』巻一)に「西北に高楼有り、上は浮雲と斉し」(西北有高樓、上與浮雲齊)とあるのを踏まえる。ウィキソース「西北有高樓」参照。
樹點千家小
樹点じて千家小さく
- 樹点 … 見下ろせば樹木が点々と散在している。
- 千家小 … その間に数多くの家々が小さく見える。
- 千家 … 何千軒もの家並み。無数の人家。鄂州の町を指す。
天圍萬嶺低
天囲みて万嶺低し
- 天囲 … 大空に囲まれて。謝朓の「奉和隨王殿下十六首 其の七」(『古詩紀』巻七十)に「玄冬修夜に寂として、天囲静かにして且つ開く」(玄冬寂脩夜、天圍靜且開)とある。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷070」参照。
- 万嶺 … 多くの峰々。千山万岳。
- 低 … 低く続いている。
殘虹挂陝北
残虹 陝北に挂り
- 残虹 … 消えかかった虹。褚亮の「和御史韋大夫喜霽之作」(『全唐詩』巻三十二)に「晴天旅雁を度し、斜影残虹を照らす」(晴天度旅雁、斜影照殘虹)とある。ウィキソース「和御史韋大夫喜霽之作」参照。
- 陝北 … 陝州の北の空。陝州は、今の河南省三門峡市陝州区。『読史方輿紀要』歴代州域形勢、唐上、陝州の条に「漢は弘農郡の地、後魏は陝州と曰い、隋・唐は之に因る。天宝の初め陝府と曰い、亦た陝郡と曰う、陝県等県の五つを領す。天祐の初め洛を遷し、改めて興唐府と為し、哀帝の初め故に復す。今河南府に属す」(漢弘農郡地、後魏曰陝州、隋唐因之。天寶初曰陝府、亦曰陝郡、領陝縣等縣五。天祐初遷洛、改爲興唐府、哀帝初復故。今屬河南府)とある。ウィキソース「讀史方輿紀要/卷五」参照。ウィキペディア【陝州】参照。
- 挂 … かかる。掛と同じ。
急雨過關西
急雨 関西を過ぐ
- 急雨 … にわか雨。白居易の「琵琶行」に「大絃は嘈嘈として急雨の如く、小絃は切切として私語の如し」(大絃嘈嘈如急雨、小絃切切如私語)とある。ウィキソース「琵琶行」参照。
- 関西 … 函谷関の西のあたり。
- 過 … 通り過ぎていく。
酒榼緣靑壁
酒榼 青壁に縁り
瓜田傍綠溪
瓜田 緑渓に傍う
- 瓜田 … うり畑。
- 緑渓 … 緑水流れる谷川。
- 溪 … 『全唐詩』では「谿」に作る。
- 傍 … (うり畑が)沿って続いている。「木蘭詩二首 其の一」(『楽府詩集』巻二十五・横吹曲辞)に「両兎地に傍いて走る、安んぞ能く我が是れ雄雌なるを弁ぜん」(両兎傍地走、安能辨我是雄雌)とある。ウィキソース「木蘭詩」参照。
微官何足道
微官 何ぞ道うに足らん
- 微官 … 私のつまらぬ官職。
- 何足道 … とやかく言うほどのことはない。
愛客且相攜
愛客 且く相携う
唯有鄉園處
唯だ郷園の処有り
- 唯 … しかし。
- 有郷園処 … ここから眺める故郷の辺りだけは。
- 郷園 … 故郷。家郷。
- 處 … 『寛保刊本』『古今詩刪』では「」に作る。異体字。
依依望不迷
依依として望んで迷わず
- 依依 … 懐かしく、心ひかれるさま。李陵の「蘇武に答うるの書」(『文選』巻四十一)に「風を望み想いを懐きては、能く依依たらざらんや」(望風懷想、能不依依)とある。ウィキソース「答蘇武書」参照。
- 望不迷 … そちらにばかり目が奪われて、迷い動くことはない。
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