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西掖省即事(岑参)

西掖省即事
西掖せいえきしょうそく
しんじん
  • 七言律詩。暉・衣・微・歸・扉(平声微韻)。
  • 『全唐詩』巻201所収。ウィキソース【西掖省即事】参照。
  • 西掖省 … 中書省のこと。掖は、わき。宮殿の西側にあったのでこう呼ばれた。
  • 即事 … 目の前の情景や事柄に即して、見たままに詠じたもの。
  • 岑参 … 715~770。盛唐の詩人。湖北省江陵の人。天宝三載(744)、進士に及第。西域の節度使の幕僚として長く辺境に勤務したのち、けつかく州長史(次官)・嘉州刺史などを歴任した。辺塞詩人として高適こうせきとともに「高岑」と並び称される。『岑嘉州集』七巻がある。ウィキペディア【岑参】参照。
西掖重雲開曙暉
西掖せいえき重雲ちょううん 曙暉しょきひら
  • 重雲 … 重なりあった雲。
  • 曙暉 … 朝の光。
北山疎雨點朝衣
北山ほくざん疎雨そう 朝衣ちょういてん
  • 疎雨 … まばらに降る雨。
  • 朝衣 … 朝廷に出仕するときの服。朝服。
千門柳色連青瑣
千門せんもん柳色りゅうしょく 青瑣せいさつらなり
  • 千門 … 何千もの宮殿の門。
  • 青瑣 … 宮殿の扉。鎖の形の模様を彫刻し、青いうるしを塗ってあった。
三殿花香入紫微
三殿さんでん花香かこう 紫微しび
  • 三殿 … 長安の東北にあった蓬萊宮のこと。この宮殿には三つの殿があったので蓬萊三殿と呼ばれた。杜審言「蓬萊三殿侍宴奉勅詠終南山」参照。
  • 紫微 … もとは北斗星の北東にある十五の星の名。伝説では、その一つが天の軸にあたり、天帝の住む宮殿とされる。転じて、王宮のこと。ここでは天子の宮殿を指す。紫微宮・紫微星・えん・紫宮とも。『晋書』天文志に「きゅうえんじゅうせい西番せいばんななつ、東番とうばんつ、ほくきたり。いつ紫微しびう。大帝たいていなり。てんじょうきょなり。めいつかさどつかさどるなり」(紫宮垣十五星、其西番七、東番八、在北斗北。一曰紫微。大帝之坐也。天子之常居也。主命主度也)とある。ウィキソース「晉書/卷011」参照。
平明端笏陪鵷列
平明へいめい こつただして鵷列えんれつばい
  • 平明 … 夜明けがた。
  • 端笏 … 笏を正しく持つこと。笏は朝廷の役人が右手に持ってメモを記す細長い板。ウィキペディア【】参照。
  • 鵷列 … 朝臣の行列。「鵷」は鳳凰の一種。
薄暮垂鞭信馬歸
はく むちれ うままかせてかえ
  • 薄暮 … 日暮れ。
  • 信馬 … 馬の歩みにまかせて。
宦拙自悲頭白盡
かんつたなくしてみずかかなしむ かしら白尽はくじんするを
  • 宦 … 『全唐詩』では「官」に作る。どちらも宮廷につかえること。
  • 拙 … 宮仕えがうまくゆかないこと。
  • 頭白尽 … 頭髪がすっかり白くなること。
不如巖下偃荊扉
かず 巌下がんか 荊扉けいひせんには
  • 不如 … ~の方がましだ。
  • 巌下 … 大きな岩の下。
  • 下 … 『全唐詩』には「一作石」とある。
  • 荊扉 … いばらで作った扉。柴扉に同じ。
  • 偃 … 寝そべる。『全唐詩』には「一作掩」とある。こちらの場合は「門扉を閉ざす」の意。どちらも隠遁生活に入ることをいう。
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