西掖省即事(岑参)
西掖省即事
西掖省即事
西掖省即事
西掖重雲開曙暉
西掖の重雲 曙暉を開き
- 重雲 … 重なりあった雲。
- 曙暉 … 朝の光。
北山疎雨點朝衣
北山の疎雨 朝衣に点ず
- 疎雨 … まばらに降る雨。
- 朝衣 … 朝廷に出仕するときの服。朝服。
千門柳色連青瑣
千門の柳色 青瑣に連なり
- 千門 … 何千もの宮殿の門。
- 青瑣 … 宮殿の扉。鎖の形の模様を彫刻し、青いうるしを塗ってあった。
三殿花香入紫微
三殿の花香 紫微に入る
- 三殿 … 長安の東北にあった蓬萊宮のこと。この宮殿には三つの殿があったので蓬萊三殿と呼ばれた。杜審言「蓬萊三殿侍宴奉勅詠終南山」参照。
- 紫微 … もとは北斗星の北東にある十五の星の名。伝説では、その一つが天の軸にあたり、天帝の住む宮殿とされる。転じて、王宮のこと。ここでは天子の宮殿を指す。紫微宮・紫微星・紫垣・紫宮とも。『晋書』天文志に「紫宮垣の十五星、其の西番七つ、東番八つ、北斗の北に在り。一に紫微と曰う。大帝の坐なり。天子の常居なり。命を主り度を主るなり」(紫宮垣十五星、其西番七、東番八、在北斗北。一曰紫微。大帝之坐也。天子之常居也。主命主度也)とある。ウィキソース「晉書/卷011」参照。
平明端笏陪鵷列
平明 笏を端して鵷列に陪し
- 平明 … 夜明けがた。
- 端笏 … 笏を正しく持つこと。笏は朝廷の役人が右手に持ってメモを記す細長い板。ウィキペディア【笏】参照。
- 鵷列 … 朝臣の行列。「鵷」は鳳凰の一種。
薄暮垂鞭信馬歸
薄暮 鞭を垂れ 馬に信せて帰る
- 薄暮 … 日暮れ。
- 信馬 … 馬の歩みにまかせて。
宦拙自悲頭白盡
宦は拙くして自ら悲しむ 頭の白尽するを
- 宦 … 『全唐詩』では「官」に作る。どちらも宮廷につかえること。
- 拙 … 宮仕えがうまくゆかないこと。
- 頭白尽 … 頭髪がすっかり白くなること。
不如巖下偃荊扉
如かず 巌下 荊扉に偃せんには
- 不如 … ~の方がましだ。
- 巌下 … 大きな岩の下。
- 下 … 『全唐詩』には「一作石」とある。
- 荊扉 … いばらで作った扉。柴扉に同じ。
- 偃 … 寝そべる。『全唐詩』には「一作掩」とある。こちらの場合は「門扉を閉ざす」の意。どちらも隠遁生活に入ることをいう。
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