九日使君席奉餞衛中丞赴長水(岑参)
九日使君席奉餞衛中丞赴長水
九日、使君の席にて衛中丞の長水に赴くに餞けし奉る
九日、使君の席にて衛中丞の長水に赴くに餞けし奉る
- 七言律詩。師・兒・旗・時・籬(平声支韻)。
- 『全唐詩』巻201所収。ウィキソース【九日使君席奉餞衛中丞赴長水】参照。
- 九日 … 陰暦九月九日、重陽の節句。
- 使君 … 州の刺史。
- 衛中丞 … 人物については不明。中丞は御史中丞の略称で御史台の次官。官吏を監督し、不正を糾察する。
- 長水 … 今の河南省盧氏県の近く。
- 岑参 … 715~770。盛唐の詩人。湖北省江陵の人。天宝三載(744)、進士に及第。西域の節度使の幕僚として長く辺境に勤務したのち、右補闕・虢州長史(次官)・嘉州刺史などを歴任した。辺塞詩人として高適とともに「高岑」と並び称される。『岑嘉州集』七巻がある。ウィキペディア【岑参】参照。
節使横行西出師
節使横行して西のかた師を出す
- 節使 … 天子から賜る符節(割り符)を持った使者。ここでは衛中丞を指す。
- 横行 … 自由自在におし進むこと。
- 西 … 『全唐詩』には「一作東」とある。
- 出師 … 出兵すること。
嗚弓擐甲羽林兒
弓を嗚らし甲を擐く羽林の児
- 擐甲 … よろいを身につけること。
- 羽林児 … 近衛兵。ここでは衛中丞の率いる兵卒を指す。
臺上霜風凌草木
台上の霜風 草木を凌ぎ
- 台上 … 御史台のあたり。
- 霜風 … 霜の気を含む風。御史の威権のきびしさにたとえる。底本(冨山房『漢文大系』)では「霜威」に作るが、諸本に従い改めた。
- 凌草木 … ここでは草木を枯らすこと。
軍中殺氣傍旌旗
軍中の殺気 旌旗に傍う
- 旌旗 … 旗さしもの。
- 傍 … 立ちこめる。
預知漢將宣威日
預め知る 漢将の威を宣ぶる日
- 預 … 『全唐詩』には「一作須」とある。
- 預知 … あらかじめ分かっていることだ。
- 漢将 … 衛中丞を指す。
正是胡塵欲滅時
正に是れ胡塵の滅せんと欲する時なるを
- 胡塵 … えびすの兵馬によってまきおこる塵。
爲報使君多泛菊
為に報ぜん 使君 多く菊を泛べ
- 為報 … 知らせてやる。
- 泛菊 … 菊の花を酒杯にうかべること。重陽の節句の行事。
更將絃管醉東籬
更に絃管を将って東籬に酔えと
- 絃管 … 琴や笛。
- 将 … 「以」に同じ。
- 東籬 … 東側のまがき。陶淵明の「飲酒」の詩に「菊を采る東籬の下、悠然として南山を見る」とあるのをふまえる。
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