愚公山を移す
愚公山を移す
- 出典:『列子』湯問(ウィキソース「列子/湯問篇」参照)
- 解釈:どんな困難なことでも努力し続ければ、必ず成功するという喩え。愚公という老人が交通の便をよくするため、家の前にある山を崩しはじめた。これを見た人が笑うと、「子孫が次々と続けてやればいつかは成功する」と言ったという故事から。
- 列子 … 八巻。道家の思想書。戦国時代の道家の思想家、列禦寇の作といわれる。寓話が多く、独創性が低い。ウィキペディア【列子】参照。
太行王屋二山、方七百里、高萬仞。本在冀州之南、河陽之北。
太行・王屋の二山は、方七百里、高さ万仞。本冀州の南、河陽の北に在り。
- 太行 … 山名。山西省にある太行山脈の主峰。
- 王屋 … 山名。山西省にある。
- 方 … 四方。
- 万仞 … 一万仞。
- 冀州 … 古代の九州のひとつ。河北省・山西省一帯。
北山愚公者、年且九十。面山而居、懲山北之塞出入之迂也。聚室而謀曰、吾與汝畢力平險、指通豫南、達于漢陰。可乎。雜然相許。
北山の愚公なる者、年且に九十ならんとす。山に面して居り、山北の塞がりて出入の迂なるに懲しむ。室を聚めて謀りて曰く、吾、汝らと力を畢くして険を平らかにし、予の南を指通して、漢陰に達せん。可ならんか、と。雑然りとして相許す。
- 愚公 … 愚公という老人。馬鹿じいさんという程度の意。
- 迂 … 回り道。
- 室 … 家の人。
- 予南 … 予州の南。
- 指通 … 道を通じさせる。
- 漢陰 … 漢水の南。
其妻獻疑曰、以君之力、曾不能損魁父之丘。如太行王屋何。且焉置土石。雜曰、投諸渤海之尾、隱土之北。
其の妻疑いを献じて曰く、君の力を以てしては、曽ち魁父の丘を損ずること能わず。太行・王屋を如何せん。且に焉にか土石を置かんとする、と。雑曰く、諸を渤海の尾、隠土の北に投ぜん、と。
- 魁父 … 小丘の名。
- 渤海 … 北東部にある海域。勃海湾。
- 隠土 … 東北にある州名。
遂率子孫、荷擔者三夫、叩石墾壤、箕畚運於渤海之尾。
遂に子孫を率い、荷担する者三夫、石を叩き壌を墾き、箕畚もて渤海の尾に運ぶ。
- 箕畚 … 箕と畚。
鄰人京城氏之孀妻、有遺男、始齔。跳往助之、寒暑易節、始一反焉。河曲智叟、笑而止之曰、甚矣、汝之不惠。以殘年餘力、曾不能毀山之一毛。其如土石何。
隣人京城氏の孀妻に、遺男有り、始めて齔す。跳り往きて之を助け、寒暑節を易え、始めて一たび反る。河曲の智叟、笑いて之を止どめて曰く、甚だしきかな、汝の不恵なる。残年の余力を以てしては、曽ち山の一毛を毀つ能わず。其れ土石を如何せん。
- 孀妻 … 夫と死別した女性。寡婦。
- 齔 … 歯がぬけかわる。
- 節 … 季節。
- 河曲 … 黄河のほとり。
- 智叟 … 智叟という老人。知恵じいさんという程度の意。
北山愚公長息曰、汝心之固、固不可徹、曾不若孀妻弱子。雖我之死、有子存焉。子又生孫、孫又生子。子又有子、子又有孫。子子孫孫、無窮匱也。而山不加增。何苦而不平。河曲智叟、亡以應。
北山の愚公長息して曰く、汝が心の固なること、固に徹す可からず、曽ち孀妻の弱子に若かず。我死すと雖も、子有りて存す。子は又孫を生み、孫は又子を生む。子に又子有り、子に又孫有り。子子孫孫、窮匱無し。而るに山は加増せず。何若ぞ平らかならざらん、と。河曲の智叟、以て応うる亡し。
- 窮匱 … 尽き果てる。
操蛇之神聞之、懼其不已也、告之於帝。帝感其誠、命夸蛾氏二子負二山、一厝朔東、一厝雍南。自此、冀之南、漢之陰、無隴斷焉。
操蛇の神之を聞き、其の已まざるを懼れ、之を帝に告ぐ。帝其の誠に感じ、夸蛾氏の二子に命じて二山を負わしめ、一は朔東に厝き、一は雍南に厝く。此より、冀の南、漢の陰、隴断無し。
- 操蛇の神 … 山の神。
- 懼れ … 心配する。
- 夸蛾氏 … 夸氏・蛾氏。
- 朔東 … 朔北の東部。今の興安嶺あたり。
- 雍南 … 雍州の南。
- 隴断 … 土地が高く盛り上がった所。
こちらもオススメ!
あ行 | か行 | さ行 |
た行 | な行 | は行 |
ま行 | や行 | ら行・わ |
論語の名言名句 |