王侯将相寧くんぞ種有らんや
王侯将相寧くんぞ種有らんや
- 出典:『史記』陳渉世家(ウィキソース「史記/卷048」参照)
- 解釈:王・諸侯・将軍・大臣などになるのに、どうして血筋が必要だろうか。誰でも実力次第でなれるのだ。種は、血筋・血統。
秦の二世皇帝の元年(前209)七月、陳勝と呉広たち河南の農民九百人は、辺境の漁陽(現在の北京市密雲区)の守備に駆り出された。陳勝と呉広は一隊の長であった。途中豪雨のため道が不通となり、期限までに到着することがほぼ不可能となった。期限に遅れると、秦の法律では死刑である。そこで陳勝と呉広は引率の役人を殺し、仲間を集めて、「諸君は豪雨のため期限に遅れた。遅れた者は処刑される。かりに処刑されなくても辺境の警備につけば、大半は生きて帰れない。どうせ死ぬなら男子たるもの名声をあげてから死のうではないか。王・諸侯・将軍・大臣となるのに血筋や家柄などあるものか、誰だってなれるのだ」と言ったという故事に基づく。
- 史記 … 前漢の司馬遷がまとめた歴史書。二十四史の一つ。事実を年代順に書き並べる編年体と違い、人物の伝記を中心とする紀伝体で編纂されている。本紀十二巻、表十巻、書八巻、世家三十巻、列伝七十巻の全百三十巻。ウィキペディア【史記】参照。
呉廣素愛人。士卒多爲用者。將尉醉。廣故數言欲亡、忿恚尉、令辱之、以激怒其衆。尉果笞廣。尉劍挺。廣起奪而殺尉。陳勝佐之、幷殺兩尉。
呉広素より人を愛す。士卒、用を為さんとする者多し。将尉酔う。広、故に数〻亡げんと欲すと言い、尉を忿恚せしめ、之を辱めしめ、以て其の衆を激怒せしめんとす。尉果たして広を笞つ。尉の剣挺く。広起ちて奪いて尉を殺す。陳勝之を佐け、幷せて両尉を殺す。
召令徒屬曰、公等遇雨、皆已失期。失期當斬。藉第令毋斬、而戍死者、固十六七。且壯士不死即已。死即舉大名耳。王侯將相寧有種乎。徒屬皆曰、敬受命。
召して徒属に令して曰く、公等雨に遇い、皆な已に期を失えり。期を失うは斬に当たる。藉い第だ斬らるること毋からしむとも、戍の死する者は、固に十に六七なり。且つ壮士死せずんば即ち已まん。死せば即ち大名を挙げんのみ。王侯将相寧くんぞ種有らんや、と。徒属皆な曰く、敬みて命を受けん、と。
- 徒属 … 仲間。
- 斬 … 斬罪。打ち首。
- 藉 … ここでは「たとい」と読む。仮に同じ。
- 第 … ここでは「ただ」と読む。但に同じ。
- 戍 … 辺境守備。
- 壮士 … 立派な男子。
- 大名 … 立派な名声。
- 将相 … 大将と大臣。
- 種 … 血筋・血統。
- 命 … 命令。

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