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宿石邑山中(韓翃)

宿石邑山中
石邑(せきゆう)山(さん)中(ちゅう)に宿(しゅく)す
韓翃(かんこう)
  • 七言絶句。齊・迷・西(平声齊韻)。
  • ウィキソース「宿石邑山中 (韓翃)」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』巻二百八十三に李益の詩として重出。ウィキソース「宿石邑山中 (李益)」参照。
  • 石邑 … 河北省石家荘市の西、鹿泉県(今の河北省石家荘市鹿泉区)の古名。唐代は獲鹿県と改称された。『元和郡県図志』河北道、恒州の条に「獲鹿県は、本(もと)漢の石邑県の地、常山郡に属す。隋の開皇十六年、此に於いて鹿泉県を置く。……石邑県は、本(もと)戦国時の中山邑なり、史記に、趙の武霊王は中山を攻め、石邑を取るとは是なり。漢は此に於いて石邑県を置き、常山郡に属し、後漢に至って隋は改めず、皇朝之に因(よ)る」(獲鹿縣、本漢石邑縣地、屬常山郡。隋開皇十六年、於此置鹿泉縣。……石邑縣、本戰國時中山邑也、史記趙武靈王攻中山、取石邑是也。漢於此置石邑縣、屬常山郡、後漢至隋不改、皇朝因之)とある。ウィキソース「元和郡縣圖志/卷17」参照。ウィキペディア【鹿泉区】参照。
  • 石邑山 … 今の河北省石家荘市鹿泉区にある山。一名西屏山(せいへいざん)。標高が高く、奇景と称される。『大明一統志』に「西屏山は、獲鹿県の西三十里に在り。高さ数百丈、峰巒(ほうらん)連亘(れんこう)し、宛(あたか)も刻屏(こくへい)の若し。毎冬雪霽(は)れて之を望まば、氷封じ玉削るが如く、一郡中の奇景なり」(西屏山、在獲鹿縣西三十里。髙數百丈、峯巒連亘、宛若刻屏、每冬雪霽望之、如氷封玉削、一郡中之竒景也)とある。峰巒は、連なった山々。連亘は、長く連なり続くこと。ウィキソース「明一統志 (四庫全書本)/卷03」参照。
  • 宿 … 宿泊する。
  • この詩は、作者が旅の途中に石邑山に遊び、山中に宿泊したときの作。この山が天下の奇勝であることを詠んでいる。
  • 韓翃 … 生没年不詳。中唐の詩人。南陽(河南省南陽市)の人。字(あざな)は君平。天宝十三載(754)、進士に及第。淄(し)青(せい)節度使の侯(こう)希(き)逸(いつ)(720~781)に招かれて幕下に入ったが、辞任してから約十年間流浪生活を送った。のち宣武軍(河南省開封市)節度使李(り)勉(べん)(717~788)の幕下に入った。その後、徳宗(在位779~805)に認められて駕部郎中・知制誥に任ぜられ、中書舎人で終わった。盧綸・銭起・司空曙・耿湋らとともに大暦十才子の一人。『韓君平詩集』一巻がある。ウィキペディア【韓翃】参照。
浮雲不共此山齊
浮(ふ)雲(うん)も此(こ)の山(やま)と斉(ひと)しからず
  • 浮雲 … 空に浮ぶ雲。
  • 此山 … この山。石邑山を指す。
  • 共 … ここでは「~と」と読み、「~と」と訳す。与に同じ。
  • 不~斉 … 等しくない。浮き雲が石邑山ほど高くないということ。
  • 浮雲不共此山齊 … 「古詩十九首」(『文選』巻二十九、『玉台新詠』巻一)の第五首に「西北(せいほく)に高楼(こうろう)有(あ)り、上(かみ)は浮(ふ)雲(うん)と斉(ひと)し」(西北有高樓、上與浮雲齊)とあるのに基づく。ウィキソース「西北有高樓」参照。
山靄蒼蒼望轉迷
山靄(さんあい)蒼蒼(そうそう)として望(のぞ)み転(うた)た迷(まよ)う
  • 山靄 … 山にかかる靄(もや)。
  • 蒼蒼 … 深い青さ。青黒い色の形容。三国魏の曹植「白馬王彪(ひょう)に贈る」詩(『文選』巻二十四)に「太谷(たいこく)は何(なん)ぞ寥(りょう)廓(かく)たる、山樹(さんじゅ)鬱(うつ)として蒼蒼(そうそう)たり」(太谷何寥廓、山樹鬱蒼蒼)とある。寥廓は、広大で空虚なさま。ウィキソース「贈白馬王彪」参照。
  • 望 … 眺めやると。眺めわたせば。『全唐詩』には「一作翠」と注する。
  • 転 … いよいよ。ますます。
  • 迷 … 方角に迷う。
曉月暫飛千樹裏
暁(ぎょう)月(げつ)暫(しばら)く飛(と)ぶ 千樹(せんじゅ)の裏(うち)
  • 暁月 … 明け方の月。有明の月。残月。名残の月。明け方の空に残っている月。劉宋の鮑照「舞(ぶ)鶴(かく)の賦」(『文選』巻十四)に「星(ほし)翻(ひるがえ)り漢(かん)迴(めぐ)り、暁(ぎょう)月(げつ)将(まさ)に落(お)ちんとす」(星翻漢迴、曉月將落)とある。ウィキソース「舞鶴賦」参照。
  • 暫飛 … にわかに飛ぶように移ってゆく。
  • 暫 … にわかに。たちまち。『春秋左氏伝』僖公三十三年に「武夫(ぶふ)力(つと)めて諸(これ)を原(げん)に拘(とら)え、婦(ふ)人(じん)暫(にわ)かにして諸(これ)を国(くに)に免す」(武夫力而拘諸原、婦人暫而免諸國)とあり、その注に「暫は、猶お卒のごとし」(暫、猶卒也)とある。卒は、にわかにの意。『春秋左傳集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)、ウィキソース「春秋左氏傳/僖公」参照。
  • 千樹裏 … 多くの木々の間を。
  • 千 … 『全唐詩』では「高」に作り、「一作千」と注する。『唐五十家詩集本』では「高」に作る。
秋河隔在數峰西
秋(しゅう)河(が)は隔(へだ)てて数峰(すうほう)の西(にし)に在(あ)り
  • 秋河 … 天の川。銀河。秋によく見えるので秋河という。南朝斉の謝朓「暫(しばら)く下都(かと)に使(つか)いし、夜(よる)新林(しんりん)を発(はっ)して京邑(けいゆう)に至(いた)らんとす。西(せい)府(ふ)の同(どう)僚(りょう)に贈(おく)る」詩(『文選』巻二十六)に「秋(しゅう)河(が)は曙(あかつき)に耿耿(こうこう)たり、寒渚(かんしょ)は夜(よる)蒼蒼(そうそう)たり」(秋河曙耿耿、寒渚夜蒼蒼)とある。ウィキソース「昭明文選/卷26」参照。
  • 隔 … 遠く隔てて。
  • 在数峰西 … いくつかの峰の彼方、西の空にかかっている。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻二百四十五(排印本、中華書局、1960年)
  • 『韓君平集』巻下(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十五(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻四十九([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
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