清明宴司勲劉郎中別業(祖詠)
淸明宴司勳劉郎中別業
清明に司勲劉郎中の別業に宴す
清明に司勲劉郎中の別業に宴す
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻四、『全唐詩』巻一百三十一、『祖詠集』(『唐五十家詩集』所収)、『文苑英華』巻二百十五、『古今詩刪』巻十九(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、48頁)、『唐詩品彙』巻七十六、『唐詩別裁集』巻十七、『河岳英霊集』巻下、他
- 五言排律。臣・親・新・鄰・春・人・淪(平声真韻)。
- ウィキソース「清明宴司勳劉郎中別業」参照。
- 詩題 … 『文苑英華』では「清川口宴張郎中別業」に作る。
- 清明 … 二十四節気の一つ。春分から十五日目。陰暦の三月、陽暦で四月五日頃。人々は墓参に出かけたり、山野に出て酒宴を開くなどの習慣があった。ウィキペディア【清明】参照。
- 司勲劉郎中 … 司勲郎中である劉某。人物については不明。
- 司勲 … 官名。官吏の勲等に関する事務をつかさどる。
- 郎中 … 官名。周代は近侍の通称。隋唐代以後、尚書省の六部がそれぞれ四司に分かれ、その各司の長。
- 別業 … 別荘。
- 宴 … 宴会が開かれた。
- この詩は、清明の日に司勲郎中である劉郎中の別荘で宴会が催され、それに出席した作者が劉某と別荘とを褒めて詠んだもの。
- 祖詠 … 699~746?。盛唐の詩人。洛陽の人。王維とは幼友達。開元十二年(724)、進士に及第したが、生涯にわたり仕官せず、汝水(河南省の川)のほとりに隠棲し、樵漁の生活で終わったという。ウィキペディア【祖詠】参照。
田家復近臣
田家にして復た近臣
- 田家 … 田舎の別荘。田園の別荘。
- 近臣 … 天子のそば近く仕える臣下。『孟子』万章上篇に「近臣を観るには、其の主と為る所を以てし、遠臣を観るには、其の主とする所を以てす」(觀近臣、以其所爲主、觀遠臣、以其所主)とある。ウィキソース「孟子/萬章上」参照。
行樂不違親
行楽して親に違わず
- 行楽 … 遊び楽しむこと。『文苑英華』では「別業」に作る。
- 不違親 … 親しい人たちとの付き合いを欠かさない。『後漢書』郭泰伝に「隠るれども親に違わず、貞にして俗を絶たず、天子も臣とするを得ず、諸侯も友とするを得ず」(隱不違親、貞不絕俗、天子不得臣、諸侯不得友)とある。ウィキソース「後漢書/卷68」参照。
- 違 … 『全唐詩』には「一作遺」とある。
霽日園林好
霽日 園林好く
- 霽日 … 晴れ渡った今日。
- 園林 … 田園の木々。
- 好 … 新緑が清々しい。
淸明煙火新
清明 煙火新たなり
- 清明 … 清明の日のこととて。清明節を迎えて。清明節にあたり。
- 煙火新 … 新しい火を起こして、煙が立ちのぼっている。冬至の日から数えて百五日目の日を寒食といい、この日を挟んで三日間は火を断ち、煮たきしないで冷たい物を食べる風習があった。寒食節が終わると清明節になる。ウィキペディア【寒食節】参照。『荊楚歳時記』に「冬節を去ること一百五日、即ち疾風甚雨有り、之を寒食と謂う。火を禁ずること三日、餳と大麦の粥を造る」(去冬節一百五日、即有疾風甚雨、謂之寒食。禁火三日、造餳大麥粥)とある。冬節は、冬至に同じ。ウィキソース「荊楚歲時記」参照。寒食節が終わって清明節になると、各家庭では新しく火を起こした。これを新火という。宮中では楡と柳の枝に火を付け、その種火を蠟燭に点して分け、臣下に賜ったという。
- 煙 … 『唐詩選』『古今詩刪』では「烟」に作る。異体字。
以文常會友
文を以て常に友を会し
惟德自成鄰
惟れ徳 自ずから隣を成す
池照窗陰晚
池は照らす 窓陰の晩
- 池照 … 池の面は夕日を受けて照り輝く。
- 窓陰 … 宴席の設けられた窓際。
- 窓 … 『唐詩選』『古今詩刪』『河岳英霊集』では「窻」に作る。『全唐詩』『唐詩別裁集』では「窗」に作る。『唐詩品彙』では「牕」に作る。すべて異体字。
- 晩 … 薄暗くなってきた。『古今詩刪』では「」に作る。異体字。
杯香藥味春
杯は香し 薬味の春
- 杯香 … 酒杯は香しく。
- 香 … 『唐五十家詩集本』『文苑英華』では「觴」に作る。
- 薬味春 … 酒に加えた薬草の味によって、春めいた気持ちになる。
- 薬味 … 酒に加えた薬草の味。薬酒として用いた。
- 薬 … 『唐五十家詩集本』では「樂」に作る。
欄前花覆地
欄前 花 地を覆い
- 欄前 … 回廊の手すりの前。『全唐詩』『唐五十家詩集本』『文苑英華』『河岳英霊集』では「簷前」に作る。簷前ならば、軒端の前。
- 花覆地 … 花が地面を覆うように咲き乱れている。
竹外鳥窺人
竹外 鳥 人を窺う
- 竹外 … 竹林の向こうから。
- 鳥窺人 … 小鳥が人の様子を窺うようにして姿を見せる。
何必桃源裏
何ぞ必ずしも桃源の裏
深居作隱淪
深居して隠淪と作らん
- 深居 … 深く隠れ住む。
- 隠淪 … 隠れて世に出ないこと。隠遁すること。桓譚『新論』に「天下の神人は五、一に曰わく神仙、二に曰わく隠淪、三に曰わく使鬼物、四に曰わく先知、五に曰わく鋳凝」(天下神人五、一曰神仙、二曰隱淪、三曰使鬼物、四曰先知、五日鑄凝)とある。ウィキソース「新論/13」参照。
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