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清明宴司勲劉郎中別業(祖詠)

淸明宴司勳劉郎中別業
清明(せいめい)に司(し)勲(くん)劉(りゅう)郎(ろう)中(ちゅう)の別(べつ)業(ぎょう)に宴(えん)す
祖(そ)詠(えい)
  • 五言排律。臣・親・新・鄰・春・人・淪(上平声真韻)。
  • ウィキソース「清明宴司勳劉郎中別業」参照。
  • 詩題 … 『文苑英華』では「清川口宴張郎中別業」に作る。
  • 清明 … 二十四節気の一つ。春分から十五日目。陰暦の三月、陽暦で四月五日頃。人々は墓参に出かけたり、山野に出て酒宴を開くなどの習慣があった。ウィキペディア【清明】参照。
  • 司勲劉郎中 … 司勲郎中である劉某。人物については不詳。
  • 司勲 … 官名。官吏の勲等に関する事務を掌る。
  • 郎中 … 官名。周代は近侍の通称。隋唐代以後、尚書省の六(りく)部(ぶ)がそれぞれ四司に分かれ、その各司の長。
  • 別業 … 別荘。西晋の石崇(せきすう)「思帰引の序」(『文選』巻四十五)に「晩節には更(あらた)めて放逸を楽しみ、篤く林藪(りんそう)を好み、遂に河陽の別業に肥(ひ)遁(とん)す」(晩節更樂放逸、篤好林藪、遂肥遁於河陽別業)とある。肥遁は、心に余裕をもって、俗世間を離れて住むこと。ウィキソース「思歸引序」参照。
  • 宴 … 宴会が開かれた。
  • この詩は、清明の日に司勲郎中である劉郎中の別荘で宴会が催され、それに出席した作者が劉某と別荘とを褒めて詠んだもの。
  • 祖詠 … 699~746?。盛唐の詩人。洛陽(河南省洛陽市)の人。字(あざな)は不詳。王維とは幼友達。開元十二年(724)、進士に及第したが、生涯にわたり仕官せず、汝水(じょすい)(河南省の川)のほとりに隠棲し、樵(しょう)漁(ぎょ)の生活で終わったという。ウィキペディア【祖詠】参照。
田家復近臣
田(でん)家(か)にして復(ま)た近臣(きんしん)
  • 田家 … 田舎の家。農家。ここでは、田舎の別荘。田園の別荘。東晋の陶潜「庚(こう)戌(じゅつ)の歳(とし)、九(く)月(がつ)中(ちゅう)、西田(せいでん)に早稲(そうとう)を穫(か)る」詩に「田家豈(あ)に苦しからざらんや、此の難を辞するを獲(え)ず」(田家豈不苦、弗獲辞此難)とある。ウィキソース「庚戌歲九月中於西田穫早稻」参照。
  • 近臣 … 天子のそば近く仕える臣下。『孟子』万章上篇に「近臣を観るには、其の主と為る所を以てし、遠臣を観るには、其の主とする所を以てす」(觀近臣、以其所爲主、觀遠臣、以其所主)とある。ウィキソース「孟子/萬章上」参照。
行樂不違親
行楽(こうらく)して親(しん)に違(たが)わず
  • 行楽 … 遊び楽しむこと。『文苑英華』では「別業」に作る。
  • 不違親 … 親しい人たちとの付き合いを欠かさない。『後漢書』郭泰伝に「隠るれども親に違わず、貞にして俗を絶たず、天子も臣とするを得ず、諸侯も友とするを得ず」(隱不違親、貞不絕俗、天子不得臣、諸侯不得友)とある。ウィキソース「後漢書/卷68」参照。
  • 違 … 『全唐詩』には「一作遺」と注する。
霽日園林好
霽日(せいじつ) 園林(えんりん)好(よ)く
  • 霽日 … 晴れ渡った今日。
  • 園林 … 田園の木々。
  • 好 … 新緑が清々(すがすが)しい。
淸明煙火新
清明(せいめい) 煙(えん)火(か)新(あら)たなり
  • 清明 … 清明の日のこととて。清明節を迎えて。清明節にあたり。
  • 煙火新 … 新しい火を起こして、煙が立ちのぼっている。冬至の日から数えて百五日目の日を寒食といい、この日を挟んで三日間は火を断ち、煮たきしないで冷たい物を食べる風習があった。寒食節が終わると清明節になる。ウィキペディア【寒食節】参照。『荊楚歳時記』に「冬節(とうせつ)を去ること一百五日、即ち疾風甚雨有り、之を寒食と謂う。火を禁ずること三日、餳(とう)と大麦の粥を造る」(去冬節一百五日、即有疾風甚雨、謂之寒食。禁火三日、造餳大麥粥)とある。冬節は、冬至に同じ。ウィキソース「荊楚歲時記」参照。寒食節が終わって清明節になると、各家庭では新しく火を起こした。これを新火という。宮中では楡(にれ)と柳の枝に火を付け、その種火を蠟燭に点(とも)して分け、臣下に賜ったという。
以文常會友
文(ぶん)を以(もっ)て常(つね)に友(とも)を会(かい)し
  • 以文常会友 … 劉郎中は日頃、文雅の道をもって友人を集める。文は、詩・書・礼・楽を指す。『論語』顔淵篇に「君(くん)子(し)は文(ぶん)を以(もっ)て友(とも)を会(かい)し、友(とも)を以(もっ)て仁(じん)を輔(たす)く」(君子以文會友、以友輔仁)とあるのを踏まえる。ウィキソース「論語/顏淵第十二」参照。
  • 常 … 『全唐詩』『唐五十家詩集本』では「長」に作る。
惟德自成鄰
惟(こ)れ徳(とく) 自(おの)ずから隣(りん)を成(な)す
  • 惟徳自成隣 … その徳ゆえに、自然と仲間が集ってくる。『論語』里仁篇に「徳(とく)は孤(こ)ならず、必(かなら)ず隣(となり)有(あ)り」(德不孤、必有鄰)とあるのを踏まえる。ウィキソース「論語/里仁第四」参照。
  • 惟 … 「これ」と読み、文頭または句間において語調を転じて強調する意を示す。
  • 鄰 … 仲間。理解者。支持者。共鳴する隣人。
池照窗陰晚
池(いけ)は照(て)らす 窓陰(そういん)の晩(くれ)
  • 池照 … 池の面(おもて)は夕日を受けて照り輝く。
  • 窓陰 … 宴席の設けられた窓際。
  • 晩 … 薄暗くなってきた。
杯香藥味春
杯(さかずき)は香(かんば)し 薬(やく)味(み)の春(はる)
  • 杯香 … 酒杯は香(かぐわ)しく。
  • 香 … 『唐五十家詩集本』『文苑英華』では「觴」に作る。
  • 薬味春 … 酒に加えた薬草の味によって、春めいた気持ちになる。
  • 薬味 … 酒に加えた薬草の味。薬酒として用いた。
  • 薬 … 『唐五十家詩集本』では「樂」に作る。
欄前花覆地
欄前(らんぜん) 花(はな) 地(ち)を覆(おお)い
  • 欄前 … 回廊の手すりの前。『全唐詩』『唐五十家詩集本』『文苑英華』『河岳英霊集』では「簷前」に作る。簷前ならば、軒端の前。
  • 花覆地 … 花が地面を覆うように咲き乱れている。
竹外鳥窺人
竹外(ちくがい) 鳥(とり) 人(ひと)を窺(うかが)う
  • 竹外 … 竹林の向こうから。
  • 鳥窺人 … 小鳥が人の様子を窺うようにして姿を見せる。
何必桃源裏
何(なん)ぞ必(かなら)ずしも桃源(とうげん)の裏(うち)
  • 何必~隠淪 … 何も桃源の仙境に深く隠れ住んで、隠者の生活をする必要があろうか。ここが結構桃源そのままである。
  • 何必 … 「なんぞかならずしも~ん(や)」と読み、「どうして~である必要があろうか、いやないのだ」と訳す。反語。
  • 桃源 … 東晋の陶潜「桃花源記」に描かれた理想郷。俗世間から離れた平和な別天地。桃源郷。ユートピア。故事名言「桃源郷」、ウィキソース「桃花源記」参照。
  • 裏 … ~の中。~のうち。場所をあらわす接尾辞。
深居作隱淪
深居(しんきょ)して隠淪(いんりん)と作(な)らん
  • 深居 … 深く隠れ住む。
  • 隠淪 … 隠れて世に出ないこと。隠遁すること。後漢の桓譚『新論』に「天下の神人は五、一に曰わく神仙、二に曰わく隠淪、三に曰わく使鬼物、四に曰わく先知、五に曰わく鋳凝」(天下神人五、一曰神仙、二曰隱淪、三曰使鬼物、四曰先知、五日鑄凝)とある。ウィキソース「新論/13」参照。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻四(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻一百三十一(排印本、中華書局、1960年)
  • 『祖詠集』(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)
  • 『唐詩品彙』巻七十六([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『唐詩別裁集』巻十七([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
  • 『文苑英華』巻二百十五(影印本、中華書局、1966年)
  • 『古今詩刪』巻十九(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
  • 『河岳英霊集』巻下(傅璇琮編撰『唐人選唐詩新編』、陝西人民教育出版社、1996年)
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