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三日尋李九荘(常建)

三日尋李九莊
三(みっ)日(か)、李(り)九(きゅう)の荘(そう)を尋(たず)ぬ
常(じょう)建(けん)
  • 七言絶句。頭・舟・流(下平声庚韻)。
  • ウィキソース「三日尋李九莊」参照。
  • 三日 … 陰暦三月三日、上(じょう)巳(し)の節句のこと。上巳とは、陰暦三月の初めの巳(み)の日。この日、川のほとりで禊(みそぎ)をして一年の穢(けが)れを祓(はら)う風習があった。魏以後、三月三日と定めた。ウィキペディア【上巳】参照。
  • 李九 … 作者の友人。九は、排行。人物については不詳。
  • 荘 … 別荘。
  • この詩は、三月三日すなわち上(じょう)巳(し)の節句に、友人の李九の別荘を訪れたときの作。
  • 常建 … 生没年不詳。盛唐の詩人。長安(陝西省西安市)の人といわれてきたが、はっきりしない。字(あざな)は不詳。開元十五年(727)、王昌齢らとともに進士に及第。盱眙(くい)(江蘇省)の尉をつとめた。晩年は鄂渚(がくしょ)(湖北省)に隠棲して王昌齢・張(ちょう)僨(ふん)らと交際した。著に『常建詩集』二巻がある。ウィキペディア【常建】参照。
雨歇楊林東渡頭
雨(あめ)は歇(や)む 楊林(ようりん) 東(とう)渡(と)の頭(ほとり)
  • 雨歇 … 雨が止んだ。雨が上がった。北周の庾信「周大将軍司馬裔碑」に「烟(けむり)冰(ひょう)井(せい)に沈(しず)み、雨(あめ)雲門(うんもん)に歇(や)む」(烟沉冰井、雨歇雲門)とある。ウィキソース「文苑英華 (四庫全書本)/卷0904」参照。
  • 楊林 … 渡し場の名。楊林渡。安徽省和県の東にある。『通鑑地理通釈』巻十三、采石の条に「西(せい)采石(さいせき)の楊林(ようりん)渡(と)」(西采石楊林渡)とある。采石は采石(さいせき)磯(き)といい、長江に突き出た断崖。安徽省当塗県の西北にある。古くは牛(ぎゅう)渚(しょ)磯(き)とも呼んだ。ウィキソース「通鑑地理通釋 (四庫全書本)/卷13」参照。
  • 東渡頭 … 東の渡し場のほとり。
永和三日盪輕舟
永(えい)和(わ)三日(さんじつ) 軽(けい)舟(しゅう)を盪(うご)かす
  • 永和三日 … 永和九年(353)三月三日、東晋の王羲之が会稽郡の山陰県(今の浙江省紹興市柯橋区)の蘭亭に四十一名の名士や親戚を集めて修(しゅう)禊(けい)(みそぎ)をし、流觴(りゅうしょう)曲(きょく)水(すい)(曲がりくねった流れに杯を浮かべ、その杯が自分の前に流れて来るまでに詩を作る遊びのこと)の遊びをした故事を踏まえる。「蘭亭序」に「永(えい)和(わ)九(く)年(ねん)、歳(とし)癸(き)丑(ちゅう)に在(あ)り。暮(ぼ)春(しゅん)の初(はじ)め、会稽(かいけい)山陰(さんいん)の蘭亭(らんてい)に会(かい)す。禊(けい)事(じ)を脩(おさ)むるなり。群賢(ぐんけん)畢(ことごと)く至(いた)り、少長(しょうちょう)咸(みな)集(あつ)まる。此(こ)の地(ち)に崇山(すうざん)峻(しゅん)嶺(れい)、茂(も)林(りん)脩(しゅう)竹(ちく)有(あ)り。又(また)清(せい)流(りゅう)激湍(げきたん)有(あ)りて、左(さ)右(ゆう)に暎帯(えいたい)す。引(ひ)いて以(もっ)て流觴(りゅうしょう)の曲(きょく)水(すい)と為(な)し、其(そ)の次(じ)に列(れつ)坐(ざ)す。糸(し)竹(ちく)管弦(かんげん)の盛(せい)無(な)しと雖(いえど)も、一(いっ)觴(しょう)一詠(いちえい)、亦(ま)た以(もっ)て幽(ゆう)情(じょう)を暢(ちょう)叙(じょ)するに足(た)れり。是(こ)の日(ひ)や、天(てん)朗(ほが)らかに気(き)清(きよ)く、恵風(けいふう)和(わ)暢(ちょう)せり。仰(あお)いで宇(う)宙(ちゅう)の大(だい)を観(み)、俯(ふ)して品類(ひんるい)の盛(さか)んなるを察(さっ)す。目(め)を遊(あそ)ばしめ懐(おも)いも騁(は)する所以(ゆえん)、以(もっ)て視(し)聴(ちょう)の娛(たのし)みを極(きわ)むるに足(た)れり。信(まこと)に楽(たの)しむ可(べ)きなり」(永和九年、歳在癸丑。暮春之初、會于會稽山陰之蘭亭。脩禊事也。羣賢畢至、少長咸集。此地有崇山峻領、茂林脩竹。又有淸流激湍、暎帶左右。引以爲流觴曲水、列坐其次。雖無絲竹管弦之盛、一觴一詠、亦足以暢敘幽情。是日也、天朗氣淸、惠風和暢。仰觀宇宙之大、俯察品類之盛。所以遊目騁懷、足以極視聽之娛。信可樂也)とある。ウィキソース「蘭亭集序」参照。ウィキペディア【蘭亭序】参照。
  • 軽舟 … 舟足の速い小舟。舟足の軽やかな小舟。
  • 盪 … 舟を漕ぎ動かして進んでゆくこと。
故人家在桃花岸
故(こ)人(じん) 家(いえ)は桃(とう)花(か)の岸(きし)に在(あ)り
  • 故人 … 古くからの友人。旧友。死んだ人のことではない。李九を指す。
  • 桃花岸 … 桃の花咲く岸辺。
直到門前溪水流
直(ただ)ちに到(いた)る 門前(もんぜん) 渓水(けいすい)の流(なが)れ
  • 直到 … まっすぐに行き着いた。
  • 門前渓水流 … 李九の家の門前を流れる渓流に沿って。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻一百四十四(排印本、中華書局、1960年)
  • 『常建集』巻下(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)
  • 『万首唐人絶句』七言・巻六十七(明嘉靖本影印、文学古籍刊行社、1955年)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十二(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻四十八([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『唐詩別裁集』巻十九([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
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