僧院(釈霊一)
僧院
僧院
僧院
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻八百九、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻三十九(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『文苑英華』巻二百三十六、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、66頁)、『唐詩品彙』巻五十五、他
- 七言絶句。過・蘿・多(平声歌韻)。
- ウィキソース「御定全唐詩 (四庫全書本)/卷809」「文苑英華 (四庫全書本)/卷0236」参照。
- 詩題 … 『全唐詩』では「僧院に題す」(題僧院)に作る。『万首唐人絶句』では「題五僧院」に作る。『文苑英華』では「題王僧院」に作る。
- 僧院 … 僧侶のいる寺院。寺。僧宇。僧刹。
- この詩は、作者がとある山寺を訪れ、その自然の景観を詠んだもの。
- 釈霊一 … 727~762。中唐の詩人。俗姓は呉。剡中(浙江省)の人。一説に広陵(江蘇省)の人。九歳で出家し、後に若耶渓(浙江省紹興)の雲門寺に住み、多くの弟子を指導し、律師として尊敬された。劉長卿・皇甫冉・郎士元・朱放・張継らと詩の唱和をした。『全唐詩』には四十一首、『唐詩選』には一首を収める。『霊一詩集』一巻がある。ウィキペディア【釈霊一】参照。
虎溪閒月引相過
虎渓の間月 引いて相過ぎ
- 虎渓 … 江西省九江市の南、廬山東林寺の境内にある谷川。東林寺に住した晋の高僧慧遠法師は、来客があっても虎渓の橋を越えて見送ることがなかったが、ある日、陶淵明と陸修静の二人が来て帰るとき、つい話に夢中になって橋を渡ってしまい、三人が大笑いしたという。一句は、この「虎渓三笑」の故事を踏まえる。『廬山記』叙山北篇に「流泉寺を匝りて下り虎渓に入る。昔遠師客を送りて此を過ぐるに、虎輒ち号鳴す。故に名づく。時に陶元亮栗里山の南に居り、陸修静も、亦た有道の士なり。遠師嘗て此の二人を送り、与に語りて道合し、覚えず之を過ぎ、因りて相与に大いに笑う。今の世伝うる三笑の図は、蓋し此に起る」(流泉匝寺下入虎溪。昔遠師送客過此、虎輒號鳴。故名焉。時陶元亮居栗里山南、陸修靜、亦有道之士。遠師嘗送此二人、與語道合、不覺過之、因相與大笑。今世傳三笑圖、蓋起於此)とある。ウィキソース「廬山記/卷第一」参照。
- 渓 … 『万首唐人絶句』では「谿」に作る。同義。
- 間月 … 静かな月。静かに照る月。
- 間 … 『万首唐人絶句』『文苑英華』『古今詩刪』『唐詩品彙』では「閑」に作る。同義。
- 引相過 … 月の光に誘われて谷川を通り過ぎた。「引」は、ひき寄せる。導く。
- 引 … ひき寄せる。導く。
- 相 … ここでは「互いに」という意味ではなく、動作に対象があることを示す言葉。
帶雪松枝掛薜蘿
雪を帯ぶる松枝 薜蘿を掛く
- 帯雪松枝 … 雪をかぶった松の枝。
- 薜蘿 … マサキノカズラとツタカズラ。または、つる草の総称。ウィキペディア【つる植物】参照。
- 掛 … 絡まって掛かっている。
無限靑山行欲盡
無限の青山 行〻尽きんと欲す
- 無限 … 限りなく続く。果てしなく続く。
- 青山 … 青い山々。
- 行 … 「ゆくゆく」と読む。進むにつれて。いつしか。
- 欲尽 … 行きつく所まで来た。
白雲深處老僧多
白雲深き処 老僧多し
- 白雲深処 … 白雲が深く立ち込めている辺りに。
- 深 … 『万首唐人絶句』では「㴱」に作る。異体字。
- 處 … 『古今詩刪』では「䖏」に作る。異体字。
- 老僧多 … (夜坐に励む)年老いた僧の姿が数多く見かけられた。
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