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僧院(釈霊一)

僧院
僧院(そういん)
釈(しゃく)霊一(れいいつ)
  • 七言絶句。過・蘿・多(下平声歌韻)。
  • ウィキソース「全唐詩/卷809」「文苑英華 (四庫全書本)/卷0236」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』では「僧院に題す」(題僧院)に作る。『万首唐人絶句』では「題五僧院」に作る。『文苑英華』では「題王僧院」に作る。
  • 僧院 … 僧侶のいる寺院。寺。僧(そう)宇(う)。僧刹(そうさつ)。
  • この詩は、作者がとある山寺を訪れ、その自然の景観を詠んだもの。
  • 釈霊一 … 727~762。中唐の詩人。俗姓は呉(ご)。剡(せん)中(ちゅう)(浙江省)の人。一説に広陵(江蘇省)の人。九歳で出家し、後に若耶渓(浙江省紹興)の雲門寺に住み、多くの弟子を指導し、律師として尊敬された。劉長卿・皇甫冉・郎士元・朱放・張継らと詩の唱和をした。『全唐詩』には四十一首、『唐詩選』には一首を収める。『霊一詩集』一巻がある。ウィキペディア【釈霊一】参照。
虎溪閒月引相過
虎(こ)渓(けい)の間月(かんげつ) 引(ひ)いて相(あい)過(す)ぎ
  • 虎渓 … 江西省九江市の南、廬山東林寺の境内にある谷川。東林寺に住した晋の高僧慧(え)遠(おん)法師は、来客があっても虎渓の橋を越えて見送ることがなかったが、ある日、陶淵明と陸修静の二人が来て帰るとき、つい話に夢中になって橋を渡ってしまい、三人が大笑いしたという。一句は、この「虎渓三笑」の故事を踏まえる。『廬山記』叙山北篇に「流(りゅう)泉(せん)寺(てら)を匝(めぐ)りて下(くだ)り虎(こ)渓(けい)に入(い)る。昔(むかし)遠(おん)師(し)客(かく)を送(おく)りて此(これ)を過(す)ぐるに、虎(とら)輒(すなわ)ち号鳴(ごうめい)す。故(ゆえ)に名(な)づく。時(とき)に陶(とう)元(げん)亮(りょう)栗(りつ)里(り)山(ざん)の南(みなみ)に居(お)り、陸(りく)修(しゅう)静(せい)も、亦(ま)た有道(ゆうどう)の士(し)なり。遠(おん)師(し)嘗(かつ)て此(こ)の二(に)人(にん)を送(おく)り、与(とも)に語(かた)りて道(みち)合(がっ)し、覚(おぼ)えず之(これ)を過(す)ぎ、因(よ)りて相(あい)与(とも)に大(おお)いに笑(わら)う。今(いま)の世(よ)伝(つた)うる三(さん)笑(しょう)の図(ず)は、蓋(けだ)し此(ここ)に起(おこ)る」(流泉匝寺下入虎溪。昔遠師送客過此、虎輒號鳴。故名焉。時陶元亮居栗里山南、陸修靜、亦有道之士。遠師嘗送此二人、與語道合、不覺過之、因相與大笑。今世傳三笑圖、蓋起於此)とある。ウィキソース「廬山記/卷第一」参照。
  • 間月 … 静かな月。静かに照る月。
  • 引相過 … 月の光に誘(いざな)われて谷川を通り過ぎた。引は、ひき寄せる。導く。
  • 引 … ひき寄せる。導く。
  • 相 … ここでは「互いに」という意味ではなく、動作に対象があることを示す接頭語。「(対象に)~する」「(対象を)~する」と訳す。
帶雪松枝掛薜蘿
雪(ゆき)を帯(お)ぶる松(しょう)枝(し) 薜(へい)蘿(ら)を掛(か)く
  • 帯雪松枝 … 雪をかぶった松の枝。
  • 薜蘿 … マサキノカズラとツタカズラ。または、つる草の総称。ウィキペディア【つる植物】参照。
  • 掛 … 絡まって掛かっている。
無限靑山行欲盡
無(む)限(げん)の青山(せいざん) 行〻(ゆくゆく)尽(つ)きんと欲(ほっ)す
  • 無限 … 限りなく続く。果てしなく続く。
  • 青山 … 青い山々。三国魏の阮籍「詠懐詩八十二首」の第十三首(『文選』巻二十三では十七首中第六首)に「高きに登りて四野に臨み、北のかた青山の阿(くま)を望む」(登高臨四野、北望靑山阿)とある。四野は、四方の野原。ウィキソース「詠懷詩十七首」参照。また、南朝斉の謝朓「東田(とうでん)に游ぶ」詩(『文選』巻二十二)に「芳春の酒に対せずして、青山の郭(かく)を還(かえ)り望む」(不對芳春酒、還望青山郭)とある。郭は、城壁。ウィキソース「遊東田」参照。また、南朝梁の簡文帝「秋夜」詩(『玉台新詠』巻七)に「緑(りょく)潭(たん) 雲気を倒(さかしま)にし、青山 月(げつ)眉(び)を銜(ふく)む」(綠潭倒雲氣、青山銜月眉)とある。月眉は、眉のような月。三日月。ウィキソース「秋夜 (蕭綱)」参照。
  • 行 … 「ゆくゆく」と読む。進むにつれて。いつしか。
  • 欲尽 … 行きつく所まで来た。
白雲深處老僧多
白雲(はくうん)深(ふか)き処(ところ) 老僧(ろうそう)多(おお)し
  • 白雲深処 … 白雲が深く立ち込めている辺りに。
  • 老僧多 … (夜坐に励む)年老いた僧の姿が数多く見かけられた。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻八百九(排印本、中華書局、1960年)
  • 『文苑英華』巻二百三十六(影印本、中華書局、1966年)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻三十九(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻五十五([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
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