霊隠寺(駱賓王)
靈隱寺
霊隠寺
霊隠寺
- 五言排律。嶤・寥・潮・飄・遙・凋・囂・橋(平声蕭韻)。
- 『全唐詩』巻53に宋之問の作として所収。ウィキソース「靈隱寺」参照。
- 霊隠寺 … 浙江省杭州にある禅宗寺院。東晋の326年創建。インドの僧慧理は、この寺のある山の形を見て、霊鷲山の小嶺が飛んできたようだといい、その峰を飛来または鷲嶺と名づけ、庵を結んで霊隠といったという。ウィキペディア【霊隠寺】参照。
- 駱賓王 … 640?~684?。初唐の詩人。婺州義烏(浙江省義烏県)の人。字は未詳。武功(陝西省武功県)を経て長安(陝西省)の主簿を歴任したが、臨海(浙江省臨海県)の丞に左遷された。684年、徐敬業の乱に加わり、檄文を草した。武后はこれを読んでその才に感嘆し、彼を重用しなかったことを悔いたという。王勃・楊炯・盧照鄰とともに初唐の四傑の一人。ウィキペディア【駱賓王】参照。
鷲嶺鬱岧嶤
鷲嶺 鬱として岧嶤
- 鷲嶺 … 霊鷲山。インドにある山。釈迦が説法した所。鷲山とも。ここでは霊隠寺の峰を指していう。ウィキペディア【霊鷲山】参照。
- 鬱 … こんもり茂るさま。
- 岧嶤 … 山の高いさま。「嶤」は「嶢」の異体字。
龍宮鎖寂寥
竜宮 鎖されて寂寥
- 竜宮 … 霊隠寺を指す。
- 鎖 … 戸を閉ざしている。
- 寂寥 … ひっそりとして静かなさま。
樓觀滄海日
楼には観る滄海の日
- 楼 … 寺の楼。
- 滄海 … 大海原。
- 日 … 朝日。
門對浙江潮
門は対す浙江の潮
- 門対 … 門は(浙江の潮に)向かい合う。
- 浙江潮 … 杭州名物の一つ。杭州湾は奥に入るほど狭くなって銭塘江(浙江)に続くため、満潮時に海水が高潮となって逆流する現象。
桂子月中落
桂子 月中より落ち
- 桂子 … 桂の実。月の中に生えているといわれている。
天香雲外飄
天香 雲外に飄る
- 天香 … 天上の香り。桂の花の香りをいう。
- 雲外飄 … 雲の彼方までも漂っている。
捫蘿登塔遠
蘿を捫んで塔に登ること遠く
- 蘿 … つたかずら。
- 捫 … 手で握ること。つかむこと。
刳木取泉遙
木を刳りて泉を取ること遥かなり
- 刳木 … 木をくりぬいた筧のこと。『易経』繋辞下伝に「木を刳りて舟と為す」(刳木爲舟)とあるのに基づく。ウィキソース「易傳/繫辭下」(第二章)参照。
霜薄花更發
霜薄くして花更に発き
- 霜薄 … 霜が降りることが少ない。気候が温暖な様子。
- 発 … 開く。
冰輕葉互凋
氷は軽くして葉互いに凋む
- 冰軽 … 寒気に氷が張っても薄い。気候が温暖なこと。「冰」は「氷」の異体字。
- 互 … かわるがわる。『全唐詩』では「未」に作る。
夙齡尚遐異
夙齢 遐異を尚び
- 夙齢 … 若い頃。少年時代。
- 遐異 … 世俗とかけ離れて異なっていること。ここでは遠い国の珍しい風物。
披對滌煩囂
披対 煩囂を滌う
- 披対 … 胸襟を開いて相対する。「披」は『全唐詩』では「搜」に作る。
- 煩囂 … やかましく、わずらわしいこと。世俗のわずらわしさをいう。
- 滌 … 洗い流す。
待入天台路
天台の路に入るを待って
- 天台 … 天台山。浙江省天台県の北にある。ウィキペディア【天台山】参照。
- 入天台路 … 仏法に帰依することをいう。
看余渡石橋
余が石橋を渡るを看よ
- 渡石橋 … 天台山の深い谷川にかけられた石の橋を渡る。幅が一尺にも満たないという。生死を超えた悟りの世界に入ることに喩える。
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