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送劉侍郎(李端)

送劉侍郎
りゅうろうおく
たん
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻二百八十六、『唐詩品彙』巻五十、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻二十七(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、62頁)、『唐人万首絶句選』巻四、他
  • 七言絶句。城・生・聲(平声庚韻)。
  • ウィキソース「送劉侍郎」参照。
  • 詩題 … 『唐人万首絶句選』では「送劉侍御」に作る。
  • 劉 … 劉某。人物については不明。
  • 侍郎 … 官名。尚書省六部の次官。または門下省・中書省の次官。ウィキペディア【侍郎】参照。
  • 送 … 見送る。
  • この詩は、侍郎の官にあった劉某の旅立つのを見送って詠んだもの。
  • 李端 … 732~792。中唐の詩人。趙州(河北省趙県)の人。あざなは正己。大暦五年(770)、進士に及第。秘書省校書郎に任ぜられたが、病気のため辞任して終南山の草堂寺に住んだ。後に杭州(浙江省杭州市)司馬に任ぜられたが、再び辞任し衡山(湖南省衡陽市)に隠棲し、衡嶽幽人と号した。盧綸・銭起・司空曙・耿湋らとともに大暦十才子の一人。ウィキペディア【李端】参照。
幾人同入謝宣城
幾人いくにんおなじくる しゃせんじょう
  • 幾人 … 幾人もの者が。幾人もの人が。
  • 同入 … 時を同じくして幕下に入った。
  • 入 … 『全唐詩』では「去」に作り、「一作入」とある。『万首唐人絶句』『唐人万首絶句選』では「去」に作る。
  • 謝宣城 … 南北朝時代、せいの詩人、謝朓(464~499)のこと。陳郡よう(河南省太康たいこう付近)の人。あざなげんせんじょう(安徽省)の太守となったため、謝宣城という。一族の謝霊運・謝恵連とともに「三謝」と呼ばれる。『謝宣城集』五巻がある。ウィキペディア【謝朓】参照。
未及酬恩隔死生
いまおんむくゆるにおよばずしてせいへだ
  • 未及酬恩 … まだその恩に報いることができないうちに。まだ恩返しもしていないうちに。沈約の「碣石けっせきに臨む」(『楽府詩集』巻第五十五)に「いてこころいまだまらず、おんむくゆることついおわらんや」(驥老心未窮、酬恩豈終畢)とある。ウィキソース「樂府詩集/055卷」参照。
  • 隔死生 … 死生の境を隔てる。幽明相隔てる。あの世とこの世とに別れること。ここでは太守が他界されてしまったことを指す。
唯有夜猿知客恨
えん客恨かくこん
  • 唯 … ただ。『万首唐人絶句』では「惟」に作る。同義。
  • 夜猿 … 夜中に鳴く猿。
  • 客恨 … あなたの旅先でのわびしい思い。恨は、愁い。
  • 有~知 … (猿だけが)知ってくれるだろう。理解していることだろう。
嶧陽溪路第三聲
嶧陽えきようけい 第三声だいさんせい
  • 嶧陽 … 嶧山の南側。陽は、山の南側、または川の北側。ちなみに陰は、山の北側、または川の南側。『書経』禹貢篇に「嶧陽えきようどうなり」(嶧陽孤桐)とある。ウィキソース「尚書/禹貢」参照。嶧山の場所は、山東省すう県の東南と、江蘇省県の西南との二説あり、どちらなのか確定できない。山東省鄒県にある方は、『読史方輿紀要』山東、兗州府、鄒県の条に「嶧山は、県の東南二十五里、一に邾嶧山と名づく、亦た鄒繹山と曰う」(嶧山、縣東南二十五里、一名邾嶧山、亦曰鄒繹山)とある。ウィキソース「讀史方輿紀要/卷三十二」参照。また江蘇省邳県にある方は、『読史方輿紀要』江南、淮安府、邳州の条に「葛嶧山は、州の西北六里、古文以て即ち禹貢の嶧山と為す、誤りに似たり、俗に距山と名づく、沂水と相へだつるを謂うなり、今亦た山東嶧県に見る」(葛嶧山、州西北六里、古文以為即禹貢之嶧山、似誤、俗名距山、謂與沂水相距也、今亦見山東嶧縣)とある。ウィキソース「讀史方輿紀要/卷二十二」参照。
  • 溪 … 『唐詩品彙』では「谿」に作る。同義。
  • 渓路 … 谷川沿いの道。
  • 第三声 … 猿の鳴き声がとても悲しく、三度目の鳴き声を聞けば涙を落とさずにいられないという。『水経注』江水の条に「漁者ぎょしゃうたいていわく、とうさんきょうきょうながく、さるくこと三声さんせいにして、なみだもすそうるおす」(漁者歌曰、巴東三峽、巫峽長、猿鳴三聲、淚沾裳)とある。ウィキソース「水經注/34」参照。また梁の元帝(蕭繹)の「武陵王におくる詩」(『古詩紀』巻八十一)に「ちょうちょうべつなげき、三声さんせいえんかなしむ」(四鳥嗟長別、三聲悲夜猿)とある。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷081」参照。
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