登弁覚寺(王維)
登辨覺寺
弁覚寺に登る
弁覚寺に登る
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻三、『全唐詩』巻一百二十六、『王右丞文集』巻五(静嘉堂文庫蔵、略称:静嘉堂本)、『王摩詰文集』巻九(略称:蜀刊本)、『須溪先生校本唐王右丞集』巻五(『四部叢刊 初篇集部』所収)、顧起経注『類箋唐王右丞詩集』巻四(略称:顧起経注本)、顧可久注『唐王右丞詩集』巻五(『和刻本漢詩集成 唐詩1』所収、略称:顧可久注本)、趙殿成注『王右丞集箋注』巻八(略称:趙注本)、『文苑英華』巻二百三十四、『唐詩品彙』巻六十一、他
- 五言律詩。城・平・聲・生(平声庚韻)。
- ウィキソース「登辨覺寺」参照。
- 弁覚寺 … 所在は不明。
- 辨 … 『全唐詩』には「一作新」とある。
- 王維 … 699?~761。盛唐の詩人、画家。太原(山西省)の人。字は摩詰。開元七年(719)、進士に及第。安禄山の乱で捕らえられたが事なきを得、乱後は粛宗に用いられて尚書右丞(書記官長)まで進んだので、王右丞とも呼ばれる。また、仏教に帰依したため、詩仏と称される。『王右丞集』十巻(または六巻)がある。ウィキペディア【王維】参照。
竹逕從初地
竹逕 初地従りし
- 竹逕 … 竹林の中の小道。
- 逕 … 『顧起経注本』『趙注本』『全唐詩』では「徑」に作る。同義。
- 從 … 『顧起経注本』『全唐詩』には「一作連」とある。『文苑英華』では「連」に作り、「集作從」とある。
- 初地 … 寺の入り口と仏教の悟りの入り口とをかけていったもの。
蓮峯出化城
蓮峰 化城を出す
- 化城 … 仮に作られた幻の都城。『法華経』化城喩品による。ここでは弁覚寺を指す。
窻中三楚盡
窓中 三楚尽き
- 窻 … 『蜀刊本』『趙注本』『全唐詩』では「窗」に作る。『顧起経注本』では「牕」に作る。いずれも「窓」の異体字。
- 三楚 … 西楚・東楚・南楚。
- 盡 … 『顧起経注本』『全唐詩』には「一作靜」とある。『文苑英華』では「靜」に作り、「集作盡」とある。
林外九江平
林外 九江平らかなり
- 外 … 『文苑英華』には「集作上」とある。『顧起経注本』『全唐詩』では「上」に作り、「一作外」とある。『静嘉堂本』『蜀刊本』『四部叢刊本』『顧可久注本』『趙注本』では「上」に作る。
嫩草承趺坐
嫩草 趺坐を承け
- 嫩 … 『全唐詩』では「軟」に作り、「一作嫩」とある。「嫩」は、若くて柔らかい。『静嘉堂本』『四部叢刊本』では「敷」に作る。『蜀刊本』『趙注本』では「輭」に作る。『顧起経注本』でも「輭」に作り、「一作嫩」とある。『文苑英華』には「集作輭」とある。「輭」は「軟」の異体字。
- 草 … 『顧可久注本』では「艸」に作る。同義。
- 趺坐 … 足をくみあわせて坐ること。坐禅の正しい坐り方。
長松響梵聲
長松 梵声を響かす
- 梵声 … 読経の声。梵は梵唄。
空居法雲外
空居す 法雲の外
- 空居 … 心を空寂にして住む。
- 法雲 … 法雨を降らす雲。法雨とは仏法の教えが衆生を救う恵みの雨にたとえたことば。
觀世得無生
世を観じて無生を得たり
- 観世 … 世間の実相を観照すること。
- 世 … 『静嘉堂本』『四部叢刊本』では「丗」に作る。異体字。
- 無生 … 生死を超脱した真如の境地。
- 無 … 『静嘉堂本』では「无」に作る。同義。
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