牖中に日を窺う
- 出典:『世説新語』文学(ウィキソース「世說新語/文學」参照)
- 解釈:窓から太陽をのぞき見る。学問や知識が狭いこと。また、狭い範囲から集中して物事を見ることの喩え。「牖」は、明かりとりの窓。連子窓。
- 世説新語 … 三巻。南北朝時代、宋の劉義慶(403~444)の編。後漢末から東晋末にいたる知識人の逸話を収録したもの。ウィキペディア【世説新語】参照。
褚季野語孫安國云、北人學問、淵綜廣博。孫答曰、南人學問、淸通簡要。
褚季野、孫安国に語りて云う、北人の学問は、淵綜広博なり。孫答えて曰く、南人の学問は、清通簡要なり、と。
- 褚季野 … 褚裒。303~350。東晋の外戚。季野は字。河南郡陽翟県(今の河南省禹州市)の人。ウィキペディア【褚裒】参照。
- 孫安国 … 孫盛。302~373。東晋の歴史家・政治家。安国は字。太原郡中都県(今の山西省平遥県)の人。ウィキペディア【孫盛】参照。
- 北人 … 北方の人。
- 淵綜 … 奥深くて総合的であること。
- 広博 … 知識などが広いこと。
- 南人 … 南方の人。
- 清通 … 人がらが清く、道理に明るいこと。
- 簡要 … 簡単で、要領を得ていること。
支道林聞之曰、聖賢固所忘言。自中人以還、北人看書、如顯處視月、南人學問、如牖中窺日。
支道林、之を聞きて曰く、聖賢は固より言を忘るる所なり。中人より以還、北人の書を看るは、顕処に月を視るが如く、南人の学問は、牖中に日を窺うが如し、と。
- 支道林 … 支遁。314~366。東晋の学僧。道林は字。陳留(今の河南省開封市一帯)の人。ウィキペディア【支遁】参照。
- 忘言 … 言葉は相手に思考するところを伝える手段であり、相手に伝わればその言葉は忘れてしまう。『荘子』外物篇に「言は意に在る所以、意を得て言を忘る」(言者所以在意、得意而忘言)とある。ウィキソース「莊子/外物」参照。
- 中人 … 能力や才能が中等の人。普通の人。凡人。
- 以還 … 以下。
- 看書 … 書物を読むこと。
- 如顕処視月 … 明るいところで月を眺めるようなもの。視野が広すぎて、ぼんやりしている様子。
- 牖中窺日 … 窓から太陽を眺める。知識は狭いが、学問が確実になる様子。
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