楚辞 九歌第二 (九)山鬼
若有人兮山之阿 被薜茘兮帶女羅
若に人有り山の阿に、薜茘を被て女羅を帯とす。
- ウィキソース「九歌」参照。
- 山鬼 … 山中に住む精霊。
- 山之阿 … 山の端。「阿」は、一角。
- 薜茘 … 香草の一つ。まさきのかづらの類。
- 被 … 着る。着物とする。
- 女羅 … 香草の一つ。ひかげのかづら。
旣含睇兮又冝笑 子慕予兮善窈窕
既に睇を含みて又宜く笑う。子、予の善く窈窕たるを慕う。
乘赤豹兮從文狸 辛夷車兮結桂旗
赤豹に乗りて文狸を従え、辛夷の車に桂の旗を結び、
被石蘭兮帶杜衡 折芳馨兮遺所思
石蘭を被て杜衡を帯とし、芳馨を折りて思う所に遺る。
余處幽篁兮終不見天 路險難兮獨後來
余、幽篁に処りて終に天を見ず、路険難にして独り後れて来る。
表獨立兮山之上 雲容容兮而在下
表く独り山の上に立てば、雲容容として下に在り。
杳冥冥兮羌晝晦 東風飄兮神靈雨
杳として冥冥として、羌、昼晦く、東風飄として神霊雨ふらす。
留靈脩兮憺忘歸 歳旣晏兮孰華予
霊脩を留めて憺として帰るを忘れしめん。歳既に晏ければ、孰か予を華さかせん。
采三秀兮於山閒 石磊磊兮葛蔓蔓
三秀を山間に采るに、石磊磊として葛蔓蔓たり。
怨公子兮悵忘歸 君思我兮不得閒
公子を怨んで悵として帰るを忘る。君我を思いて間を得ざるならん。
山中人兮芳杜若 飲石泉兮蔭松栢
山中の人は杜若芳しく、石泉を飲みて松柏に蔭わる。
君思我兮然疑作
君我を思うも然疑作る。
雷塡塡兮雨冥冥 猨啾啾兮狖夜鳴
雷填填として雨冥冥たり。猨啾啾として狖夜鳴く。
- 雷 … 底本では「靁」に作るが、改めた。
- 狖 … 尾長ざる。底本では「又」に作るが、改めた。
風颯颯兮木蕭蕭 思公子兮徒離憂
風颯颯として木蕭蕭たり。公子を思えば徒らに憂いに離るのみ。
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