塞下曲(釈皎然)
塞下曲
塞下の曲
塞下の曲
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻二百九十五、『皎然集』巻六(『四部叢刊 初編集部』所収)、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻三十九(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『楽府詩集』巻九十三・新楽府辞、『唐詩品彙拾遺』巻四、他
- 七言絶句。梅・來・囘(平声灰韻)。
- ウィキソース「御定全唐詩 (四庫全書本)/卷820」「樂府詩集/093卷」参照。
- 詩題 … 『全唐詩』『四部叢刊本』『万首唐人絶句』『楽府詩集』『唐詩品彙拾遺』では「塞下曲二首 其一」に作る。
- 塞下曲 … 新楽府題。塞下は、辺境の塞のあたりの意。『楽府詩集』巻九十二・新楽府辞・楽府雑題に収める楽曲の名。辺塞での戦闘や兵士の望郷の思いを詠う。古楽府の「出塞」「入塞」に似たもの。
- この詩は、辺塞に出征した兵士の労苦を詠んだもの。
- 釈皎然 … 730~799。盛唐の詩僧。湖州長城(今の浙江省長興県)の人。字は清昼。俗姓は謝。謝霊運の子孫と伝えられる。出家して郷里の杼山で修行し、妙喜寺に住んだ。顔真卿や韋応物らと親交があった。のちに廬山の西林寺に住んだ。『皎然集』十巻がある。ウィキペディア【釈皎然】参照。
寒塞無因見落梅
寒塞 落梅を見るに因無し
- 寒塞 … 寒さ厳しい辺塞の地。
- 落梅 … 梅の花の散り落ちること。散り落ちた梅の花と、「梅花落」という笛の曲名をかけている。『楽府詩集』に「梅花落は、本と笛中の曲なり。按ずるに、唐の大角の曲にも亦た大単于・小単于・大梅花・小梅花等の曲有り。今其の声猶お存する者有り」(梅花落、本笛中曲也。按唐大角曲亦有大單于小單于大梅花小梅花等曲。今其聲猶有存者)とある。また江総の「梅花落三首 其の三」に「長安の少年多くは軽薄、両両常に唱う梅花落」(長安少年多輕薄、兩兩常唱梅花落)とある。ウィキソース「樂府詩集/024卷」参照。
- 無因見 … 見るすべもない。
- 無因 … ~するすべもない。
胡人吹入笛聲來
胡人吹いて笛声に入れ来る
- 胡人 … えびすの人たち。北地に住む匈奴・モンゴル人・ウイグル人などの総称。
- 吹入笛声来 … 梅の花の散る風情を、「梅花落」の笛の音にこめて吹き鳴らしている。来は、「吹入」の下に添えられた助字。
勞勞亭上春應度
労労亭上 春応に度るべし
- 労労亭 … 今の江蘇省南京市の西南にあった亭。旅立つ人を送別する場所であった。『大明一統志』に「労労亭は、府治の西南に在り。呉の時建つ。一に臨滄観と名づく」(勞勞亭、在府治西南。呉時建。一名臨滄觀)とある。ウィキソース「明一統志 (四庫全書本)/卷06」参照。また李白の「労労亭」と題する詩に「天下心を傷ましむる処、労労客を送る亭、春風別れの苦なるを知り、柳条をして青からしめず」(天下傷心處、勞勞送客亭、春風知別苦、不遣柳條靑)とある。ウィキソース「勞勞亭」参照。
- 上 … ほとり。辺り。
- 春応度 … もう春が訪れていることだろう。
- 応 … 「まさに~すべし」と読み、「きっと~であろう」と訳す。再読文字。強い推量の意を示す。
- 度 … 過ぎていくこと。経過すること。
夜夜城南戰未回
夜夜 城南 戦い未だ回らず
- 夜夜 … 夜ごと。毎夜。また、「労労亭」との対句の関係から「夜夜城」を地名とする説もある。
- 城南戦 … 楽府題の「戦城南」をもじって用いたもの。ウィキソース「樂府詩集/016卷」参照。
- 城南 … 城壁の南。
- 戦未回 … 戦闘が続いて、まだ故郷へは帰れない。
- 回 … 『唐詩選』『万首唐人絶句』『唐詩品彙拾遺』では「囘」に作る。異体字。『全唐詩』では「迴」、『四部叢刊本』では「廻」に作る。ともに同義。
こちらもオススメ!
歴代詩選 | |
古代 | 前漢 |
後漢 | 魏 |
晋 | 南北朝 |
初唐 | 盛唐 |
中唐 | 晩唐 |
北宋 | 南宋 |
金 | 元 |
明 | 清 |
唐詩選 | |
巻一 五言古詩 | 巻二 七言古詩 |
巻三 五言律詩 | 巻四 五言排律 |
巻五 七言律詩 | 巻六 五言絶句 |
巻七 七言絶句 |
詩人別 | ||
あ行 | か行 | さ行 |
た行 | は行 | ま行 |
や行 | ら行 |