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塞下曲(釈皎然)

塞下曲
塞(さい)下(か)の曲(きょく)
釈(しゃく)皎然(こうねん)
  • 七言絶句。梅・來・囘(上平声灰韻)。
  • ウィキソース「全唐詩/卷820」「樂府詩集/093卷」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』『四部叢刊本』『万首唐人絶句』『楽府詩集』『唐詩品彙拾遺』では「塞下曲二首其一」に作る。
  • 塞下曲 … 新楽府題の一つ。塞下は、辺境の塞(とりで)のあたりの意。『楽府詩集』巻九十二・新楽府辞・楽府雑題に収める楽曲の名。辺塞での戦闘や兵士の望郷の思いを詠う。古楽府の「出塞」「入塞」に似たもの。
  • この詩は、辺塞に出征した兵士の労苦を詠んだもの。
  • 釈皎然 … 730~799。盛唐の詩僧。湖州長城(今の浙江省長興県)の人。字(あざな)は清昼。俗姓は謝。謝霊運の子孫と伝えられる。出家して郷里の杼山(ちょざん)で修行し、妙喜寺に住んだ。顔真卿や韋応物らと親交があった。のちに廬山の西林寺に住んだ。『皎然集』十巻がある。ウィキペディア【釈皎然】参照。
寒塞無因見落梅
寒塞(かんさい) 落梅(らくばい)を見(み)るに因(よし)無(な)し
  • 寒塞 … 寒さ厳しい辺塞の地。
  • 落梅 … 梅の花の散り落ちること。散り落ちた梅の花と、「梅花落」という笛の曲名をかけている。『楽府詩集』に「梅花落は、本と笛中の曲なり。按ずるに、唐の大角の曲にも亦た大単于・小単于・大梅花・小梅花等の曲有り。今其の声猶お存する者有り」(梅花落、本笛中曲也。按唐大角曲亦有大單于小單于大梅花小梅花等曲。今其聲猶有存者)とある。また、南朝陳の江総の楽府「梅花落三首其の三」に「長安の少年多くは軽薄、両両常に唱う梅花落」(長安少年多輕薄、兩兩常唱梅花落)とある。ウィキソース「樂府詩集/024卷」参照。
  • 無因見 … 見るすべもない。
  • 無因 … ~するすべもない。
胡人吹入笛聲來
胡(こ)人(じん)吹(ふ)いて笛声(てきせい)に入(い)れ来(きた)る
  • 胡人 … えびすの人たち。北地に住む匈奴・モンゴル人・ウイグル人などの総称。
  • 吹入笛声来 … 梅の花の散る風情を、「梅花落」の笛の音にこめて吹き鳴らしている。来は、「吹入」の下に添えられた助字。
勞勞亭上春應度
労労亭(ろうろうてい)上(じょう) 春(はる)応(まさ)に度(わた)るべし
  • 労労亭 … 今の江蘇省南京市の西南にあった亭。旅立つ人を送別する場所であった。『大明一統志』に「労労亭は、府治の西南に在り。呉の時建つ。一に臨滄観と名づく」(勞勞亭、在府治西南。呉時建。一名臨滄觀)とある。ウィキソース「明一統志 (四庫全書本)/卷06」参照。また盛唐の李白「労労亭」詩に「天下心を傷ましむる処、労労客を送る亭、春風別れの苦なるを知り、柳条をして青からしめず」(天下傷心處、勞勞送客亭、春風知別苦、不遣柳條靑)とある。ウィキソース「勞勞亭」参照。
  • 上 … ほとり。辺り。
  • 春応度 … もう春が訪れていることだろう。
  • 応 … 「まさに~すべし」と読み、「きっと~であろう」と訳す。再読文字。強い推量の意を示す。
  • 度 … 過ぎていくこと。経過すること。
夜夜城南戰未回
夜夜(やや) 城(じょう)南(なん) 戦(たたか)い未(いま)だ回(かえ)らず
  • 夜夜 … 夜ごと。毎夜。また、「労労亭」との対句の関係から「夜夜城」を地名とする説もある。
  • 城南戦 … 楽府題の「戦城南」をもじって用いたもの。ウィキソース「樂府詩集/016卷」参照。
  • 城南 … 城壁の南。
  • 戦未回 … 戦闘が続いて、まだ故郷へは帰れない。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻二百九十五(排印本、中華書局、1960年)
  • 『皎然集』巻六(『四部叢刊 初編集部』所収)
  • 『楽府詩集』巻九十三・新楽府辞(北京図書館蔵宋刊本影印、中津濱渉『樂府詩集の研究』所収)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻三十九(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙拾遺』巻四([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
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