見渭水思秦川(岑参)
見渭水思秦川
渭水を見て秦川を思う
渭水を見て秦川を思う
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻六、『全唐詩』巻二百一、『岑嘉州詩』巻六(『四部叢刊 初編集部』所収)、『岑嘉州集』巻下(『前唐十二家詩』所収)、『岑嘉州集』巻八(『唐五十家詩集』所収)、『岑嘉州詩』巻八・寛保元年刊(『和刻本漢詩集成 唐詩5』所収、166頁、略称:寛保刊本)、『唐詩品彙』巻四十、『唐詩別裁集』巻十九、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻二(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『唐人万首絶句選』巻一、他
- 五言絶句。州・流(平声尤韻)。
- ウィキソース「西過渭州見渭水思秦川」参照。
- 詩題 … 『全唐詩』『四部叢刊本』『前唐十二家詩本』『唐五十家詩集本』『寛保刊本』では「西のかた渭州を過ぎ、渭水を見て秦川を思う」(西過渭州見渭水思秦川)に作る。渭州は、今の甘粛省平涼市の辺り。
- 渭水 … 黄河最大の支流。渭河とも。甘粛省隴西県の鳥鼠山に源を発し、長安を過ぎ、最後に黄河に合流する。ウィキペディア【渭水】参照。『書経』禹貢篇に「渭を導き、鳥鼠同穴より、東して灃に会し、又た東して涇に会し、又た東して漆・沮を過ぎ、河に入る」(導渭、自鳥鼠同穴、東會于灃、又東會于涇、又東過漆沮、入于河)とある。ウィキソース「尚書/禹貢」参照。また『山海経』西山経に「又た西二百二十里を、鳥鼠同穴の山と曰う。其の上に白虎・白玉多し。渭水焉より出でて、東流して河に注ぐ」(又西二百二十里、曰鳥鼠同穴之山。其上多白虎白玉。渭水出焉、而東流注于河)とある。ウィキソース「山海經/西山經」参照。
- 秦川 … 長安の地方。
- この詩は、天宝八載(749)、作者が安西へ赴く途中、渭水の上流に差し掛かり、この川が東流して長安へと流れて行くのかと思い、長年住み慣れた自宅のある長安を懐かしんで詠んだもの。
- 岑参 … 715~770。盛唐の詩人。湖北省江陵の人。天宝三載(744)、進士に及第。西域の節度使の幕僚として長く辺境に勤務したのち、右補闕・虢州長史(次官)・嘉州刺史などを歴任した。辺塞詩人として高適とともに「高岑」と並び称される。『岑嘉州集』七巻がある。ウィキペディア【岑参】参照。
渭水東流去
渭水 東に流れ去り
- 東流去 … 東へ東へと流れ去っていく。
何時到雍州
何れの時か雍州に到らん
憑添兩行淚
憑むらくは両行の涙を添えて
- 憑 … 「憑って」と読んでもよい。頼りとする。頼む。
- 両行涙 … 二筋の涙。両眼からあふれる涙。
- 添 … 川の流れに加えること。
寄向故園流
寄せて故園に向って流さん
- 寄 … 言付ける。
- 故園 … ふるさと。長安の自宅を指す。長安は作者の故郷ではないが、ここでは長年住み慣れた地の意。
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