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登鸛鵲楼(王之渙)

登鸛鵲樓
鸛(かん)鵲(じゃく)楼(ろう)に登(のぼ)る
王(おう)之(し)渙(かん)
  • ウィキソース「登鸛雀樓 (王之渙)」参照。
  • この詩は、作者がある日、鸛鵲楼に登り、壮大な風景を眺望しながら詠んだもの。
  • 詩題 … 『全唐詩』巻二百五十三には、題下に「一に朱斌(しゅひん)の詩に作る」(一作朱斌詩)と注する。『全唐詩』巻二百三の朱斌の詩では「登樓」と題し、その題下には「一に王之渙の詩に作る」(一作王之渙詩)と注する。ウィキソース「登樓 (朱斌)」参照。『国秀集』でも朱斌作「登樓」に作る。
  • 鸛鵲楼 … 三城形式の城郭である蒲(ほ)州河中府城(現在の山西省永済市蒲州鎮付近)の、黄河の中洲に築かれた中(ちゅう)潬(たん)城(じょう)の城壁の上に立つ物見の高楼。詳しくは、植木久行氏の論文「唐代の鸛鵲樓位置考―消失・未詳の名どころ研究―」(『中國詩文論叢』第三十五集)参照。なお、鸛鵲楼は、鸛雀楼とも書く。鸛雀(鵲)は、コウノトリ。楼は、楼台。楼閣。ウィキペディア【鸛鵲楼】参照。『大清一統志』巻一百一に引く『旧志』に「楼は旧(も)と郡城の西南、黄河の中の高(こう)阜(ふ)の処に在り。時に鸛鵲有り、其の上に棲む。遂に名づく。後に河流の為に衝没せられ、即ち城の角楼に扁を為して、以て其の蹟を存す」(樓舊在郡城西南、黄河中高阜處。時有鸛鵲、棲其上。遂名。後爲河流衝沒、即城角樓爲扁、以存其蹟)とある。高阜は、高い丘。扁は、扁額。ウィキソース「欽定大清一統志 (四庫全書本)/卷101」参照。
  • 鵲 …底本以外のテキストでは「雀」に作る。
  • 王之渙 … 688~742。盛唐の詩人。幷(へい)州晋陽(しんよう)(山西省太原市)の人。字(あざな)は季(き)陵(りょう)。科挙には及第しなかったが、開元年間の初め、冀(き)州衡水(こうすい)県(河北省衡水(こうすい)市)の主簿という小官に就いた。しかし、人に陥れられたため辞職し、十五年間、家居して過ごした。晩年には文安県(河北省文安県)の尉に就いたが、官舎で没した。現存する詩はわずか六首のみであるが、辺境の風物を詠じた辺塞(へんさい)詩人として当時から有名であった。ウィキペディア【王之渙】参照。
白日依山盡
白日(はくじつ) 山(やま)に依(よ)りて尽(つ)き
  • 白日依山尽 … 白く輝く太陽(夕日)が山に寄り添うように沈んでゆく。この句は、次の句と対句(白と黄、山と海)になっている。
  • 白日 … 「輝く真昼の太陽」と「輝く太陽(夕日)」との二説がある。ここでは、後者を採った。『楚辞』九章・思美人に「開(かい)春(しゅん)発歳(はっさい)、白日出(い)でて之れ悠悠たり」(開春發歳兮、白日出之悠悠)とある。開春は、春の初め。発歳は、年の初め。ウィキソース「楚辭/九章」参照。
  • 依山尽 … 「(輝く真昼の太陽の光が)山なみにもたれるように尽ききわまっている」と「(輝く夕日が)山に寄り添うように沈んでゆく」との二説がある。ここでは、後者を採った。南朝梁の朱超「雨に対す」詩(『古詩紀』巻一百三)に「落照 山に依りて尽き、浮(ふ)涼(りょう) 雨を帯びて来(きた)る」(落照依山盡、浮涼帶雨來)とある。浮涼は、漂ってくる涼しさ。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷103」参照。
黄河入海流
黄(こう)河(が) 海(うみ)に入(い)りて流(なが)る
  • 黄河 … 川の名。長江の次に大きい。青海省から甘粛・陝西・山西・河南・山東省へと東に流れ、渤海に注(そそ)ぐ。ウィキペディア【黄河】参照。
  • 入海流 … はるかな海に流れ注(そそ)いでゆく。「流れ海に入る」と読み替えたほうが理解しやすい。実際には、鸛鵲楼から黄河の流れが海に注(そそ)ぎ込むところは見えない。ここでは、黄河の流れの力強さを誇張したものであろう。
  • 入 … 『文苑英華』には「一作徹」と注する。『万首唐人絶句』では「徹」に作る。
欲窮千里目
千(せん)里(り)の目(め)を窮(きわ)めんと欲(ほっ)し
  • 欲窮千里目 … 千里先のはるか彼方までも見渡す眺(なが)めを、この目で見極めようと思う。窮むとは、見極めること。眺め尽くすこと。欲すとは、望むこと。願うこと。この句は、次の句と対句(千と一)になっている。
  • 千里目 … 千里先のはるか彼方まで見通せる眺望。千里は、実際の距離ではなく、はるか彼方の意。目は、眺(なが)め。眺望。劉宋の鮑照の詩「都に還る道中三首」(『古詩紀』巻六十一)の第二首に「夕べに江上の波を聴き、遠く千里の目を極めんとす」(夕聽江上波、遠極千里目)とある。江上の波とは、長江の波の音のこと。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷061」参照。
更上一層樓
更(さら)に上(のぼ)る 一層(いっそう)の楼(ろう)
  • 更上一層楼 … もう一階上の楼に登る。更に上るとは、さらに上に登ること。一層は、一階。鸛鵲楼は三層楼であったので、二階から最上階の三階へと登ること。北周の庾信「遊山(ゆうざん)」詩(『古詩紀』巻一百二十五)に「聊(いささ)か玄(げん)圃(ぽ)殿(でん)に登り、更に増城山に上る」(聊登玄圃殿、更上増城山)とある。玄圃殿は、崑崙(こんろん)山の頂(いただき)にあり、仙人が住むという所。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷125」参照。
  • 層 …『全唐詩』巻二百三の朱斌「登樓」、『国秀集』の朱斌「登樓」では「重」に作る。
詩型・韻字
  • 五言絶句。
  • 流・樓(下平声尤韻)。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻六(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻二百五十三(排印本、中華書局、1960年)※詩題:登鸛雀樓
  • 『全唐詩』巻二百三(排印本、中華書局、1960年)※詩題:登樓、作者:朱斌
  • 『唐詩三百首注疏』巻六上・五言絶句(廣文書局、1980年)※詩題:登鸛雀樓
  • 『文苑英華』巻三百十二(影印本、中華書局、1966年)※詩題:登鸛雀樓
  • 『万首唐人絶句』五言・巻十五(明嘉靖本影印、文学古籍刊行社、1955年)※詩題:登鸛雀樓
  • 『唐詩解』巻二十二(順治十六年刊、内閣文庫蔵)※詩題:登鸛雀樓
  • 『唐詩品彙』巻四十([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)※詩題:登鸛雀樓
  • 『唐詩別裁集』巻十九([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)※詩題:登鸛雀樓
  • 『古今詩刪』巻二十(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)※詩題:登鸛雀樓
  • 『国秀集』巻下(傅璇琮編撰『唐人選唐詩新編』、陝西人民教育出版社、1996年)※詩題:登樓、作者:朱斌
  • 松浦友久編『校注 唐詩解釈辞典』(大修館書店、1987年)
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