>   漢詩   >   唐詩選   >   巻三 五律   >   望秦川(李頎)

望秦川(李頎)

望秦川
秦川しんせんのぞ
李頎りき
  • 五言律詩。峯・重・松・濃(上平声冬韻)。
  • 秦川 … 長安一帯の平野の総称。西晋の潘岳「西征の賦」(『文選』巻十)に「樊川はんせんおおいにして以て池にそそぐ」(倬樊川以激池)とあり、その李善注に「三秦記に曰く、長安の正南せいなん秦嶺、嶺の根に水流れて秦川と為す。一に樊川と名づく、と」(三秦記曰、長安正南秦嶺、嶺根水流爲秦川。一名樊川)とある。正南は、ま南。ウィキソース「昭明文選/卷10」参照。また『蜀志』諸葛亮伝に「将軍はみずから益州の衆を率い、秦川を出づ」(將軍身率益州之眾、出於秦川)とある。ウィキソース「三國志/卷35」参照。また劉宋の謝霊運「魏の太子の鄴中集ぎょうちゅうしゅうの詩に擬す」(八首其二・王粲、『文選』巻三十)に「家はもと秦川にして、貴公の子孫なり」(家本秦川、貴公子孫)とある。ウィキソース「擬魏太子鄴中集詩八首」参照。
  • 李頎 … 690~751?。盛唐の詩人。本籍は趙州ちょうしゅう(河北省趙県)の人。開元二十三年(735)、進士に及第。新郷(河南省)の尉となったが、官を辞し、神仙を慕って隠棲生活を送ったという。ウィキペディア【李頎】参照。
秦川朝望迥
秦川しんせん あしたのぞめばはるかなり
日出正東峯
づ 正東せいとうみね
  • 正東 … 真東まひがし
遠近山河淨
遠近えんきん さんきよ
  • 山河浄 … 山と川が澄みわたっている様子。
逶迤城闕重
逶迤いいとしてじょうけつかさなる
  • 逶迤 … うねうねと曲がって長く続くさま。
  • 城闕 … 城門。転じて宮殿。
秋聲萬戸竹
しゅうせい 万戸ばんこたけ
  • 万戸 … 長安の家々を指す。
寒色五陵松
寒色かんしょく りょうまつ
  • 寒色 … 冬げしき。
  • 五陵 … 漢の高祖以下五帝の陵墓。長安の北郊にあった。
客有歸歟歎
かくかえらんかのなげ
  • 客 … 旅人。ここでは作者自身を指す。
  • 歟 … 「か」と読む。多くは「與」(与)で代用する。もとは『論語』公冶長21に基づくが、ここでは魏の王粲「登楼の賦」(『文選』巻十一)の「むかし尼父じほちんりしに、かえらんかの歎音たんいんり」(昔尼父之在陳兮、有歸歟之歎音)を踏まえる。ウィキソース「登樓賦」参照。
悽其霜露濃
せいとして霜露そうろこまやかなり
  • 悽其 … 寒風の形容。其は助辞。『詩経』邶風はいふう・緑衣の詩に「げきや、せいとしてもっかぜふく」(絺兮綌兮、淒其以風)とあるのに基づく。ウィキソース「詩經/綠衣」参照。
  • 霜露 … 霜と露。
歴代詩選
古代 前漢
後漢
南北朝
初唐 盛唐
中唐 晩唐
北宋 南宋
唐詩選
巻一 五言古詩 巻二 七言古詩
巻三 五言律詩 巻四 五言排律
巻五 七言律詩 巻六 五言絶句
巻七 七言絶句
詩人別
あ行 か行 さ行
た行 は行 ま行
や行 ら行