寄綦毋三(李頎)
寄綦毋三
綦毋三に寄す
綦毋三に寄す
新加大邑綬仍黄
新たに大邑を加えられて綬は仍お黄なり
- 新加大邑 … 新たに大きな県の職務を兼任した。「大邑」は大きな町。ここでは洛陽を指す。
- 綬 … 官職を示す印を腰に下げる組みひも。地位によって色が違った。
- 仍 … やはり。
- 黄 … 県尉は下級職で黄色であった。
近與單車向洛陽
近ごろ単車と与に洛陽に向う
- 単車 … 一台の車。地位が低く、清廉な官吏であったことを示している。
- 向 … 『全唐詩』では「去」に作る。
顧眄一過丞相府
顧眄一たび過る 丞相の府
- 顧眄 … ふりかえってみる。「顧」はかえりみる。「眄」は流し目でみること。
- 丞相府 … 宰相の役所。
風流三接令公香
風流三たび接す 令公の香
- 風流 … ここでは名誉・光栄の意。世俗的なことを超越しているという意味ではない。
- 令公香 … 魏の中書令となった荀彧がいつもよい香を焚きしめ、その坐ったあとに三日間残り香が漂ったので、人々はそれを令公香と呼んだという故事に基づく。唐の中書令は宰相であるから、ここでは宰相の意に用いる。荀彧については、ウィキペディア【荀イク】参照。
南川粳稻花侵縣
南川の粳稲 花 県を侵し
- 南川 … 南の川べり。
- 粳稲 … うるち米の稲。
- 花侵県 … 稲の花が県城の中まで入り込んで咲き乱れている。
西嶺雲霞色滿堂
西嶺の雲霞 色 堂に満つ
- 西嶺 … 西の山々。
- 雲霞 … 雲とかすみ。
- 色満堂 … (雲とかすみの)めでたい色が役所の中に満ちわたっている。綦毋潜の善政をたとえている。
共道進賢蒙上賞
共に道う 賢を進むれば上賞を蒙ると
- 共道 … 世間ではみんな言っている。
- 進賢蒙上賞 … 賢者を推薦すれば、格別の恩賞にあずかる。「上賞」は特に厚い恩賞。この一句は『史記』蕭相国世家に、漢の高祖の言葉として「吾聞く、賢を進むれば上賞を受く(吾聞進賢受上賞)」に基づく。原文はウィキソース『史記』蕭相国世家参照。
看君幾歳作臺郎
君が幾歳か台郎と作るを看ん
- 幾歳 … 何年かのちに
- 台郎 … 尚書省の郎中・員外郎をさして呼ぶ言葉。
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