寄盧司勲員外(李頎)
寄盧司勲員外
盧司勲員外に寄す
盧司勲員外に寄す
- 七言律詩。陽・章・郎・香・楊(平声陽韻)。
- 詩題 … 『全唐詩』では「寄司勳盧員外」に作る。
- 盧 … 盧某。司勲員外郎の職にあった人物。盧象という人物のことかと考えられているが、真偽のほどは不明。
- 司勲員外 … 官名。司勲員外郎。官吏の勲等をつかさどる。員外郎は郎中の補佐役で、本来は定員外の官という意。
- 李頎 … 690~751?。盛唐の詩人。本籍は趙州(河北省趙県)の人。開元二十三年(735)、進士に及第。新郷(河南省)の尉となったが、官を辞し、神仙を慕って隠棲生活を送ったという。ウィキペディア【李頎】参照。
流澌臘月下河陽
流澌 臘月 河陽に下る
- 流澌 … 解けて流れる氷。
- 臘月 … 陰暦十二月。
- 河陽 … 黄河の北側。
草色新年發建章
草色 新年 建章に発せん
- 草色 … 若草の色。
- 建章 … 漢代の宮殿の名。ここでは長安の宮殿を指す。
秦地立春傳太史
秦地の立春 太史より伝え
- 秦地 … 戦国時代の秦の国。すなわち長安のある地方をいう。
- 太史 … 国家の記録および天文や暦をつかさどる官。
漢宮題柱憶仙郎
漢宮の題柱 仙郎を憶う
- 漢宮 … 漢の宮殿。
- 題柱 … 柱に詩や文を書きしるすこと。後漢の田鳳という人が尚書郎になったとき、容姿がはなはだ端正であったため、霊帝が感心して、賞讃の言葉を宮殿の柱に書きつけたという故事をふまえ、それに盧員外を比したもの。
- 仙郎 … 尚書省の郎中・員外郎の雅称。盧員外を指す。
歸鴻欲度千門雪
帰鴻度らんと欲す 千門の雪
- 帰鴻 … 北へ帰る雁。「鴻」は鴻雁。
- 千門 … 宮殿のたくさんの門。
侍女新添五夜香
侍女新たに添う 五夜の香
- 五夜香 … 「五夜」は日暮れから夜明けまでの時間。当時は夜間の時刻を五つに区分したので五夜といった。「五夜香」はその間を通して炊き続ける香。
早晩薦雄文似者
早晩か雄が文似たる者を薦めん
- 早晩 … 「いつになったら」という意の疑問詞。
- 薦雄文似者 … 「雄文」は楊雄の文章。『漢書』楊雄伝に「孝成帝の時、客に雄が文の相如に似たるを薦むる者有り」(孝成帝時、客有薦雄文似相如者)とみえる故事をふまえている。楊雄についてはウィキペディア【楊雄】参照。
故人今已賦長楊
故人は今已に長楊を賦したり
- 故人 … 旧友。盧員外を指す。作者は、盧員外がいずれその文才を推薦されて、出世するであろうと期待している。ただし、「故人」を作者自身とし、盧員外が作者を推薦してくれることを望んでいるとする解釈もある。
- 長楊 … 楊雄の「長楊の賦」のこと。それに匹敵する立派な作品を書いていること。
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