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宿竜興寺(綦毋潜)

宿龍興寺
竜興寺りゅうこうじ宿やど
綦毋きぶせん
  • 五言律詩。扉・衣・微・飛(上平声微韻)。
  • 竜興寺 … 湖北省房県にある寺。
  • 綦毋潜 … 692~749年?。盛唐の詩人。荊南(湖北省)の人。字は孝通こうつう。ウィキペディア【キ毋潜】参照。
香刹夜忘歸
香刹こうせつ よる かえるをわす
  • 香刹 … 寺のこと。
松清古殿扉
まつきよし 殿でんとびら
  • 清 … 『全唐詩』では「青」に作る。
  • 古殿 … 古いお堂。
燈明方丈室
ともしびあきらかなり ほうじょうしつ
  • 方丈 … 禅室。庵室。
珠繫比丘衣
たまく 比丘びくころも
  • 珠 … 数珠。
  • 繋 … かける。
  • 比丘 … 僧。
白日傳心淨
白日はくじつ 伝心でんしんきよ
  • 白日 … 仏心の明らかなことのたとえ。
  • 日 … 『全唐詩』には「一作月」と注する。
  • 浄 … 『全唐詩』では「靜」に作る。
青蓮喩法微
しょうれん ほうなり
  • 青蓮 … 青色の蓮の花。『妙法蓮華経』薬王菩薩本事品第二十三に「是の人現世に口の中より常に青蓮華の香を出だす」(是人現世口中常出青蓮華香)とある。ウィキソース「妙法蓮華經/23」参照。
  • 喩法 … 仏法を比喩によって説き明かすこと。
  • 微 … 微妙なこと。
天花落不盡
てん ちてきず
  • 天花 … 天から降ってくる天上の花。釈尊が教えを説き終わると、天から曼陀羅華や曼殊沙華などの天花が降り注いだという。『妙法蓮華経』序品第一に「の時に世尊、しゅにょうせられ、供養、ぎょうそんじゅう讃歎さんだんせられて、諸〻もろもろの菩薩の為に大乗経の、無量義、教菩薩法、仏所護念と名づくるを説きたまう。仏、此の経を説きおわって、結跏趺坐し、無量義処三昧さんまいって、身心しんじん動じたまわず。是の時に天より曼陀羅華、摩訶曼陀羅華、曼殊沙華、摩訶曼殊沙華をらして、仏のみうえ、及び諸〻の大衆だいしゅに散じ、ふつ世界、六種に震動す」(爾時世尊、四眾圍繞、供養、恭敬、尊重、讚歎、爲諸菩薩說大乘經、名無量義、教菩薩法、佛所護念。佛說此經已、結跏趺坐、入於無量義處三昧、身心不動。是時天雨曼陀羅華、摩訶曼陀羅華、曼殊沙華、摩訶曼殊沙華、而散佛上、及諸大眾、普佛世界、六種震動)とある。ウィキソース「妙法蓮華經/01」参照。また、維摩居士が方丈の室で説法をすると、天女が天花を降り散らしたという。『維摩経』観衆生品第七に「時に維摩詰のしつに一天女有り、諸〻もろもろの天人を見、説法する所を聞き、便ち其の身を現じて、即ち天華を以て諸〻の菩薩と大弟子との上に散ず」(時維摩詰室有一天女、見諸天人聞所説法、便現其身、即以天華散諸菩薩大弟子上)とある。ウィキソース「維摩詰所說經/07」参照。
處處鳥銜飛
処処しょしょ とりふくんで
  • 処処 … あちこち。
  • 銜 … 口にくわえること。『景徳伝灯録』巻四、金陵牛頭山法融禅師に「遂に茅山に隠れ、師に投じて落髪し、後牛頭山に入り、寺の北巌の石室に幽棲す。百鳥華を銜むの異有り」(遂隱茅山投師落髮。後入牛頭山幽棲寺北巖之石室。有百鳥銜華之異)とある。
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