孟母断機
孟母断機
- 出典:『列女伝』母儀・鄒孟軻母(ウィキソース「列女傳/卷1」参照)
- 解釈:孟子の母が、学業を途中で帰って来た孟子に、学業を途中でやめることはこれと同じだと、機で織りかけていた糸を断ち切って戒めたという故事。「断機の戒め」とも。
- 列女伝 … 八巻。前漢末の劉向撰。古代の女性を七種類に分け、伝記や逸話などを集めたもの。ウィキペディア【列女伝】参照。
孟子之少也、既學而歸、孟母方織。
孟子の少きとき、既に学びて帰るに、孟母方に織る。
- 孟子 … 前372?~前289。戦国時代の儒教の思想家。魯の鄒(今の山東省鄒城市)の人。名は軻、字は子輿。亜聖ともいわれる。性善説を主張した。ウィキペディア【孟子】参照。
- 少 … 若い。
- 既 … (勉強に)区切りをつけて。
- 方 … 「まさに」と読み、「ちょうどそのとき」と訳す。
- 織 … 機を織る。
問曰、學何所至矣。
問いて曰く、学何れに至る所ぞ、と。
- 学何所至 … 学問はどこまで進んだか。
- 何 … 「いずれに~ぞ」と読み、「どこまで~か」と訳す。
孟子曰、自若也。
孟子曰く、自若たり、と。
- 自若 … もとのまま。少しの変化もないこと。
孟母以刀斷其織。
孟母刀を以て其の織を断つ。
- 織 … 織っていた布。
- 断 … 断ち切る。
孟子懼而問其故。
孟子懼れて其の故を問う。
- 懼 … 驚き恐れる。
- 故 … 理由。
孟母曰、子之廢學、若吾斷斯織也。
孟母曰く、子の学を廃するは、吾の斯の織を断つが若きなり。
- 子 … あなた。成人した男子に対する敬称。
- 廃 … やめる。
- 断 … 断ち切る。
- 若 … 「~のごとし」と読み、「~のようだ」と訳す。比況を表す。
夫君子學以立名、問則廣知。
夫れ君子は学びて以て名を立て、問いて則ち知を広む。
- 夫 … 「それ」と読み、「そもそも」と訳す。文頭におかれる。
- 君子 … 人の上に立つ者。
- 立名 … 名をあげる。評判になる。
- 問 … (人に)問いかける。尋ねる。
- 広知 … 知識を広める。見識を広める。
是以居則安寧、動則遠害。
是を以て居らば則ち安寧、動かば則ち害に遠ざかる。
- 是以 … 「ここをもって」と読み、「それだから」「こういうわけで」「このゆえに」「それゆえに」と訳す。「以是」は「これをもって」と読み、「この点から」「これにより」「これを用いて」と訳す。
- 居 … 仕官しておらず、家にいること。
- 安寧 … 心安らかなこと。
- 動 … 仕官して活躍すること。
- 害 … 災い。災難。障害。
今而廢之、是不免於廝役、而無以離於禍患也。
今にして之を廃するは、是れ廝役より免れずして、以て禍患より離るる無きなり。
- 之 … 学問を指す。
- 廝役 … 雑役。召使として雑用をさせられること。
- 禍患 … 災難。
何以異於織績而食、中道廢而不爲。
何を以て織績して食するに、中道にして廃して為さざるに異ならんや。
- 何以異 … どうして違いがありましょうか(いや、違いはない)。
- 何以 … 「なにをもって(か)~ん(や)」と読み、「どうして~(する)のか、いや~(し)ない」と訳す。反語形。
- 織績 … 織り績ぐ。織物を織る。
- 食 … 生計を立てる。
- 中道 … 途中。
- 廃 … やめる。
寧能衣其夫・子、而長不乏糧食哉。
寧くんぞ能く其の夫・子に衣せて、長く糧食に乏しからざらしめんや。
- 寧 … 「いずくんぞ~ん(や)」と読み、「どうやって~するのか、いや~できない」と訳す。反語形。
- 其夫・子 … 自分の夫や子ども。
- 衣 … 衣服を着せる。動詞。
- 糧食 … 食べ物。
- 乏 … 欠乏する。ひもじい思いをする。
女則廢其所食、男則墮於脩德、不爲竊盗、則爲虜役矣。
女則ち其の食する所を廃し、男則ち徳を脩むるを堕らば、窃盗を為さずんば、則ち虜役と為らん、と。
- 其所食 … 食べていくための仕事。
- 脩徳 … 学んで徳を身につける。学問をして人格を養う。
- 堕 … 怠る。なまける。
- 虜役 … 召使。使用人。
孟子懼、旦夕勤學不息。
孟子懼れ、旦夕学に勤めて息まず。
- 懼 … 驚き恐れる。
- 旦夕 … 朝となく夕となく。終日。
- 息 … 休む。
師事子思、遂成天下之名儒。
子思に師事し、遂に天下の名儒と成れり。
- 子思 … 春秋時代、魯の学者。姓は孔、名は伋。孔子の孫で、鯉の子。子思は字。曾子に学んだ。ウィキペディア【子思】参照。
- 名儒 … すぐれた儒学者。
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