知音
知音
- 出典:『呂氏春秋』本味(ウィキソース「呂氏春秋/十四」参照)、『列子』湯問、『蒙求』伯牙絶絃
- 解釈:よく理解しあった親友。伯牙の弾く琴の音を聴いて、親友の鍾子期が伯牙の心境をよく理解したことから。
- 呂氏春秋 … 二十六巻。秦の呂不韋(?~前235)の編。先秦の諸家の学説や説話などを集めた一種の百科全書。ウィキペディア【呂氏春秋】参照。
〔呂氏春秋、本味〕
伯牙鼓琴、鍾子期聽之。
伯牙鼓琴、鍾子期聽之。
伯牙琴を鼓し、鍾子期之を聴く。
方鼓琴、而志在太山。
琴を鼓するに方たりては、志太山に在り。
- 方 … 「~にあたりて」と読み、「~するときに」と訳す。
- 志 … ここでは「心」「心が向かうところ」の意。
- 太山 … 山東省泰安市にある名山。五岳(東岳泰山・南岳衡山・中岳嵩山・西岳華山・北岳恒山)の一つ。古来、天子が即位のとき、封禅の儀式が行われてきた。泰山とも。ウィキペディア【泰山】参照。
鍾子期曰、善哉乎、鼓琴。
鍾子期曰く、善きかな、琴を鼓すること。
- 善哉乎 … 素晴らしいなあ。
- 哉乎 … 二字で「かな」と読み、「~だなあ」と訳す。感嘆の意を示す。
巍巍乎若太山。
巍巍乎として太山の若し、と。
- 巍巍乎 … 山が高く険しいさま。「乎」は語調を整えるための助字。
- 若 … 「~のごとし」と読み、「~のようだ」と訳す。比況を表す。
少選之間、而志在流水。
少選の間にして、志流水に在り。
- 少選之間 … しばらくの間。
鍾子期又曰、善哉乎、鼓琴。
鍾子期又曰く、善きかな、琴を鼓すること。
湯湯乎若流水。
湯湯乎として流水の若し、と。
- 湯湯乎 … 水が勢いよく流れるさま。「乎」は語調をととのえるための助字。
鍾子期死。
鍾子期死す。
伯牙破琴絶弦、終身不復鼓琴。
伯牙琴を破り絃を絶ち、終身復た琴を鼓せず。
- 破琴絶弦 … 琴を壊して弦を断ち切る。
- 終身 … 一生涯。死ぬまで。
- 不復 … 「また~ず」と読み、「二度とは~ない」と訳す。部分否定。ちなみに、「復不」は「また~ず」と読み、「今度もまた~しない」と訳す。全部否定。
以爲世無足復爲鼓琴者。
以為えらく、世に復た為に琴を鼓するに足る者無し、と。
- 以為 … 「おもえらく~と」と読み、「思うことには」「~と思う」と訳す。
- 世 … 世の中に。
- 為 … その人のために。
- 足 … ~するにふさわしい。~するに値する。
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