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管鮑の交わり

管鮑かんぽうまじわり
  • 出典:『十八史略』春秋戦国・斉、『史記』管晏列伝
  • 解釈:お互いを理解し合った、きわめて親密な交際。「管鮑」とはかんちゅうほうしゅくほうしゅくとも)のこと。二人は春秋時代のせいの人で、若い頃からお互いによく理解し合った親友であった。管仲は魯に亡命したきゅうに仕え、鮑叔はきょに亡命したしょうはくに仕えていた。やがて子糾と小白は斉の君主の座を争い、小白が勝利し桓公かんこうとなった。子糾は亡命先の魯で殺され、管仲も捕らえられた。鮑叔は管仲を重用するよう桓公に進言した。管仲は許され桓公に仕え、政治的手腕を発揮し、そのおかげで桓公は諸侯の覇者となった。
  • 十八史略 … 7巻。元のそうせん撰。『史記』から『新五代史』までの十七の正史に、宋代の史書を加えて十八史とし、その概要を編年体でまとめたもの。史料的価値はほとんどないが、我が国では初学者のための入門書として広く読まれており、特に江戸時代には『論語』『唐詩選』とともに、初学者の必読書とされた。ウィキペディア【十八史略】参照。
〔十八史略、春秋戦国、斉〕
兄襄公無道。
あにじょうこうどうなり。
  • 兄 … 桓公の兄。
  • 襄公 … 春秋時代、斉の君主。在位前697~前686。姓はきょう、名は諸児。桓公の兄。ウィキペディア【襄公 (斉)】参照。
  • 無道 … 道徳にはずれた悪い行ない。
羣弟恐禍及。
群弟ぐんていわざわいおよばんことをおそる。
  • 群弟 … 弟たち。
子糾奔魯。
きゅうはしる。
  • 子糾 … 襄公の弟。小白(のちに斉の君主桓公)の庶兄しょけい(妾の子で兄)。
  • 魯 … 山東省の曲阜を都とする小国。周公旦の子、はくきんが成王によって封ぜられた。孔子の祖国。ウィキペディア【】参照。
  • 奔 … 亡命する。
管仲傅之。
かんちゅうこれたり。
  • 管仲 … ?~前645。せいの宰相。管は姓。名は夷吾いご、仲はあざな。『管子』の著者。ウィキペディア【管仲】参照。
  • 之 … 子糾を指す。
  • 傅 … 守り役としてそばに付き添う。補佐役として従う。
小白奔莒。
しょうはくきょはしる。
  • 小白 … のちに斉の君主となる桓公の名。在位前685~前643。ウィキペディア【桓公 (斉)】参照。
  • 莒 … 今の山東省莒県。当時は斉の南にあった小国。ウィキペディア【キョ県】参照。
鮑叔傅之。
ほうしゅくこれたり。
  • 鮑叔 … 春秋時代、斉の大夫。名は牙。管仲の親友。鮑叔牙とも。ウィキペディア【鮑叔】参照。
  • 之 … 小白を指す。
襄公爲弟無知所弑、無知亦爲人所殺。
じょうこうおとうと無知むちしいするところり、無知むちひところところる。
  • 無知 … 襄公の弟。正しくは襄公の叔父の子。襄公を殺して斉の君主となった。在位前685。ウィキペディア【公孫無知】参照。
  • 弑 … 臣下が主君を、または子が親を殺すこと。
  • 「為~所…」 … 「~の…(する)ところとなる」と読み、「~に…される」と訳す。受身の意を示す。
  • 亦 … 「(も)また~」と読み、「~もまた」「~も同様に」と訳す。
齊人召小白於莒。
斉人せいひとしょうはくきょよりまねく。
  • 斉人 … 斉の国の人。国の下に「人」がつく場合は「じん」とは読まず、「ひと」と読む慣習がある。
  • 於 … 置き字。読まないが、「於」の下にある場所を表す語に「より」と送りがなをつける。
而魯亦發兵送糾。
しかしてへいはっしてきゅうおくる。
  • 而 … 「しかして」「しこうして」と読み、「そこで」と訳す。順接の接続詞。
  • 発兵 … 軍隊を繰り出す。
  • 送糾 … 子糾を(斉の君主にしようと)送り込んだ。
管仲嘗遮莒道、射小白中帶鉤。
かんちゅうかつきょみちさえぎり、しょうはく帯鉤たいこうつ。
  • 嘗 … 「かつて」と読み、「以前~したことがある」「以前~していた」と訳す。
  • 遮 … ここでは、待ち伏せする。
  • 帯鉤 … 帯の留め金。
  • 中 … 「あつ」と読み、「(矢を)当てる」「命中させる」と訳す。
小白先至齊而立。
しょうはくせいいたりてつ。
  • 立 … 君主となる。
鮑叔牙薦管仲爲政。
ほうしゅくかんちゅうすすめてまつりごとさしむ。
  • 薦 … 推薦する。
  • 為政 … 政治を行わせた。
公置怨而用之。
こううらみをきてこれもちう。
  • 置 … 捨てる。問題にしない。
  • 之 … 管仲を指す。
  • 用 … 重用する。
管仲字夷吾。
かんちゅうあざな夷吾いご
  • 字 … 男子が元服してから、本名のほかにつける名。本名はいみなという。ウィキペディア【】参照。
嘗與鮑叔賈。
かつほうしゅくす。
  • 与(與)~ … 「~と」と読み、「~と一緒に」と訳す。
  • 賈 … 商売をする。
分利多自與。
かつにおおみずかあたう。
  • 分利 … 利益を分配するのに。
  • 多自与 … 自分が多く取った。
鮑叔不以爲貪。
ほうしゅくもったんさず。
  • 以為 … 「もって~となす」と読み、「~と思う」と訳す。「以A為B」のA(ここでは管仲)が省略された形。
  • 貪 … 「たん」と読む。欲張り。強欲。
知仲貧也。
ちゅうひんなるをればなり。
  • 貧 … 貧乏。
嘗謀事窮困。
かつことはかりてきゅうこんす。
  • 謀事窮困 … 事を企てて(失敗し)困ったことがあった。
  • 窮困 … 難儀する。苦しみ困る。
鮑叔不以爲愚。
ほうしゅくもっさず。
  • 不以為愚 … (管仲を)愚か者だと思わなかった。
知時有利不利也。
とき不利ふりるをればなり。
  • 時 … 時勢。
  • 利不利 … よい時と悪い時。運不運。
嘗三戰三走。
かつたびたたかいてたびはしる。
  • 三 … 何回も。幾度も。必ずしも「三回」という意味ではない。
  • 走 … 敗走する。逃げる。
鮑叔不以爲怯。
ほうしゅくもっきょうさず。
  • 怯 … 卑怯者。臆病者。
知仲有老母也。
ちゅうろうるをればなり。
  • 知 … 知っていたからである。
仲曰、生我者父母、知我者鮑子也。
ちゅうわく、われもの父母ふぼわれものほうなり。
  • 鮑子 … 鮑叔をほめていう言い方。「子」は男子の美称。
桓公九合諸侯、一匡天下、皆仲之謀。
桓公かんこう諸侯しょこうきゅうごうし、てんいっきょうせしは、みなちゅうはかりごとなり。
  • 桓公 … 斉の君主。在位前685~前643。名は小白。管仲を宰相に抜擢し、春秋最初の覇者となった。ウィキペディア【桓公 (斉)】参照。
  • 九合 … 糾合。多くの人を寄せ集めること。
  • 一匡 … 乱れた世を正し、天下を統一すること。
一則仲父、二則仲父。
いつにもすなわちゅうにもすなわちゅうという。
  • 仲父 … 桓公が管仲を父のように尊敬し、こう呼んだ。
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ま行 や行 ら行・わ