千里の馬は常に有れども、伯楽は常には有らず
千里の馬は常に有れども、伯楽は常には有らず
- 出典:韓愈「雑説」四(ウィキソース「雜說四首」参照)
- 解釈:一日に千里も走ることのできる名馬は常に存在するが、それを見いだす伯楽は常に存在するとは限らない。いかに才能のある人がいても、それを認めて用いてくれる人が少ないことの喩え。「伯楽」は、名馬を見分ける名人。
- 韓愈 … 768~824。中唐の詩人・文章家。河陽(河南省孟州市)の人。字は退之。昌黎(河北省)の人と自称した。諡は文公。貞元八年(792)、進士に及第。唐宋八大家のひとり。柳宗元とともに古文復興につとめた。『韓昌黎集』四十巻、『外集』十巻がある。ウィキペディア【韓愈】参照。
世有伯樂、然後有千里馬。千里馬常有、而伯樂不常有。故雖有名馬、祇辱於奴隸人之手、駢死於槽櫪之間、不以千里稱也。
世に伯楽有って、然る後に千里の馬有り。千里の馬は常に有れども、伯楽は常には有らず。故に名馬有りと雖も、祇だ奴隷人の手に辱められ、槽櫪の間に駢死して、千里を以て称せられざるなり。
- 伯楽 … 馬のよしあしを見分ける人。名馬を見分ける名人。ここでは名君・賢相にたとえている。「伯楽」がなまって「博労・馬喰」になったといわれている。
- 千里馬 … 一日に千里も走る名馬。ここではすぐれた人物・賢臣にたとえている。
- 不常有 … いつもいるわけではない。ちなみに「常不有」の場合は、「常に有らず」と読み、「いつもいない」という意味になる。
- 祇 … ただ。
- 辱 … 恥ずかしい目にあわされる。
- 奴隷人 … ここでは使役の人。身分の低い役人。
- 駢死 … 首を並べて死ぬ。
- 槽櫪 … 馬の飼い葉おけ。転じて、馬小屋。「櫪」は馬屋の敷き板。
- 不以千里称也 … 一日に千里も走る名馬だと、ほめたたえられない。
馬之千里者、一食或盡粟一石。食馬者、不知其能千里而食也。是馬也、雖有千里之能、食不飽、力不足、才美不外見。且欲與常馬等、不可得。安求其能千里也。
馬の千里なる者は、一食に或いは粟一石を尽くす。馬を食う者は、其の能く千里なるを知りて食わざるなり。是の馬や、千里の能有りと雖も、食飽かざれば、力足らず、才の美外に見れず。且つ常の馬と等しからんと欲するも、得可からず。安くんぞ其の能く千里なるを求めんや。
- 馬之千里者 … 馬の中で一日に千里も走るものは。
- 一食 … 一度の食事。
- 或 … ある時には。
- 粟 … 穀物の総称。
- 一石 … 十斗。唐代の一石は約59リットル。
- 食馬 … 馬を養う。馬を飼育する。
- 食不飽 … 食糧が充分でない。
- 才 … 能力。才能。
- 美 … 立派なこと。
- 且 … その上に。
- 常馬 … 普通の馬。
- 等 … 同じ働きをする。
- 安 … 「安くんぞ」と読み、「どうして~であろうか、決して~でない」と訳す。反語の意を示す。
策之不以其道、食之不能盡其材。鳴之而不能通其意。執策而臨之曰、天下無馬。嗚呼、其眞無馬邪、其眞不知馬也。
之を策つに其の道を以てせず、之を食うに其の材を尽くす能わず。之を鳴けども其の意に通ずる能わず。策を執りて之に臨んで曰く、天下に馬無しと。嗚呼、其れ真に馬無きか、其れ真に馬を知らざるか。
- 策之 … 名馬を鞭で打って働かせる。
- 其道 … ふさわしい扱い方。
- 材 … 才能。能力。「才」に同じ。
- 鳴之 … 鳴いて訴える。
- 不能通其意 … (飼い主が)馬の気持ちを理解することができない。
- 馬 … 千里の馬を指す。
- 嗚呼 … ああ。感動詞。
- 其真無馬邪 … ほんとうに名馬がいないのだろうか。「邪」は「か」と読み、「~であるか」と訳す。
- 其真不知馬也 … ほんとうに名馬を見抜く人がいないのだろうか。
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