矛盾
矛盾
- 出典:『韓非子』難一(ウィキソース「韓非子/難一」参照
- 解釈:つじつまが合わないこと。楚の国に矛と盾を売る男がいて、「この矛はどんな盾でも貫ける。この盾はどんな矛でも通さない」と自慢した。するとある者が「ならば、その矛でその盾を突いたらどうなるか」と問われ、答えられなかったという故事から。
- 韓非子 … 二十巻五十五篇。戦国時代末期の思想家で、厳格な法治主義を唱え、信賞必罰を行うことを主張した韓非(?~前233)の著作を中心に、のちの法家一派の論を加えたもの。法による富国強兵と君主権の確立が説かれている。ウィキペディア【韓非子】参照。
楚人有鬻楯與矛者。
楚人に楯と矛とを鬻ぐ者有り。
- 楚人 … 楚の国の人。国の下に「人」がつく場合は「じん」とは読まず、「ひと」と読む慣習がある。
- 楯 … 「盾」と同じ。敵の攻撃を防ぐ道具。
- 与 … 「と」と読み、「~と」と訳す。「A与B」の場合は、「AとB与」と読む。「與」は「与」の旧字体。
- 矛 … 両刃の剣に長い柄をつけた、やりのような武器。
- 鬻 … 売る。
譽之曰、吾楯之堅、莫能陷也。
之を誉めて曰く、吾が楯の堅きこと、能く陥す莫きなり、と。
- 誉之 … 「之」は「楯」を指す。
- 堅 … 堅いことといったら。
- 能 … 「よく」と読み、「~できる」と訳す。可能の意を表す。
- 陥 … 「とおす」と読む。突き破る。
- 莫 … 「なし」と読み、「~ない」と訳す。「無」と同じ。
- 也 … 「なり」と読む。断定を表す助字。
又譽其矛曰、吾矛之利、於物無不陷也。
又其の矛を誉めて曰く、吾が矛の利きこと、物に於いて陥さざる無きなり、と。
- 利 … 鋭い。「利なること」「利きこと」と読んでもよい。
- 於物 … どんな物であろうとも。
- 無不~ … 「~ざるはなし」と読み、「~しないものはない」と訳す。二重否定。
或曰、以子之矛、陷子之楯何如。
或ひと曰く、子の矛を以て、子の楯を陥さば何如、と。
- 或 … 「あるひと」と読む。
- 子 … 「し」と読む。ここではあなた。君。
- 何如 … 「~(は・ば・こと)いかん」と読み、「~はどうなのか」と訳す。状態や程度などを問う。「何奈」「何若」も同じ。ちなみに「如何」(奈何・若何)は、「~(は・ば・こと)いかん(せん)」と読み、「~はどうしようか」と訳す。手段・方法などを問う。目的語がある場合は「如~何」と、間に目的語を入れる。
其人弗能應也。
其の人応うる能わざるなり。
- 応 … 相手の問いに対して返答すること。
- 弗 … 「~ず」と読み、「~しない」と訳す。単純否定。「不」と同じ。「ざラ・ざリ・ず・ざル・ざレ・ざレ」と活用する。
- 弗能 … 「不能~」と同じ。「~(する)あたわず」と読み、「~できない」と訳す。「能」の否定形。
夫不可陷之楯、與無不陷之矛、不可同世而立。
夫れ陥す可からざるの楯と、陥らざる無きの矛とは、世を同じくして立つ可からず。
今堯舜之不可兩譽、矛楯之説也。
今、堯・舜の両つながら誉む可からざるは、矛楯の説なり。
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