麦秀の嘆
麦秀の嘆
- 出典:『史記』宋微子世家(ウィキソース「史記/宋微子世家」参照)
- 解釈:亡国の嘆き。故国が滅亡し、荒れ果てた様子を嘆き悲しむこと。「麦秀」は、麦の穂がのびること。紂王が暴虐の限りを尽くしたため殷が滅び、のちに一族の箕子が旧都の跡を通り過ぎたとき、焼け跡に麦が穂を出しているのを見て、悲しんで作った詩の言葉に基づく。
- 史記 … 前漢の司馬遷がまとめた歴史書。二十四史の一つ。事実を年代順に書き並べる編年体と違い、人物の伝記を中心とする紀伝体で編纂されている。本紀十二巻、表十巻、書八巻、世家三十巻、列伝七十巻の全百三十巻。ウィキペディア【史記】参照。
其後箕子朝周、過故殷虚。感宮室毀壞、生禾黍、箕子傷之。欲哭則不可。欲泣爲其近婦人。乃作麥秀之詩以歌詠之。
其の後、箕子、周に朝し、故の殷の虚を過ぐ。宮室毀壊し、禾黍を生ずるに感じ、箕子之を傷む。哭せんと欲すれば則ち不可なり。泣かんと欲すれば其れ婦人に近しと為す。乃ち麦秀の詩を作り、以て之を歌詠す。
- 箕子 … 殷の紂王の叔父。箕子朝鮮の始祖。ウィキペディア【箕子】参照。
- 禾黍 … 稲ときび。
- 虚 … 墟。宮殿あと。
- 哭 … 大声をあげて泣く。
- 泣 … 声をたてずになみだを流して泣く。
- 近婦人 … 女々しいこと。
- 歌詠 … 節をつけて歌うこと。
其詩曰、麥秀漸漸兮、禾黍油油。彼狡僮兮、不與我好兮。
其の詩に曰く、麦秀でて漸漸たり、禾黍油油たり。彼の狡僮、我と好からず、と。
- 漸漸 … 麦がじわじわとのびるさま。
- 油油 … 盛んなさま。光沢があるさま。
- 狡僮 … 悪童。紂を指す。
- 不好 … 相入れなかった。我が諫めを聞かなかった。
所謂狡僮者、紂也。殷民聞之、皆爲流涕。
所謂狡僮とは、紂なり。殷の民之を聞き、皆為に涕を流す。
- 紂 … 殷の最後の王。名は辛。夏の桀とともに暴君の代表。ウィキペディア【帝辛】参照。
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