>   故事名言   >   あ行   >   与うるの取るたるを知るは、政の宝なり

与うるの取るたるを知るは、政の宝なり

与(あた)うるの取(と)るたるを知(し)るは、政(まつりごと)の宝(たから)なり
  • 出典:『史記』管晏列伝、『管子』牧民篇(ウィキソース「史記/卷062」「管子/第01篇牧民」参照)
  • 解釈:人に与えることは、実は人から自分が取ることになる、これを知るのが政治の要諦なのだ。斉(せい)の宰相管(かん)仲(ちゅう)のことば。
     斉(せい)が魯(ろ)を攻め、柯(か)の地で会盟をしたとき、斉の桓公は魯の家臣曹沫(そうばつ)に匕首(あいくち)を突きつけられて脅迫され、魯から奪った領地の返還を約束させられた。桓公が約束を明言し終えると、曹沫は匕首を投げ捨てた。桓公は怒って今したばかりの約束を破棄しようとしたが、その時、斉の管仲が「それはなりません。たとえ脅されて行った約束でも、それを破棄すれば信用は失墜し、諸侯の信頼を失ってしまいます。与えることこそ、本当は取ることになるのだ、ということを悟ることが、政治において大切なことであります」と言ったという故事に基づく。
  • 史記 … 前漢の司馬遷がまとめた歴史書。二十四史の一つ。事実を年代順に書き並べる編年体と違い、人物の伝記を中心とする紀伝体で編纂されている。本紀十二巻、表十巻、書八巻、世家三十巻、列伝七十巻の全百三十巻。ウィキペディア【史記】参照。
〔史記、管晏列伝〕
於柯之會、桓公欲背曹沫之約。管仲因而信之。諸侯由是歸齊。故曰、知與之爲取、政之寶也。
柯(か)の会(かい)に於(お)いて、桓公(かんこう)曹沫(そうばつ)の約(やく)に背(そむ)かんと欲(ほっ)す。管(かん)仲(ちゅう)因(よ)りて之(これ)を信(まこと)にす。諸侯(しょこう)是(これ)に由(よ)り斉(せい)に帰(き)す。故(ゆえ)に曰(いわ)く、与(あた)うるの取(と)るたるを知(し)るは、政(まつりごと)の宝(たから)なり、と。
  • 桓公 … 斉の君主。在位期間は前685~前643。名は小白。管仲を宰相に抜擢し、春秋最初の覇者となった。ウィキペディア【桓公 (斉)】参照。
  • 柯 … 春秋時代の地名。元は衛の地。後に斉に属す。現在の山東省東阿県。
  • 会 … 会盟。
  • 曹沫 … 魯の家臣。曹沬(そうかい)とも。会盟の席で桓公に匕首(あいくち)を突きつけて脅迫し、魯から奪った領地の返還を約束させた。ウィキペディア【曹沫】参照。
  • 約 … 領地を返すという約定。
  • 管仲 … 前725?~前645。斉(せい)の宰相。管は姓。名は夷吾(いご)、仲は字(あざな)。親友鮑(ほう)叔(しゅく)牙(が)の推薦で桓公に仕え、宰相となって富国強兵策を推進した。『管子』は、管仲に仮託して書かれたもの。ウィキペディア【管仲】参照。
〔管子、牧民〕
能佚樂之、則民爲之憂勞。能富貴之、則民爲之貧賤。能存安之、則民爲之危墜。能生育之、則民爲之滅絶。
能(よ)く之(これ)を佚楽(いつらく)にすれば、則(すなわ)ち民(たみ)は之(これ)が為(ため)に憂労(ゆうろう)す。能(よ)く之(これ)を富(ふう)貴(き)にすれば、則(すなわ)ち民(たみ)は之(これ)が為(ため)に貧賤(ひんせん)たり。能(よ)く之(これ)を存安(そんあん)すれば、則(すなわ)ち民(たみ)は之(これ)が為(ため)に危(き)墜(つい)す。能(よ)く之(これ)を生育(せいいく)すれば、則(すなわ)ち民(たみ)は之(これ)が為(ため)に滅絶(めつぜつ)す。
  • 佚楽 … 民衆を気楽に遊び楽しませること。逸楽に同じ。
  • 憂労 … ここでは、君恩に感じて心身の労苦を厭(いと)わなくなること。
  • 富貴 … 民衆の生活を豊かにしてやること。
  • 貧賤 … ここでは、君恩に感じて貧賤を厭わなくなること。
  • 存安 … 民衆の姓名の安全を図ること。
  • 危墜 … ここでは、君恩に感じて危険なことに身を投ずること。
  • 生育 … 民衆の家族や子孫を養育させること。
  • 滅絶 … ここでは、君恩に感じて家族や子孫が亡くなることを顧みず、献身すること。
……故從其四欲、則遠者自親、行其四惡、則近者叛之。故知予之爲取者、政之寶也。
……故(ゆえ)に其(そ)の四(し)欲(よく)に従(したが)えば、則(すなわ)ち遠(とお)き者(もの)も自(おの)ずから親(した)しみ、其(そ)の四悪(しお)を行(おこな)えば、則(すなわ)ち近(ちか)き者(もの)も之(これ)に叛(そむ)く。故(ゆえ)に予(あた)うるの取(と)るたるを知(し)るは、政(まつりごと)の宝(たから)なり。
  • 四欲 … 民衆が欲する四つのもの。四つの欲望。佚楽・富貴・存安・生育を指す。
  • 四悪 … 民衆が憎み嫌う欲する四つのもの。憂労・貧賤・危墜・滅絶を指す。
  • 予 … 与える。「与」に同じ。
論語名句辞典
『論語名句辞典』
見出し句は類書中最大の981項目あります(うち空(から)見出し222項目を含む)。意味・原文・書き下し文・語釈付き。巻末に人名一覧・見出し句索引も収録しました。
試し読み試し読み (Amazon 詳細ページへ)
あ行 か行 さ行
た行 な行 は行
ま行 や行 ら行・わ
論語の名言名句