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大学 伝八章

01 所謂齊其家在脩其身者、人之其所親愛而辟焉。
所謂いわゆるいえととのうるはおさむるにりとは、ひと親愛しんあいするところおいへきす。
  • ウィキソース「四書章句集註/大學章句」参照。
  • 斉其家在修其身者 … 「一家の長として自分の家庭を整え治めるには、まずわが身を修めなければならない」とは。
  • 斉家 … 家庭を整え治めること。家族が和合すること。治家。八条目の一つ。
  • 修身 … 自分の身を修めて正しい行いをするように努力すること。八条目の一つ。
  • 人之其所親愛而辟焉 … 多くの人は自分が親しみ愛する人に対してかたよったことをする。
  • 人 … 多くの人。朱注には「人は、衆人を謂う」(人、謂衆人)とある。
  • 親愛 … 荻生徂徠『大学解』には「父母妻子は、其の親愛する所なり」(父母妻子、其所親愛也)とある。『大学解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 之 … ここでは「おいて」と読む。「於」に同じ。朱注には「は、猶おのごときなり」(之、猶於也)とある。
  • 辟 … かたよること。朱注には「へきは、猶おへんのごときなり」(辟、猶偏也)とある。
之其所賤惡而辟焉。
せんするところおいへきす。
  • 賤悪 … いやしみにくむこと。徂徠『大学解』には「庶孽しょげつ・奴婢は、其の賤しむ所にして、又或いは悪む可き者有るなり」(庶孽奴婢、其所賤而又或有可惡者也)とある。「庶孽」は、妾腹の子。「庶子」に同じ。
之其所畏敬而辟焉。
けいするところおいへきす。
  • 畏敬 … おそうやまう。優れた人を尊敬すること。徂徠『大学解』には「尊長は、其の畏敬する所なり」(尊長、其所畏敬也)とある。「尊長」は、尊敬すべき目上の人。
之其所哀矜而辟焉。
あいきょうするところおいへきす。
  • 哀矜 … 同情する。びんに思う。「哀」も「矜」も、あわれむ。徂徠『大学解』には「寡婦・孤児は、其の哀矜する所なり」(寡婦孤児、其所哀矜也)とある。
之其所敖惰而辟焉。
ごうするところおいへきす。
  • 敖惰 … おごあなどること。「敖」は「傲」に同じ。徂徠『大学解』には「敖惰は、或いは其の凶徳を為すを疑う」(敖惰、或疑其爲凶德)とある。
  • 朱注には「五者は人に在りて、もと当然ののり有り。然れども常人の情は、ただ其の向う所のままにして審を加えざれば、則ち必ず一偏に陥りて身修まらず」(五者在人、本有當然之則。然常人之情、惟其所向而不加審焉、則必陷於一偏而身不脩矣)とある。「五者」は、親愛・賤悪・畏敬・哀矜・敖惰を指す。
故好而知其惡、惡而知其美者、天下鮮矣。
ゆえこのんでしかあくり、にくんでものは、てんすくなし。
  • 好而知其悪 … 相手を好きでも、その短所を知る。「悪」は、悪事。欠点。短所。
  • 悪而知其美者 … 嫌いな相手でも、その長所を知るような人は。「美」は、美点。長所。
  • 天下鮮矣 … 世界中でも滅多にいない。
  • 鮮矣 … 少ない。滅多にない。「矣」は置き字。読まない。
02 故諺有之曰、人莫知其子之惡、莫知其苗之碩。
ゆえことわざり、いわく、ひとあくく、なえおおいなるをし、と。
  • 諺 … ことわざ。朱注には「げんは、俗語なり」(諺、俗語也)とある。
  • 人莫知其子之悪 … わが子の欠点に気づかない。
  • 莫知其苗之碩 … 自分の畑の苗が大きくなっていることに気づかない。
  • 碩 … 大きいこと。
  • 朱注には「愛に溺るる者は明らかならず、得を貪る者はく無し。是れ則ち偏の害を為して、家のととのわざる所以なり」(溺愛者不明、貪得者無厭。是則偏之爲害、而家之所以不齊也)とある。
03 此謂身不脩、不可以齊其家。
これおさまらざれば、もっいえととのからずとう。
  • 此謂身不修、不可以斉其家 … これが「わが身が修まらなければ、自分の家庭を整え治めることができない」というのである。
右傳之八章、釋脩身齊家。
みぎでんはっしょうおさいえととのうることをしゃくす。
  • 修身斉家 … 自分の身を修め、家庭を整え治めること。
  • 釈 … 解釈したものである。
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