大学 伝一章
01 康誥曰、克明德。
康誥に曰く、克く徳を明らかにす、と。
- ウィキソース「四書章句集註/大學章句」参照。
- 朱注には「凡そ伝の文は、経伝を雑引し、統紀無きが若し。然れども文理接続し、血脈貫通して、深浅始終、至って精密と為す。熟読詳味すれば、久しくして当に之を見るべし。今は尽くは釈かざるなり」(凡傳文、雜引經傳、若無統紀。然文理接續、血脈貫通、深淺始終、至爲精密。熟讀詳味、久當見之。今不盡釋也)とある。
- 康誥 … 『書経』周書・康誥篇のこと。朱注には「康誥は、周書なり」(康誥、周書)とある。ウィキソース「尚書/康誥」参照。
- 克 … よく。「能」に同じ。朱注には「克は、能なり」(克、能也)とある。
02 大甲曰、顧諟天之明命。
大甲に曰く、諟の天の明命を顧みる、と。
- 大甲 … 『書経』商書・大甲篇のこと。朱注には「大甲は、商書なり」(大甲、商書)とある。ウィキソース「尚書/太甲上」参照。
- 諟 … 「是」の古字。一説に、審らかの意。朱注には「諟は、猶お此のごときなり。或いは曰く、審らかにするなり」(諟、猶此也。或曰、審也)とある。
- 天之明命 … 天が人間に与えた輝かしい命令。朱注には「天の明命は、即ち天の我に与うる所以にして、我の徳たる所以の者なり。常目之に在れば、則ち時として明らかならざるは無し」(天之明命、即天之所以與我、而我之所以為德者也。常目在之、則無時不明矣)とある。
- 顧 … 常に注視していること。朱注には「顧は、常目之に在るを謂うなり」(顧、謂常目在之也)とある。
03 帝典曰、克明峻德。
帝典に曰く、克く峻徳を明らかにすと。
- 帝典 … 『書経』虞書・堯典篇のこと。朱注には「帝典は、堯典にして、虞書なり」(帝典、堯典、虞書)とある。ウィキソース「尚書/堯典」参照。
- 克 … よく。「能」に同じ。
- 峻徳 … 優れた大きい徳。大徳。偉大な徳。高大な徳。朱注には「峻は、大なり」(峻、大也)とある。
04 皆自明也。
皆自ら明らかにするなり。
- 皆自明也 … (これらの言葉は)みな自ら自己の徳を明らかにすることを述べたものである。朱注には「引く所の書を結ぶ。皆自ら己の徳を明らかにするの意を言う」(結所引書。皆言自明己德之意)とある。
右傳之首章、釋明明德。
右伝の首章、明徳を明らかにすることを釈す。
- 首章 … 最初の章。第一章。
- 釈 … 解釈したものである。
- 朱注には「此より下の三章の「止於信」に至るまでを通じて、旧本は誤りて「没世不忘」の下に在り」(此通下三章至止於信、舊本誤在沒世不忘之下)とある。
大学章句序 | 大学 朱熹章句 |
経一章 | 伝一章 |
伝二章 | 伝三章 |
伝四章 | 伝五章補伝 |
伝六章 | 伝七章 |
伝八章 | 伝九章 |
伝十章 |