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切するが如く、磋するが如く、琢するが如く、磨するが如しとは、其れ斯を之れ謂うか

せっするがごとく、するがごとく、たくするがごとく、するがごとしとは、これうか
  • 出典:『論語』学而第一15(ウィキソース「論語/學而第一」参照)
  • 解釈:『詩経』の中に「切磋琢磨して自分を磨き上げる」という詩句がありますが、このことを言うのですね。子貢が「貧しくとも人に媚びへつらうことなく、金持ちであっても驕り高ぶらないという生き方はどうですか」と質問したのに対し、孔子は「貧しくとも楽しく暮らし、金持ちであっても礼を好む者には及ばないだろう」と答えた。これに対し、子貢がすぐさま『詩経』の詩句を引用して答えた言葉。
  • 論語 … 孔子(前552~前479)とその門弟たちの言行録。四書の一つ。十三経の一つ。二十編。儒家の中心的経典。我が国へは応神天皇の代に伝来したといわれている。ウィキペディア【論語】参照。
子貢曰、貧而無諂、富而無驕、何如。子曰、可也。未若貧而樂、富而好禮者也。子貢曰、詩云、如切如磋、如琢如磨、其斯之謂與。子曰、賜也、始可與言詩已矣。告諸往而知來者。
こういわく、まずしくしてへつらうことく、みておごることきは、何如いかんいわく、なり。いままずしくしてたのしみ、みてれいこのものかざるなり。こういわく、う、せっするがごとく、するがごとく、たくするがごとく、するがごとしとは、これうか。いわく、や、はじめてともきのみ。これおうげて、らいものなり。
  • 子貢 … 前520~前446。姓は端木たんぼく、名は。子貢はあざな。衛の人。孔子より三十一歳年少の門人。孔門十哲のひとり。弁舌・外交に優れていた。また、商才もあり、莫大な財産を残した。ウィキペディア【子貢】参照。
  • 貧而 … 「ひんにして」と読んでもよい。貧乏であるのに。「而」は「~して」「~て」と直前の語に続けて読む。「~でありながら」「~であるのに」と訳す。
  • 諂 … へつらう。卑屈になって憐れみを乞う。
  • 何如 … 「いかん」と読む。事実や状態を問う言葉。どうでしょうか。
  • 可也 … よかろう。
  • 未若 … 「いまだ~にしかず」と読み、「~はいまだ~に及ばない」と訳す。「未」は再読文字。
  • 礼 … 礼儀。
  • 詩 … 『詩経』衛風・いくの詩を指す。ウィキソース「詩經/淇奧」参照。
  • 切 … 獣の骨や象牙などを刀で切り刻むこと。
  • 磋 … ぎょくや象牙などをヤスリで磨くこと。
  • 琢 … ぎょくや石をのみで打って削ること。
  • 磨 … 砂石で磨いて完成させること。
  • 其斯之謂与 … 「これうか」と読む。「斯」を前に出し、「之」を中に入れて語勢を強めたもの。「与」は「か」と読む。「おそらくこのことでありましょうか」と訳す。なお、「れのいいか」「れのいいなるか」とも訓読できる。
  • 賜也 … 賜は、子貢の名。子貢よ。
  • 始 … ここでは「それでこそ」という程度の意。
  • 与 … いっしょに。
  • 已矣 … 「のみ」と読み、「~なのである」「~だけである」と訳す。断定・限定の意を示す。「而已」「而已矣」「也已」も同じ。
  • 諸 … 本来は「之於しお」が「しょ」になまったもの。ここでは単に「これ(に)」と読む。近称の指示詞。子貢を指す。
  • 往 … 過去。
  • 来 … 未来。
  • 詳しい注釈と現代語訳については「学而第一15」参照。
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た行 な行 は行
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論語の名言名句