完璧(十八史略)
完璧(十八史略)
完璧而帰(璧を完うして帰る)
完璧而帰(璧を完うして帰る)
- 出典:『十八史略』巻一・春秋戦国・趙(国立国会図書館デジタルコレクション「十八史畧 一」参照)
- 解釈:完全でまったく欠点のないこと。原義は、借りた物を傷つけず無事に返却すること。趙の恵文王が楚から入手した和氏の璧という宝玉を秦の昭王が欲しがり、十五城と交換しようと申し込んできた。使者となった藺相如が璧を持って秦に行った。相如は秦の昭王が十五城を割譲する意思のないことを知り、その璧を無傷のまま趙に持ち帰ったという故事から。
惠文嘗得楚和氏璧。
恵文嘗て楚の和氏の璧を得たり。
秦昭王請以十五城易之。
秦の昭王、十五城を以て之に易えんことを請う。
欲不與、畏秦強、欲與、恐見欺。
与えざらんと欲すれば、秦の強きを畏れ、与えんと欲すれば、欺かるるを恐る。
- 欲不与 … 与えないようにすれば。
- 欲 … 「ほっす」と読み、「~したいと思う」「~したいと願う」と訳す。
- 畏秦強 … 秦が強いのを恐れる。
- 欲与 … 与えようにすれば。
- 恐見欺 … だまされることを心配する。
- 見 … 「る」「らる」と読み、「~される」と訳す。受身を表す。「被」と同じ。
藺相如曰、願奉璧往。
藺相如曰く、願わくは璧を奉じて往かん。
- 藺相如 … 戦国時代の趙の名臣。生没年未詳。ウィキペディア【藺相如】参照。
- 願 … 「ねがわくは~せん」と読み、「どうか~したい」と訳す。自らの願望の意を示す。
- 奉璧 … 璧を両手でささげ持つ。
- 往 … (秦へ使者として)行く。
城不入、則臣請完璧而歸。
城入らずんば、則ち臣請う璧を完うして帰らん、と。
- 不入 … 手に入らない。
- 不 … 「~ずんば」と読み、「もし~ないならば」と訳す。
- 臣 … わたくし。臣下が君主に対してへりくだっていう自称の言葉。
- 請 … 君主にお願いする。
- 完 … 傷つけることなく。無事に。
既至。
既に至る。
- 既 … 「すでに」と読み、「~した」「~したので」と訳す。動作の完了を表す。ちなみに「既而」は、「すでにして」と読み、「その後まもなく」と訳す。
- 至 … 到着する。
秦王無意償城。
秦王、城を償うに意無し。
- 償 … 代償として。
- 意 … 意思。
相如乃紿取璧。
相如乃ち紿きて璧を取る。
- 紿 … あざむく。だます。
怒髮指冠。
怒髪冠を指す。
- 怒髪 … はげしい怒りで逆立った髪のこと。
- 指冠 … 逆立った髪が冠を突き上げる。激怒した様子。
卻立柱下曰、臣頭與璧倶碎。
柱下に却立して曰く、臣が頭は璧と倶に砕けん、と。
- 柱下 … 柱の下。
- 却立 … 後ろへさがって立つ。
- 与 … 「と」と読み、「~と」と訳す。「A与B」の場合は、「AとB与」と読む。「與」は「与」の旧字体。
- 倶 … 「ともに」と読み、「そろって」「両方とも」と訳す。
遣從者懷璧、閒行先歸、身待命於秦。
従者をして璧を懐きて、間行して先ず帰らしめ、身は命を秦に待つ。
- 遣 … 「遣AB」の形で「AをしてB(せ)しむ」と読み、「AにBさせる」と訳す。使役の意を示す。
- 従者 … お供の者。
- 懐 … 大事に持たせる。
- 間行 … 抜け道を通っていく。
- 待命於秦 … 秦王からの沙汰を待った。
秦昭王賢而歸之。
秦の昭王、賢として之を帰らしむ。
- 賢 … (相如を)賢者であるとして。
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