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完璧(十八史略)

完璧(かんぺき)(十八史略)
完璧而帰(璧(へき)を完(まっと)うして帰(かえ)る)
  • 出典:『十八史略』巻一・春秋戦国・趙(国立国会図書館デジタルコレクション「十八史畧 一」参照)
  • 解釈:完全でまったく欠点のないこと。原義は、借りた物を傷つけず無事に返却すること。趙の恵文王が楚から入手した和氏(かし)の璧(へき)という宝玉を秦の昭王が欲しがり、十五城と交換しようと申し込んできた。使者となった藺(りん)相(しょう)如(じょ)が璧を持って秦に行った。相(しょう)如(じょ)は秦の昭王が十五城を割譲する意思のないことを知り、その璧を無傷のまま趙に持ち帰ったという故事から。
  • 十八史略 … 七巻。元の曾(そう)先(せん)之(し)撰。『史記』から『新五代史』までの十七の正史に、宋代の史書を加えて十八史とし、その概要を編年体でまとめたもの。史料的価値はほとんどないが、我が国では初学者のための入門書として広く読まれており、特に江戸時代には『論語』『唐詩選』とともに、初学者の必読書とされた。ウィキペディア【十八史略】参照。
  • 出典が『史記』のものは、「完璧(史記)」を参照。
惠文嘗得楚和氏璧。
恵文(けいぶん)嘗(かつ)て楚(そ)の和氏(かし)の璧(へき)を得(え)たり。
  • 恵文 … 戦国時代の趙の君主。在位前298~前266。名は何(か)。武霊王の子。恵王とも。秦の恵文王とは別人。ウィキペディア【恵文王 (趙)】【趙 (戦国)】参照。
  • 嘗 … 「かつて」と読み、「以前~した」と訳す。
  • 和氏璧 … 楚の国の卞(べん)和(か)が山中で発見したという宝玉。ウィキペディア【和氏の璧】参照。
秦昭王請以十五城易之。
秦(しん)の昭(しょう)王(おう)、十(じゅう)五(ご)城(じょう)を以(もっ)て之(これ)に易(か)えんことを請(こ)う。
  • 秦 … 今の陝西(せんせい)省の地をあった国。戦国七雄(秦・楚・斉・燕・趙・魏・韓)の一つ。ウィキペディア【秦】参照。
  • 昭王 … 秦の君主。在位前306~前251。名は則。諡(おくりな)は昭襄(しょうじょう)。父は恵文王(秦)。昭襄王とも。ウィキペディア【昭襄王 (秦)】参照。
  • 十五城 … 十五の城(じょう)市(し)。「城」は城壁で囲まれた町。
  • 易 … 交換する。取り替える。
欲不與、畏秦強、欲與、恐見欺。
与(あた)えざらんと欲(ほっ)すれば、秦(しん)の強(つよ)きを畏(おそ)れ、与(あた)えんと欲(ほっ)すれば、欺(あざむ)かるるを恐(おそ)る。
  • 欲不与 … 与えないようにすれば。
  • 欲 … 「ほっす」と読み、「~したいと思う」「~したいと願う」と訳す。
  • 畏秦強 … 秦が強いのを恐れる。
  • 欲与 … 与えようにすれば。
  • 恐見欺 … だまされることを心配する。
  • 見 … 「る」「らる」と読み、「~される」と訳す。受身を表す。「被」と同じ。
藺相如曰、願奉璧往。
藺(りん)相(しょう)如(じょ)曰(いわ)く、願(ねが)わくは璧(へき)を奉(ほう)じて往(ゆ)かん。
  • 藺相如 … 戦国時代の趙の名臣。生没年未詳。ウィキペディア【藺相如】参照。
  • 願 … 「ねがわくは~せん」と読み、「どうか~したい」と訳す。自らの願望の意を示す。
  • 奉璧 … 璧を両手でささげ持つ。
  • 往 … (秦へ使者として)行く。
城不入、則臣請完璧而歸。
城(しろ)入(い)らずんば、則(すなわ)ち臣(しん)請(こ)う璧(へき)を完(まっと)うして帰(かえ)らん、と。
  • 不入 … 手に入らない。
  • 不 … 「~ずんば」と読み、「もし~ないならば」と訳す。
  • 臣 … わたくし。臣下が君主に対してへりくだっていう自称の言葉。
  • 請 … 君主にお願いする。
  • 完 … 傷つけることなく。無事に。
既至。
既(すで)に至(いた)る。
  • 既 … 「すでに」と読み、「~した」「~したので」と訳す。動作の完了を表す。ちなみに「既而」は、「すでにして」と読み、「その後まもなく」と訳す。
  • 至 … 到着する。
秦王無意償城。
秦王(しんおう)、城(しろ)を償(つぐな)うに意(い)無(な)し。
  • 償 … 代償として。
  • 意 … 意思。
相如乃紿取璧。
相(しょう)如(じょ)乃(すなわ)ち紿(あざむ)きて璧(へき)を取(と)る。
  • 紿 … あざむく。だます。
怒髮指冠。
怒(ど)髪(はつ)冠(かんむり)を指(さ)す。
  • 怒髪 … はげしい怒りで逆立った髪のこと。
  • 指冠 … 逆立った髪が冠を突き上げる。激怒した様子。
卻立柱下曰、臣頭與璧倶碎。
柱(ちゅう)下(か)に却(きゃく)立(りつ)して曰(いわ)く、臣(しん)が頭(こうべ)は璧(へき)と倶(とも)に砕(くだ)けん、と。
  • 柱下 … 柱の下。
  • 却立 … 後ろへさがって立つ。
  • 与 … 「と」と読み、「~と」と訳す。「A与B」の場合は、「AとB与(と)」と読む。「與」は「与」の旧字体。
  • 倶 … 「ともに」と読み、「そろって」「両方とも」と訳す。
遣從者懷璧、閒行先歸、身待命於秦。
従(じゅう)者(しゃ)をして璧(へき)を懐(いだ)きて、間行(かんこう)して先(ま)ず帰(かえ)らしめ、身(み)は命(めい)を秦(しん)に待(ま)つ。
  • 遣 … 「遣AB」の形で「AをしてB(せ)しむ」と読み、「AにBさせる」と訳す。使役の意を示す。
  • 従者 … お供の者。
  • 懐 … 大事に持たせる。
  • 間行 … 抜け道を通っていく。
  • 待命於秦 … 秦王からの沙汰を待った。
秦昭王賢而歸之。
秦(しん)の昭(しょう)王(おう)、賢(けん)として之(これ)を帰(かえ)らしむ。
  • 賢 … (相如を)賢者であるとして。
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