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一死一生、乃ち交情を知る

いっ一生いっせいすなわこうじょう
  • 出典:『史記』汲鄭伝・賛(ウィキソース「史記/卷120」参照)
  • 解釈:死ぬか生きるかの状況にあって、初めて人の情がわかる。転じて、出世すると大勢の人が訪れるが、落ちぶれると誰も来なくなることによって、人の心がわかること。
  • 史記 … 前漢の司馬遷がまとめた歴史書。二十四史の一つ。事実を年代順に書き並べる編年体と違い、人物の伝記を中心とする紀伝体で編纂されている。本紀十二巻、表十巻、書八巻、世家三十巻、列伝七十巻の全百三十巻。ウィキペディア【史記】参照。
太史公曰、夫以汲鄭之賢、有勢則賓客十倍、無勢則否。況衆人乎。
たいこういわく、きゅうていけんもってして、いきおればすなわ賓客ひんかくじゅうばいし、いきおければすなわしからず。いわんやしゅうじんをや。
  • 太史公 … 司馬遷が自らを言う言葉。太史公は、太史令(太史の長官)の通称。太史は、官名で、天文や暦法を司り、国家の記録を司る役目も兼ねた。
  • 汲 … 前漢の大臣、きゅうあん。?~前112。濮陽ぼくよう(今の河南省濮陽県)の人。あざなちょうじゅ。老荘の学を好み、しばしば直諫した。武帝のとき、淮陽わいよう太守となった。ウィキペディア【汲黯】参照。
  • 鄭 … 前漢の大臣、鄭当時。生没年不詳。陳郡(今の河南省周口市一帯)の人。あざなそう。景帝のとき、太子舎人、武帝のとき、大司農となった。後に汝南太守となり、しゅっした。ウィキペディア【鄭当時】参照。
  • 否 … 「しからず」と読み、「そうではない」と訳す。否定の意を示す。
  • 況 … まして~はなおさらである。
  • 衆人 … 普通の人。
下邽翟公有言。始翟公爲廷尉、賓客闐門。及廢、門外可設雀羅。翟公復爲廷尉、賓客欲往。
けい翟公てきこうり。はじ翟公てきこうているや、賓客ひんかくもんつ。はいせらるるにおよべば、門外もんがいじゃくもうし。翟公てきこうているや、賓客ひんかくかんとほっす。
  • 下邽 … 県名。今の陝西省渭南市臨渭区下邽鎮。ウィキペディア【下邽県】参照。
  • 翟公 … 前漢の武帝のときの廷尉。名は不詳。下邽の人。ウィキペディア【翟公】(中文)参照。
  • 廷尉 … 官名。秦・漢代、刑罰をつかさどった。
  • 闐 … 満ちる。いっぱいになる。
  • 廃 … 失職する。
  • 門外可設雀羅 … 門の前に雀を捕らえる網を張ることができるほど、訪れる客がないさま。
  • 往 … 赴く。
翟公乃大署其門曰、一死一生、乃知交情。一貧一富、乃知交態。一貴一賤、交情乃見。汲鄭亦云。悲夫。
翟公てきこうすなわもん大署たいしょしていわく、いっ一生いっせいすなわこうじょうる。一貧いっぴんいっすなわ交態こうたいる。いっ一賤いっせんこうじょうすなわあらわ る、と。きゅうていにもう。かなしいかな。
  • 大署 … 大きな字で書き記すこと。「大書」に同じ。
  • 一死一生 … 死ぬか生きるかの危難を経験して。
  • 交情 … つきあいで得られる親しみの感情。友情。
  • 一貧一富 … 貧乏と裕福を経験して。
  • 交態 … 人付き合いの態度。
  • 一貴一賤 … 身分が貴くなったり賤しくなったりすることを経験して。
  • 汲鄭亦云 … 汲黯と鄭当時の二人についても同じことがいえる。
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