沂に浴し、舞雩に風し、詠じて帰らん
沂に浴し、舞雩に風し、詠じて帰らん
- 出典:『論語』先進第十一25(ウィキソース「論語/先進第十一」参照)
- 解釈:沂水のほとりの温泉で入浴し、舞雩の雨乞い台でひと涼みして、歌でも口ずさみながら帰ってきたいものです。曾晳(曾子の父)の言葉。子路・冉有・公西華・曾晳の四人が孔子の側に座っていたとき、孔子が「君たちが世間に認められたら、どんなことがしたいか」と尋ねられ、それぞれが抱負を述べた。子路・冉有・公西華の抱負はそれぞれ違いはあるが、みな社会的活躍をしたいという内容であった。最後に述べた曾晳の抱負に対し、孔子は深い嘆息をもらして、「私は曾晳に賛成だ」と言ったという。曾晳が希望する悠々自適の生活、それを孔子が肯定している点など、この章は『論語』の中で最も長文であるが、味わい深い章でもある。
- 論語 … 孔子(前552~前479)とその門弟たちの言行録。四書の一つ。十三経の一つ。二十編。儒家の中心的経典。我が国へは応神天皇の代に伝来したといわれている。ウィキペディア【論語】参照。
曰、莫春者、春服既成。冠者五六人、童子六七人、浴乎沂、風乎舞雩、詠而歸。夫子喟然歎曰、吾與點也。
曰く、莫春には、春服既に成る。冠者五六人、童子六七人、沂に浴し、舞雩に風し、詠じて帰らん。夫子喟然として歎じて曰く、吾は点に与せん。
- 莫春 … 晩春。季春。陰暦の三月。「莫」は「暮」に同じ。
- 春服 … 春着。
- 既成 … 新しく仕立て上がる。
- 冠者 … 元服をして冠をつけた二十歳ぐらいの青年。
- 童子 … 元服していない、十五、六歳の少年。
- 浴乎沂 … 沂水のほとりの温泉に入浴する。「沂」は、曲阜の南を流れる川。そのほとりに温泉があったという。「乎」は「於」に同じ。
- 舞雩 … 天をまつって雨乞いをするとき、舞を舞う祭壇。雨乞い台。
- 風 … 涼しい風にふかれる。涼む。
- 詠 … 歌をうたう。
- 喟然 … 嘆息するさま。
- 歎 … 感嘆する。
- 点 … 孔子の弟子、曾晳の名。前546~?。曾子の父。姓は曾、名は点、また蒧。字は晳。子晳ともいう。ウィキペディア【曾点】(中文)参照。
- 与 … 「くみす」と読む。賛成する。仲間になる。
- 詳しい注釈と現代語訳については「先進第十一25」参照。
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