>   漢詩   >   唐詩選   >   巻七 七絶   >   宮怨(司馬礼)

宮怨(司馬礼)

宮怨
宮(きゅう)怨(えん)
司馬(しば)礼(れい)
  • 七言絶句。樓・愁・溝(下平声尤韻)。
  • ウィキソース「宮怨 (司馬扎)」参照。
  • 宮怨 … 宮女の怨情の意。
  • この詩は、天子の寵愛を失っても宮中を出ることができず、空しく後宮で過ごさなければならない宮女の悲しみを詠んだもの。
  • 司馬礼 … 生没年不詳。晩唐の詩人。宣宗の大中年間(847~860)に活躍した人ということ以外は何もわからない。「礼」は『全唐詩』では「扎(さつ)」に作り、「高棅(こうへい)の品(ひん)彙(い)は禮(れい)に作(つく)る」(高棅品彙作禮)とある。高棅(1350~1423)は『唐詩品彙』の編者。『唐詩品彙』では「禮」に作る。
柳色參差掩畫樓
柳色(りゅうしょく)参(しん)差(し)として画(が)楼(ろう)を掩(おお)い
  • 柳色 … 青々とした柳の色。南朝梁の皇太子蕭綱(のちの簡文帝)「湘東王の名士傾城(けいせい)を悦(よろこ)ぶに和す」詩(『玉台新詠』巻七)に「妝(しょう)窗(そう)柳色を隔(へだ)つ、井水(せいすい)桃紅に照らさる」(妝窗隔柳色、井水照桃紅)とある。妝窗は、美しく飾った窓。ウィキソース「和湘東王名士悅傾城」参照。また、南朝梁の蕭子範「春望古意」詩(『玉台新詠』巻八・宋刻不収)に「春情柳色を寄せ、鳥語梅中に出づ」(春情寄柳色、鳥語出梅中)とある。鳥語は、鳥の鳴き声。ウィキソース「春望古意」参照。
  • 参差 … 不揃いな様子。ここでは、柳の枝の長さが長短入りまじって揃わない様子。『詩経』周南・関雎に「参(しん)差(し)たる荇菜(こうさい)は、左(さ)右(ゆう)に之(これ)を流(もと)む」(參差荇菜、左右流之)とある。ウィキソース「詩經/關雎」参照。
  • 画楼 … 美しく彩色した高楼。ここでは宮女の住む楼を指す。
  • 掩 … 柳の枝が掩い隠している。
曉鶯啼送滿宮愁
暁(ぎょう)鶯(おう)啼(な)き送(おく)る 満(まん)宮(きゅう)の愁(うれ)い
  • 暁鶯 … 夜明けに鳴く鶯(うぐいす)。
  • 啼送 … (春の愁いを)鳴き送ってくる。
  • 満宮 … 宮殿に満ち渡る。後宮いっぱいに。
  • 愁 … 春の愁い。
年年花落無人見
年年(ねんねん)花(はな)落(お)つるも人(ひと)の見(み)る無(な)し
  • 年年 … 年ごとに。南朝梁の呉均の楽府「行路難二首」(『玉台新詠』巻九)の第二首「洞庭水上一株(いっしゅ)の桐」に「年年月月(げつげつ) 君子に対し、遥遥夜夜(やや) 未(び)央(おう)に宿す」(年年月月對君子、遙遙夜夜宿未央)とある。未央は、漢の宮殿、未央宮。ウィキソース「行路難 (吳均)」参照。また、南朝陳の江総の楽府「折楊柳」(『楽府詩集』巻二十二)に「此の依依(いい)たる情を共にするも、奈(いかん)ともする無し 年年の別れ」(共此依依情、無奈年年別)とある。依依は、しなやかな様子。ウィキソース「樂府詩集/022卷」参照。
  • 花落 … 花は散るけれども。
  • 無人見 … 見てくれる人もない。南朝梁の簡文帝の詩「湘東王に和す三韻二首」(『玉台新詠』巻七)の第二首「冬暁」に「曽(かつ)て是(こ)れ人(ひと)の見(み)る無(な)く、何(なん)ぞ用(もち)いん早(はや)く紅(こう)粧(しょう)するを」(曾是無人見、何用早紅粧)とある。ウィキソース「冬曉 (蕭綱)」参照。
空逐春泉出御溝
空(むな)しく春泉(しゅんせん)を逐(お)うて御溝(ぎょこう)を出(い)づ
  • 空 … (花びらは)ただ空しく。
  • 逐春泉 … 春の泉の流れに乗って。春泉は宮中に湧く泉を指す。花びらが泉に落ちて水面に浮かび、そのまま流されていく様子。
  • 御溝 … 宮中を流れるお堀。後唐の馬縞『中華古今注』巻上、長安禦溝の条に「長(ちょう)安(あん)の御溝(ぎょこう)は、之(これ)を楊溝(ようこう)と謂(い)う。高楊(こうよう)を其(そ)の上(かみ)に植(う)うればなり。……亦(ま)た禁溝(きんこう)と曰(い)う。終(しゅう)南(なん)山(ざん)の水(みず)を引(ひ)き、宮(きゅう)内(だい)より過(す)ぐ。所謂(いわゆる)御溝(ぎょこう)なり」(長安御溝、謂之楊溝。植高楊於其上也。……亦曰禁溝。引終南山水、從宮内過。所謂御溝)とある。ウィキソース「古今注/中華古今註」参照。
  • 出 … (御溝を)出て消えていく。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻五百九十六(排印本、中華書局、1960年)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻三十四(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻五十四([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
歴代詩選
古代 前漢
後漢 魏
晋 南北朝
初唐 盛唐
中唐 晩唐
北宋 南宋
金 元
明 清
唐詩選
巻一 五言古詩 巻二 七言古詩
巻三 五言律詩 巻四 五言排律
巻五 七言律詩 巻六 五言絶句
巻七 七言絶句
詩人別
あ行 か行 さ行
た行 は行 ま行
や行 ら行