班婕妤(王維)
班婕妤
班婕妤
班婕妤
- 五言絶句。迎・聲(平声庚韻)。
- ウィキソース「班婕妤 (王維)」参照。
- 詩題 … 楽府題。相和歌辞・楚調曲に属す。班婕妤は、前漢の女官、女流詩人。婕妤は官名(後宮における側室の称号)。班況の娘。名は未詳。成帝(在位前33~前7)の寵愛を受けて女官となったが、のちに帝が趙飛燕姉妹を寵愛するようになったため、退いて皇太后に仕えた。この詩は、帝の寵愛を失ったことを嘆いたもの。ウィキペディア【班倢伃】参照。『全唐詩』『静嘉堂本』『蜀刊本』『四部叢刊本』『顧起経注本』『顧可久注本』『趙注本』『楽府詩集』『万首唐人絶句』では「班婕妤三首 其三」に作る。『唐詩品彙』では「班婕妤二首 其二」に作る。『唐詩解』では「班婕妤三首 其二」に作る。『国秀集』では「扶南曲」に作る。
- 王維 … 699?~761。盛唐の詩人、画家。太原(山西省)の人。字は摩詰。開元七年(719)、進士に及第。安禄山の乱で捕らえられたが事なきを得、乱後は粛宗に用いられて尚書右丞(書記官長)まで進んだので、王右丞とも呼ばれる。また、仏教に帰依したため、詩仏と称される。『王右丞文集』十巻がある。ウィキペディア【王維】参照。
怪來粧閣閉
怪しむらくは粧閣の閉づることを
- 怪来 … どうしたことだろう。不審に思う。「来」は助字。意味はない。
- 怪 … 『静嘉堂本』『四部叢刊本』『顧可久注本』『楽府詩集』では「恠」に作る。異体字。
- 粧閣 … 化粧部屋。ここでは、班婕妤の居室を指す。
- 粧 … 『蜀刊本』『顧起経注本』『趙注本』『楽府詩集』では「妝」に作る。同義。
- 閣 … 『静嘉堂本』『四部叢刊本』『顧起経注本』『国秀集』『万首唐人絶句』『唐詩解』では「閤」に作る。
- 閉 … 閉じられたままである。王叔英の妻劉氏(『玉台新詠』巻八)「婕妤の怨に和す」詩に「日落ちて応門閉じ、愁思百端生ず」(日落應門閉、愁思百端生)とある。応門は、南の正門。ウィキソース「和婕妤怨」参照。なお、『玉台新詠』で徐悱の妻劉令嫻の作とするは誤り。
朝下不相迎
朝より下るも相迎えず
- 朝下 … 天子が朝廷から退出する(諸説あり)。
- 相迎 … (天子を)迎え出ることはない。天子は班婕妤の所ではなく、趙飛燕の所へ行かれるため。「相」は、ここでは「互いに」という意味ではなく、動作に対象があることを示す言葉。南朝宋の湯恵休「楚明妃曲」(『玉台新詠』巻九、宋刻本未収)に「姿を含んで綿視し、微笑して相迎う」(含姿綿視、微笑相迎)とある。綿視は、凝視にほぼ同じ。ウィキソース「楚明妃曲」参照。
總向春園裏
総て春園の裏に向って
- 総 … 『静嘉堂本』では「惣」に作る(ただし「勿」の部分は「匆」に作る)。『四部叢刊本』『楽府詩集』では「揔」に作る。『万首唐人絶句』では「緫」に作る。すべて異体字。
- 向 … 『全唐詩』には「一作在」との注がある。『国秀集』では「在」に作る。
- 春園 … 春の園。「子夜四時歌 春歌二十首 其の十四」に「春園 花 黄に就き、陽池 水 方に淥む」(春園花就黃、陽池水方淥)とある。ウィキソース「樂府詩集/044卷」参照。
花閒笑語聲
花間 笑語の声
テキスト
- 『箋註唐詩選』巻六(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
- 『全唐詩』巻一百二十八(中華書局、1960年)
- 『王右丞文集』巻六(静嘉堂文庫蔵、略称:静嘉堂本)
- 『王摩詰文集』巻十(書韻楼叢刊、上海古籍出版社、2003年、略称:蜀刊本)
- 『須渓先生校本唐王右丞集』巻六(『四部叢刊 初篇集部』所収、略称:四部叢刊本)
- 顧起経注『類箋唐王右丞詩集』巻九(台湾学生書局、1970年、略称:顧起経注本)
- 顧可久注『唐王右丞詩集』巻六(『和刻本漢詩集成 唐詩1』所収、略称:顧可久注本)
- 趙殿成注『王右丞集箋注』巻十三(中国古典文学叢書、上海古籍出版社、1998年、略称:趙注本)
- 『唐詩品彙』巻三十九([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
- 『楽府詩集』巻四十三・相和歌辞・楚調曲(北京図書館蔵宋刊本影印、中津濱渉『樂府詩集の研究』所収)
- 『唐詩解』巻二十二(順治十六年刊、内閣文庫蔵)
- 『万首唐人絶句』五言・巻四(明嘉靖刊本影印、文学古籍刊行社、1955年)
- 『国秀集』巻中(傅璇琮編撰『唐人選唐詩新編』、陝西人民教育出版社、1996年)
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