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登楼寄王卿(韋応物)

登樓寄王卿
楼(ろう)に登(のぼ)って王卿(おうけい)に寄(よ)す
韋(い)応(おう)物(ぶつ)
  • 七言絶句。同・窮・中(上平声東韻)。
  • ウィキソース「登樓寄王卿」参照。
  • 登楼 … 高殿(たかどの)に登ること。
  • 王卿 … 王某。作者の親しい友人と思われるが、人物については不詳。卿は、官吏仲間の敬称。
  • 寄 … 詩を人に託して送り届けること。ちなみに「贈」は、詩を直接手渡すこと。
  • この詩は、作者がどこかの高殿に登ったときの感慨を、友人の王卿に書き送ったもの。滁(じょ)州(しゅう)刺史のときの作。
  • 韋応物 … 736~791?。中唐の詩人。長安(陝西(せんせい)省西安市)の人。字(あざな)は不詳。滁(じょ)州(しゅう)(安徽省)刺史(州の長官)や江州(江西省)刺史等を歴任したが、最後の官が蘇州刺史だったので、韋蘇州と呼ばれた。自然を対象とした詩が多く、自然詩人といわれた。『韋江州集』十巻、『韋蘇州集』十巻がある。ウィキペディア【韋応物】参照。
踏閣攀林恨不同
閣(かく)を踏(ふ)み 林(はやし)に攀(よ)じて 同(おな)じうせざるを恨(うら)む
  • 踏閣 … 楼閣に登ること。踏は、登る。また、閣を台閣(朝廷)とし、朝廷で活躍するという解釈もある。
  • 攀林 … 楼閣が林の中にあるため、その坂道をよじ登ること。攀は、手で物につかまって登ること。劉宋の謝霊運「斤竹澗(きんちくかん)より嶺(れい)を越(こ)えて渓行(けいこう)す」詩(『文選』巻二十二)に「石(いし)に企(つまだ)てて飛(ひ)泉(せん)を挹(く)み、林(はやし)に攀(よ)じて葉巻(ようけん)を擿(つ)む」(企石挹飛泉、攀林擿葉卷)とある。ウィキソース「從斤竹澗越嶺溪行」参照。
  • 林 … 『御覧詩』では「枝」に作る。
  • 恨不同 … 君と一緒でないのが残念である。
楚雲滄海思無窮
楚(そ)雲(うん)滄海(そうかい) 思(おも)い窮(きわ)まり無(な)し
  • 楚雲 … 楚の空に浮かぶ雲。楚の地。作者がいるところ。
  • 滄海 … 大海原(おおうなばら)。王卿がいるところ。
  • 思無窮 … わが思いは遠く広がって、果てしもない。
數家砧杵秋山下
数(すう)家(か)の砧杵(ちんしょ) 秋(しゅう)山(ざん)の下(もと)
  • 数家 … 数軒。
  • 砧杵 … 冬着を作るための、布を打つ砧(きぬた)の音。晩秋の風物。砧(きぬた)は、布を打つときに下に敷く木や石の台。杵(きね)は、布地を叩くつち。南朝梁の何遜「族人の秣陵の兄弟に贈る」詩(『古詩紀』巻九十三)に「砧杵(ちんしょ)四(し)隣(りん)に鳴(な)る」(砧杵鳴四隣)とある。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷093」参照。
  • 秋山下 … 秋深まる山の麓(ふもと)。
一郡荊榛寒雨中
一郡(いちぐん)の荊榛(けいしん) 寒(かん)雨(う)の中(うち)
  • 一郡 … 郡内。郡中。この郡全部。町じゅう。
  • 荊榛 … 雑木の茂み。雑木林。荊は、いばら。榛は、はしばみ。カバノキ科の落葉低木。ウィキペディア【ハシバミ】参照。ここでは叢生した木を指す。西晋の潘岳「関中の詩」(『文選』巻二十)の第十五首に「疫癘(えきれい)は淫(はなは)だ行(はや)り、荊(けい)棘(きょく)は榛(しん)を成(な)す」(疫癘淫行、荊棘成榛)とある。ウィキソース「關中詩」参照。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻一百八十八(排印本、中華書局、1960年)
  • 『韋江州集』巻三(『四部叢刊 初編集部』所収)
  • 『韋蘇州集』巻十(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)
  • 『韋蘇州集』巻三(『四部備要 集部』所収、中華書局)
  • 『(須溪先生校本)韋蘇州集』巻三(宝永三年刊、『和刻本漢詩集成 唐詩8』所収、汲古書院、1975年)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十六(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻四十九([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
  • 『唐詩別裁集』巻二十([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
  • 『御覧詩』(傅璇琮編撰『唐人選唐詩新編』、陝西人民教育出版社、1996年)
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