>   漢詩   >   歴代詩選:中唐   >   滁州西澗(韋応物)

滁州西澗(韋応物)

滁州西澗
じょしゅう西澗せいかん
おうぶつ
  • 七言絶句。生・鳴・橫(平声庚韻)。
  • ウィキソース「滁州西澗」参照。
  • 詩題 … 『御覧詩』『又玄集』『才調集』では「西澗」に作る。
  • じょしゅうの刺史を辞めて西澗せいかんに閑居していた頃(興元こうげん元年〔784〕冬末~貞元ていげん元年〔785〕夏)、作者四十九歳の作。傅璇琮「韋應物繫年考證」(『唐代詩人叢考』所収、中華書局、1980年)参照。
  • 滁州 … 今のあん省滁州市。ウィキペディア【滁州】参照。
  • 西澗 … 滁州城の西の谷川。「澗」は、谷川。俗に烏土河と言われた。『読史方輿紀要』巻二十九、南直・滁州の条に「又た東のかた西澗と為す、俗に亦た烏土河と名づく、其の下流に小沙河と為す、城を穿うがちて東よりでて、亦た清流河と合す」(又東爲西澗、俗亦名烏土河、其下流爲小沙河、穿城而東出、亦合於清流河)とある。ウィキソース「讀史方輿紀要/卷二十九」参照。
  • 韋応物 … 736~791?。中唐の詩人。長安(陝西せんせい省西安市)の人。じょしゅう(安徽省)刺史や江州(江西省)刺史等を歴任したが、最後の官が蘇州刺史だったので、韋蘇州と呼ばれた。自然を対象とした詩が多く、自然詩人といわれた。『韋江州集』十巻、『韋蘇州集』十巻がある。ウィキペディア【韋応物】参照。
獨憐幽草澗邊生
ひとあわれむ 幽草ゆうそう澗辺かんぺんしょうずるを
  • 独憐 … ただひたすらいとおしむ。「独」は、ここでは「ひとり」の意ではなく、「ただ、ひたすら、もっぱら」の意。「憐」は、「かわいそうに思う」の意ではなく、「いとおしむ、めでる」の意。なお、「独憐」は、第一句のみにかかるという説と、一首全体にかかるという説とがある。
  • 幽草 … 深く生い茂った草。
  • 幽 … 『全唐詩』『和刻本韋蘇州集』『四部備要本』には「一作芳」とある。
  • 澗辺 … 谷川のほとり。
  • 生 … 『全唐詩』『和刻本韋蘇州集』『四部備要本』には「一作行」とある。『唐詩解』では「行」に作り、「舊本誤作生」とある。
上有黃鸝深樹鳴
うえこう深樹しんじゅ
  • 上 … 頭上では。『唐詩解』では「尚」に作り、「舊本誤作上」とある。
  • 黄鸝 … コウライウグイス。黄鳥とも。ウィキペディア【コウライウグイス】参照。『詩経』周南・葛覃かつたんの詩に「黄鳥ここに飛び、灌木かんぼくに集まる、其の鳴くこと喈喈かいかいたり」(黃鳥于飛、集于灌木、其鳴喈喈)とあり、朱熹『詩集伝』に「黄鳥は、鸝なり」(黄鳥、鸝也)とある。ウィキソース「詩經/葛覃」「詩經集傳/卷之一」参照。
  • 深樹 … こんもりと茂った木。『才調集』では「遶樹」に作る。
  • 樹 … 『全唐詩』には「一作處」とある。
春潮帶雨晚來急
春潮しゅんちょう あめびて 晩来ばんらいきゅうなり
  • 春潮 … 春の日に水かさの増した谷川の水。
  • 帯雨 … 雨を伴って。
  • 晩来 … 夕方になって。日の暮れがたになって。
  • 急 … 激しく流れる。
野渡無人舟自橫
野渡やと ひとく ふねおのずからよこたわる
  • 野渡 … 野にある小さな渡し場。田舎の渡し場。
  • 無人 … 人の姿がない。船頭がいない。
  • 舟自横 … 舟だけが横たわっている。
テキスト
  • 『全唐詩』巻一百九十三(揚州詩局本縮印、上海古籍出版社、1985年)
  • 『唐詩三百首注疏』巻六下・七言絶句(廣文書局、1980年)
  • 『増註三体詩』巻一・七言絶句・拗体(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)
  • 『韋江州集』巻八(『四部叢刊 初編集部』所収)
  • 『韋蘇州集』巻十(『唐五十家詩集』所収)
  • 『韋蘇州集』巻八(『四部備要 集部』所収)
  • 『(須溪先生校本)韋蘇州集』巻八(宝永三年刊本、『和刻本漢詩集成 唐詩8』所収、汲古書院、1975年)
  • 『文苑英華』巻一百六十四(影印本、中華書局、1966年)
  • 『唐詩品彙』巻四十九([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『唐詩別裁集』巻二十(乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
  • 『万首唐人絶句』七言・巻四(明嘉靖刊本影印、文学古籍刊行社、1955年)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十六(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩解』巻二十八(順治十六年刊、内閣文庫蔵)
  • 『御覧詩』(傅璇琮編撰『唐人選唐詩新編』、陝西人民教育出版社、1996年)
  • 『又玄集』巻中(傅璇琮編撰『唐人選唐詩新編』、陝西人民教育出版社、1996年)
  • 『才調集』巻一(傅璇琮編撰『唐人選唐詩新編』、陝西人民教育出版社、1996年)
  • 孫望編著『韋應物詩集繋年校箋』巻六(中國古典文學基本叢書、中華書局、2002年)
  • 陶敏/王友勝校注『韋應物集校注』巻八(中國古典文學叢書、上海古籍出版社、1998年)
歴代詩選
古代 前漢
後漢
南北朝
初唐 盛唐
中唐 晩唐
北宋 南宋
唐詩選
巻一 五言古詩 巻二 七言古詩
巻三 五言律詩 巻四 五言排律
巻五 七言律詩 巻六 五言絶句
巻七 七言絶句
詩人別
あ行 か行 さ行
た行 は行 ま行
や行 ら行