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帰雁(銭起)

歸雁
帰(き)雁(がん)
銭(せん)起(き)
  • 七言絶句。囘・苔・來(上平声灰韻)。
  • ウィキソース「歸雁 (錢起)」参照。
  • 詩題 … 春になって北へ帰る雁のこと。
  • この詩は、春になって北へ帰る雁を詠じたもの。最初の二句は帰っていく雁への問い、後の二句は雁からの答えという構成になっている。
  • 銭起 … 710?~780?。中唐の詩人。呉興(浙江省呉興区)の人。字(あざな)は仲文。天宝十載(751)、進士に及第。校書郎から藍田県(陝西省藍田県)の県尉を経て、考功郎中に進み、太清宮使・翰林学士に至った。大暦十才子の一人。郎士元とともに「銭郎」と称された。『銭考功集』十巻がある。ウィキペディア【銭起】参照。
瀟湘何事等閑囘
瀟湘(しょうしょう) 何事(なにごと)ぞ 等閑(とうかん)に回(かえ)る
  • 瀟湘 … 瀟水と湘江(湘水)。洞庭湖に南から流れこむ二つの川の名。洞庭湖の南の流域一帯を指す。『水経注』湘水篇に「瀟とは、水清深(せいしん)なり。湘中記に曰く、湘川は清照なること五六丈、下(した)、底の石を見ること樗(ちょ)蒲(ぼ)の矢の如く、五色鮮明なり。白沙は霜雪の如く、赤岸は朝霞の若し。是れ瀟湘の名を納(い)るるなり」(瀟者、水清深也。湘中記曰、湘川清照五六丈、下見底石如樗蒲矢、五色鮮明。白沙如霜雪、赤岸若朝霞。是納瀟湘之名矣)とある。樗蒲は、ばくち。ウィキソース「水經注/38」参照。また、三国魏の曹植「雑詩六首」(『文選』巻二十九)の第四首に「朝に江北の岸に遊び、夕(ゆうべ)に瀟湘の沚(なぎさ)に宿す」(朝遊江北岸、夕宿瀟湘沚)とある。ウィキソース「曹子建集 (四部叢刊本)/卷第五」参照。また、南朝斉の謝朓「新亭(しんてい)の渚(なぎさ)にて范(はん)零(れい)陵(りょう)に別(わか)るる詩(し)」(『文選』巻二十)に「洞庭(どうてい)は楽(がく)を張(は)るの地(ち)、瀟湘(しょうしょう)には帝(てい)子(し)遊(あそ)ぶ」(洞庭張樂地、瀟湘帝子遊)とある。帝子は、堯帝の二人の娘、娥皇と女英のこと。ウィキソース「新亭渚別范零陵詩」参照。
  • 何事 … どういうわけで。どうして。
  • 等閑 … 心にかけない。意に留めない。問題にしない。
  • 回 … 北へ帰って行くのか。
水碧沙明兩岸苔
水(みず)碧(みどり)に沙(すな)明(あき)らかにして両(りょう)岸(がん)苔(こけ)むす
  • 水碧 … 水は青く澄んで。
  • 沙明 … 砂は白く輝いて。
  • 両岸苔 … 両方の岸にはみずみずしい苔が生じている。
二十五絃彈夜月
二(に)十(じゅう)五(ご)絃(げん) 夜(や)月(げつ)に弾(だん)ずれば
  • 二十五絃 … 二十五弦の瑟(おおごと)。『史記』封禅書に「或(あ)るひと曰(いわ)く、太帝(たいてい)、素(そ)女(じょ)をして五(ご)十(じゅう)弦(げん)の瑟(しつ)を鼓(こ)せしむ。悲(かな)し、帝(てい)禁(きん)ずれども止(や)まず。故(ゆえ)に其(そ)の瑟(しつ)を破(やぶ)りて二(に)十(じゅう)五(ご)弦(げん)と為(な)せり、と」(或曰、太帝使素女鼓五十弦瑟。悲、帝禁不止。故破其瑟爲二十五弦)とある。ウィキソース「史記/卷028」参照。
  • 弾夜月 … (湘江の女神が)月夜の空に向かって弾く(のを聞くと)。
不勝清怨却飛來
清怨(せいえん)に勝(た)えずして 却(きゃく)飛(ひ)し来(きた)る
  • 清怨 … 清らかで哀怨な調べ。清く哀れな音。
  • 不勝 … 堪えきれず。堪えかねて。不堪に同じ。
  • 却飛来 … 南方の瀟湘から北方へ飛び帰ること。来は、助辞。意味はない。簡野道明『唐詩選詳説』(明治書院、昭和四年)では「却(きゃく)飛(ひ)せるならん」と読んでいる。また、「来」を助辞と見ない場合は「却(かえ)って飛(と)び来(き)たらん」と読み、「一度北方へ飛び立ったが、また南方へ飛び帰ってくる」という解釈になる。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻二百三十九(排印本、中華書局、1960年)
  • 『増註三体詩』巻一・七言絶句・実接(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)
  • 『銭考功集』巻十(『四部叢刊 初編集部』所収)
  • 『銭考功集』巻十(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十四(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻四十九([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
  • 『唐詩別裁集』巻二十([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
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