帰雁(銭起)
歸雁
帰雁
帰雁
瀟湘何事等閑囘
瀟湘 何事ぞ 等閑に回る
- 瀟湘 … 瀟水と湘江(湘水)。洞庭湖に南から流れこむ二つの川の名。洞庭湖の南の流域一帯を指す。『水経注』湘水篇に「瀟とは、水清深なり。湘中記に曰く、湘川は清照なること五六丈、下、底の石を見ること樗蒲の矢の如く、五色鮮明なり。白沙は霜雪の如く、赤岸は朝霞の若し。是れ瀟湘の名を納るるなり」(瀟者、水清深也。湘中記曰、湘川清照五六丈、下見底石如樗蒲矢、五色鮮明。白沙如霜雪、赤岸若朝霞。是納瀟湘之名矣)とある。樗蒲は、ばくち。ウィキソース「水經注/38」参照。また、三国魏の曹植「雑詩六首」(『文選』巻二十九)の第四首に「朝に江北の岸に遊び、夕に瀟湘の沚に宿す」(朝遊江北岸、夕宿瀟湘沚)とある。ウィキソース「曹子建集 (四部叢刊本)/卷第五」参照。また、南朝斉の謝朓「新亭の渚にて范零陵に別るる詩」(『文選』巻二十)に「洞庭は楽を張るの地、瀟湘には帝子遊ぶ」(洞庭張樂地、瀟湘帝子遊)とある。帝子は、堯帝の二人の娘、娥皇と女英のこと。ウィキソース「新亭渚別范零陵詩」参照。
- 何事 … どういうわけで。どうして。
- 等閑 … 心にかけない。意に留めない。問題にしない。
- 回 … 北へ帰って行くのか。
水碧沙明兩岸苔
水碧に沙明らかにして両岸苔むす
- 水碧 … 水は青く澄んで。
- 沙明 … 砂は白く輝いて。
- 両岸苔 … 両方の岸にはみずみずしい苔が生じている。
二十五絃彈夜月
二十五絃 夜月に弾ずれば
- 二十五絃 … 二十五弦の瑟。『史記』封禅書に「或るひと曰く、太帝、素女をして五十弦の瑟を鼓せしむ。悲し、帝禁ずれども止まず。故に其の瑟を破りて二十五弦と為せり、と」(或曰、太帝使素女鼓五十弦瑟。悲、帝禁不止。故破其瑟爲二十五弦)とある。ウィキソース「史記/卷028」参照。
- 弾夜月 … (湘江の女神が)月夜の空に向かって弾く(のを聞くと)。
不勝清怨却飛來
清怨に勝えずして 却飛し来る
- 清怨 … 清らかで哀怨な調べ。清く哀れな音。
- 不勝 … 堪えきれず。堪えかねて。不堪に同じ。
- 却飛来 … 南方の瀟湘から北方へ飛び帰ること。来は、助辞。意味はない。簡野道明『唐詩選詳説』(明治書院、昭和四年)では「却飛せるならん」と読んでいる。また、「来」を助辞と見ない場合は「却って飛び来たらん」と読み、「一度北方へ飛び立ったが、また南方へ飛び帰ってくる」という解釈になる。
テキスト
- 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
- 『全唐詩』巻二百三十九(排印本、中華書局、1960年)
- 『増註三体詩』巻一・七言絶句・実接(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)
- 『銭考功集』巻十(『四部叢刊 初編集部』所収)
- 『銭考功集』巻十(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)
- 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十四(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
- 『唐詩品彙』巻四十九([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
- 『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
- 『唐詩別裁集』巻二十([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
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