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邙山(沈佺期)

邙山
邙山(ぼうざん)
沈(しん)佺(せん)期(き)
  • 七言絶句。塋・城・聲(下平声庚韻)。
  • ウィキソース「邙山」参照。
  • 邙山 … 北邙(ほくぼう)山(ざん)。洛陽の北にある黄土の平坦な山。後漢以来、王侯貴族の陵墓の多い所として有名。『大明一統志』河南府、山川の条に「北邙山は、府の城北一十里に在り、山は偃(えん)師(し)・鞏(きょう)・孟津(もうしん)の三県に連なり、綿亘(めんこう)すること四百余里、東漢の諸陵及び唐・宋の名臣の墳(はか)、多く此(ここ)に在り」(北邙山、在府城北一十里、山連偃師鞏孟津三縣、綿亘四百餘里、東漢諸陵及唐宋名臣墳、多在此)とある。綿亘は、長く連なり続くこと。ウィキソース「明一統志 (四庫全書本)/卷29」参照。
  • この詩は、墓地の代名詞である邙山の寂しい風景と、洛陽の町の歓楽とを対比させ、人生の無常なることを詠んだもの。
  • 沈佺期 … 656~714。初唐の詩人。字(あざな)は雲卿。相州内黄(河南省)の人。上元二年(675)、進士に及第。考功郎中となったが収賄罪で驩(かん)州(しゅう)(ベトナム)に流された。のち呼び戻されて中書舎人、太子少詹(せん)事(じ)に至った。宋之問とともに七言律詩の定型を作り出し、「沈宋」と呼ばれた。ウィキペディア【沈セン期】参照。
北邙山上列墳塋
北邙(ほくぼう)山(さん)上(じょう) 墳塋(ふんえい)列(つら)なり
  • 北邙山上 … 北邙山の上には。
  • 墳塋 … 墓。墳墓。墳は、土饅頭型の墓。塋は、墓地。
萬古千秋對洛城
万(ばん)古(こ)千(せん)秋(しゅう) 洛(らく)城(じょう)に対(たい)す
  • 万古千秋 … 千年も万年も。永遠に変わることなく。
  • 洛城 … 洛陽の町。城は、町全体を囲む城壁。
  • 対 … 向き合う。
城中日夕歌鐘起
城中(じょうちゅう) 日夕(にっせき) 歌(か)鐘(しょう)起(おこ)り
  • 城中 … 洛陽の町の中。
  • 日夕 … 夕方。夕暮れ。日暮れ。『詩経』王風・君子于(う)役(えき)に「日の夕べ、羊(よう)牛(ぎゅう)下(くだ)り来(きた)る」(日之夕矣、羊牛下來)とある。于役は、国が義務として課した戦争や労働に行くこと。于は、往(ゆ)く。羊牛は、羊(ひつじ)と牛。ウィキソース「詩經/君子于役」参照。また、三国魏の王粲「従軍詩五首」(『文選』巻二十七)の第五首に「日夕涼風発し、翩翩(へんぺん)として吾が舟を漂(ただ)わす」(日夕涼風發、翩翩漂吾舟)とある。翩翩は、ここではゆらゆらと揺れるさま。ウィキソース「從軍詩 (王粲)」参照。また、東晋の陶潜の詩「飲酒二十首」(『陶淵明集』巻三、『文選』巻三十では「雑詩二首其一」に作る)の第五首に「山気 日夕に佳(よ)く、飛(ひ)鳥(ちょう) 相与(あいとも)に還る」(山氣日夕佳、飛鳥相與還)とある。ウィキソース「飲酒二十首」参照。また、南朝梁の何遜「日夕に江を望み、魚司馬に贈る」詩(『玉台新詠』巻五)に「日夕に高城を望めば、耿耿(こうこう)たり青雲の外(ほか)」(日夕望高城、耿耿青雲外)とある。耿耿は、きらきらと輝く様子。ウィキソース「日夕望江贈魚司馬」参照。
  • 歌鐘 … 歌声や伴奏の鐘の音。
山上唯聞松柏聲
山(さん)上(じょう) 唯(た)だ聞(き)く 松(しょう)柏(はく)の声(こえ)
  • 山上 … 北邙山の山上。
  • 上 … 『文苑英華』では「下」に作る。
  • 松柏 … 松と柏(コノテガシワ)。墓地に植えられる木。天子の陵墓には松を植え、諸侯の陵墓には柏を植えたという。コノテガシワについては、ウィキペディア【コノテガシワ】参照。『詩経』商頌・殷武に「彼(か)の景山(けいざん)に陟(のぼ)れば、松(しょう)柏(はく)丸丸(がんがん)たり、是(こ)れ断(た)ち是(こ)れ遷(うつ)し、方(まさ)に斲(けず)り是(こ)れ虔(き)る」(陟彼景山、松柏丸丸、是斷是遷、方斲是虔)とある。景山は、商の都に近くにある山の名。陟は、登る。丸丸は、すらりとよく伸びている様子。断は、切り取ること。遷は、運搬すること。斲は、斧で削ること。虔は、木を伐ること。ウィキソース「詩經/殷武」参照。また「古詩十九首」(『文選』巻二十九)の第十三首に「白楊(はくよう)何(なん)ぞ蕭蕭(しょうしょう)たる、松(しょう)栢(はく)広(こう)路(ろ)を夾(はさ)む」(白楊何蕭蕭、松栢夾廣路)とある。ウィキソース「驅車上東門」参照。同じく第十四首に「古墓(こぼ)は犂(す)かれて田(た)と為(な)り、松(しょう)柏(はく)は摧(くだ)かれて薪(たきぎ)と為(な)る」(古墓犁爲田、松柏摧爲薪)とある。ウィキソース「去者日以疎」参照。
  • 声 … 風に鳴る寂しい葉音。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻九十七(排印本、中華書局、1960年)
  • 『沈佺期集』巻下([明]許自昌編、『前唐十二家詩』所収、万暦三十一年刊、内閣文庫蔵)
  • 『沈佺期集』巻四(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)
  • 『文苑英華』巻三百六(影印本、中華書局、1966年)
  • 『唐詩品彙』巻四十六([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『古今詩刪』巻二十一(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
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