同韋舎人早朝(沈佺期)
同韋舍人早朝
韋舎人の早朝に同ず
韋舎人の早朝に同ず
- 五言排律。開・來・催・材・囘・陪(上平声灰韻)。
- ウィキソース「和韋舍人早朝」参照。
- 詩題 … 『全唐詩』では「和韋舍人早朝」に作る。『文苑英華』では「早朝」に作り、題下に「集作同韋舍人早朝」と注する。
- 韋舎人 … 韋承慶(640~706)。字は延休。思謙の子。鄭州陽武県(河南省原陽県)の人。則天武后の長寿年間(692~694)に鳳閣舎人となった。また、弟の韋嗣立(660~719)も鳳閣舎人となっているので、二人のうちのどちらかを指すのであろう。鳳閣舎人は詔勅の作成などを掌る官職で、中書舎人の異名。則天武后が権力を掌握し始めたときに中書省を鳳閣と改名した。『新唐書』巻四十七、志第三十七、百官二の中書省に「光宅元年(684)、中書省を改め、鳳閣と曰う」(光宅元年、改中書省、曰鳳閣)とある。ウィキソース「新唐書/卷047」参照。
- 早朝 … 朝早く朝廷に出仕すること。
- 同 … 韋舎人が朝早く参内した折に作った詩に和韻したもの。『全唐詩』では「和」に作る。ちなみに和韻には、依韻・用韻・次韻の三種がある。「依韻」は原作と同類の韻を用いること。「用韻」は原作に用いられている韻字を順不同でそのまま用いること。「次韻」は原作と同一の字を同一の順に用いること。
- 沈佺期 … 656~714。初唐の詩人。字は雲卿。相州内黄(河南省)の人。上元二年(675)、進士に及第。考功郎中となったが収賄罪で驩州(ベトナム)に流された。のち呼び戻されて中書舎人、太子少詹事に至った。宋之問とともに七言律詩の定型を作り出し、「沈宋」と呼ばれた。ウィキペディア【沈セン期】参照。
閶闔連雲起
閶闔 雲に連なって起り
- 閶闔 … 天門。天上界の門。天帝の住まいである紫微宮の門。ここでは、皇居の門を指す。『楚辞』離騒に「吾、帝閽をして関を開かしめんとすれば、閶闔に倚りて予を望む」(吾令帝閽開關兮、倚閶闔而望予)とある。帝閽は、天帝の門番。ウィキソース「楚辭/離騷」参照。また『淮南子』原道訓に「扶揺に抮し、羊角を抱いて上り、山川を経紀し、崑崙を蹈騰し、閶闔を排き、天門に淪る」(抮扶搖、抱羊角而上、經紀山川、蹈騰崑崙、排閶闔、淪天門)とある。ウィキソース「淮南子/原道訓」参照。また『三輔黄図』に「(建章)宮の正門を閶闔と曰う」(宮之正門曰閶闔)とある。ウィキソース「三輔黃圖/卷之二」参照。
- 連雲起 … 雲まで続くほど高くそびえ立っている。
巖廊拂霧開
巌廊 霧を払って開く
- 巌廊 … 高く厳かな回廊。
- 払霧開 … 朝霧を払って目の前に現れる。
玉珂龍影度
玉珂 竜影度り
- 玉珂 … 馬の轡につける玉の飾り。触れ合って音を発する。晋の張華の楽府「軽薄篇」(『楽府詩集』巻六十七)に「文軒羽蓋を樹て、馬に乗りて玉珂を鳴らす」(文軒樹羽蓋、乘馬鳴玉珂)とある。文軒は、飾った車。羽蓋は、車のおおいに翡翠を用いたもの。王侯の車に用いた。ウィキソース「樂府詩集/067卷」参照。また、陳の後主の楽府「紫騮馬」第一首に「玉珂 広路に鳴り、金絡 晨輝に耀く」(玉珂鳴廣路、金絡耀晨輝)とある。金絡は、黄金で作った面懸(馬の頭の上から轡にかけて飾りにする紐)。晨輝は、朝日の光。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷108」参照。
- 竜影 … (参内する百官たちが乗馬している)駿馬の姿。「竜」は背の高さ八尺以上の馬。すぐれて立派な馬。「影」は姿。『周礼』夏官司馬に「馬八尺以上を竜と為す」(馬八尺以上爲龍)とある。ウィキソース「周禮/夏官司馬」参照。
- 度 … 進み行く。
珠履雁行來
珠履 雁行来る
- 珠履 … 真珠の飾りをつけた靴。
- 雁行 … 雁が列を作って飛んで行くように、百官が整然と並んで進んで行くことの喩え。
- 来 … 向こうからやって来る。近寄ってくる。
長樂宵鐘盡
長楽 宵鐘尽き
- 長楽 … 漢代の宮殿の名。長楽宮。鐘撞き堂があった。
- 宵鐘 … 夜の鐘。『史記』淮陰侯列伝の注(正義)に「長楽宮は懸鍾の室」(長樂宮懸鍾之室)とある。ウィキソース「史記三家註/卷092」参照。
- 盡 … 鳴り終わった。『全唐詩』には「一作徹」と注する。
明光曉奏催
明光 暁奏催す
- 明光 … 漢代の宮殿の名。明光殿。
- 暁奏 … 朝、天子に奏上すること。
- 催 … 促す(声がしている)。
一經傳舊德
一経 旧徳を伝え
五字擢英材
五字 英材を擢んず
- 五字 … 魏の鍾会(225~264)の故事に基づく。司馬師(208~255、司馬懿の長男)が中書郎の虞松に命じて上奏文を起草させたが、気に入らず、何度も書き直させた。それを見た鍾会は虞松の原稿を読んで五字だけ書き直してやった。虞松は喜んで司馬師に見せ、鍾会が訂正してくれたことも伝えたところ、「真に王佐の才なり」と司馬師から称賛されたという。鍾会についてはウィキペディア【鍾会】参照。
- 英材 … すぐれた才能。英才。材は、『全唐詩』では「才」に作る。
- 擢 … 抜擢された。『文苑英華』では「選」に作り、「集作擢」と注する。
儼若神仙去
儼として神仙の去りて
- 儼若 … まさしく~のようだ。さながら~のようだ。
- 神仙去 … 仙人が天上に去って行くかのように。
紛從霄漢囘
紛として霄漢より回るが若し
- 紛 … (仙人が天上から)ひらひらと舞い降りるさま。
- 霄漢 … 天上。霄は、大空。漢は、天の川。
- 従 … 「より」と読み、「~から」と訳す。時間・場所の起点の意を示す。「自」と同じ。
- 回 … 帰ってきた。舞い戻ってきた。
千春奉休曆
千春 休暦を奉じ
- 千春 … 千年。
- 休暦 … 太平の御世。休は、美・善の意。暦は、暦数。
- 奉 … 仰ぎ奉る。
- 千春奉休暦 … 『文苑英華』では「客人朝與夕」に作り、「集作千春奉休暦」と注する。
分禁喜趨陪
分禁 趨陪を喜ぶ
- 分禁 … 禁中の勤務場所を異にすること。作者は考功郎中として尚書省に所属し、韋舎人は中書省に所属していた。
- 趨陪 … 天子のそばに仕えること。趨は、おもむく。走る。陪は、そばに並んでお供をする。
- 喜 … 嬉しく思っている。
テキスト
- 『箋註唐詩選』巻四(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
- 『全唐詩』巻九十七(排印本、中華書局、1960年)
- 『沈佺期集』巻下([明]許自昌編、『前唐十二家詩』所収、万暦三十一年刊、内閣文庫蔵)
- 『沈佺期集』巻三(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)
- 『文苑英華』巻一百九十(影印本、中華書局、1966年)
- 『唐詩品彙』巻七十二([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
- 『唐詩別裁集』巻十七([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
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