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同韋舎人早朝(沈佺期)

同韋舍人早朝
舎人しゃじんそうちょうどう
しんせん
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻四、『全唐詩』巻九十七、『沈佺期集』巻下(『前唐十二家詩』所収)、『沈佺期集』巻三(『唐五十家詩集』所収)、『文苑英華』巻一百九十、『唐詩品彙』巻七十二、『唐詩別裁集』巻十七、他
  • 五言排律。開・來・催・材・囘・陪(平声灰韻)。
  • ウィキソース「和韋舍人早朝」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』では「和韋舍人早朝」に作る。『文苑英華』では「早朝」に作り、題下に「集作同韋舍人早朝」とある。
  • 韋舎人 … 韋承慶(640~706)。あざなは延休。思謙の子。鄭州陽武県(河南省原陽県)の人。則天武后の長寿年間(692~694)に鳳閣舎人となった。また、弟の韋嗣立(660~719)も鳳閣舎人となっているので、二人のうちのどちらかを指すのであろう。鳳閣舎人は詔勅の作成などを司る官職で、中書舎人の異名。則天武后が権力を掌握し始めたときに中書省を鳳閣と改名した。『新唐書しんとうじょ』巻四十七、志第三十七、百官二の中書省に「光宅元年(684)、中書省を改め、鳳閣と曰う」(光宅元年、改中書省、曰鳳閣)とある。ウィキソース「新唐書/卷047」参照。
  • 早朝 … 朝早く朝廷にしゅっすること。
  • 同 … 韋舎人が朝早く参内さんだいした折に作った詩に和韻したもの。『全唐詩』では「和」に作る。ちなみに和韻には、依韻・用韻・次韻の三種がある。「依韻」は原作と同類の韻を用いること。「用韻」は原作に用いられている韻字を順不同でそのまま用いること。「次韻」は原作と同一の字を同一の順に用いること。
  • 沈佺期 … 656~714。初唐の詩人。あざなは雲卿。相州内黄(河南省)の人。上元二年(675)、進士に及第。考功郎中となったが収賄罪でかんしゅう(ベトナム)に流された。のち呼び戻されて中書舎人、太子少せんに至った。宋之問とともに七言律詩の定型を作り出し、「沈宋」と呼ばれた。ウィキペディア【沈セン期】参照。
閶闔連雲起
しょうこう くもつらなっておこ
  • 閶闔 … もと天上界の紫微宮にある門。借りて皇居の門。
  • 連雲起 … 雲まで続くほど高くそびえ立っている。
巖廊拂霧開
巌廊がんろう きりはらってひら
  • 巌廊 … 高く厳かな回廊。
  • 払霧開 … 朝霧を払って目の前に現れる。
玉珂龍影度
ぎょく りゅうえいわた
  • 玉珂 … 馬のくつわにつける玉の飾り。馬の歩みにつれて美しい音をたてる。
  • 竜影 … (参内する百官たちが乗馬している)駿しゅんの姿。「竜」は背の高さ八尺以上の馬。すぐれて立派な馬。「影」は姿。『周礼しゅらい』夏官司馬に「馬八尺以上を竜と為す」(馬八尺以上爲龍)とある。ウィキソース「周禮/夏官司馬」参照。
  • 度 … 進み行く。
珠履雁行來
しゅ 雁行がんこうきた
  • 珠履 … 真珠の飾りをつけた靴。
  • 雁行 … 雁が列を作って飛んで行くように、百官が整然と並んで進んで行くことの喩え。
  • 雁 … 『前唐十二家詩本』『唐五十家詩集本』『文苑英華』『唐詩品彙』では「鴈」に作る。同義。
  • 来 … 向こうからやって来る。近寄ってくる。
長樂宵鐘盡
ちょうらく 宵鐘しょうしょう
  • 長楽 … 漢代の宮殿の名。長楽宮。鐘撞き堂があった。
  • 宵鐘 … 夜の鐘。『史記』淮陰侯列伝の注(正義)に「長楽宮は懸鍾の室」(長樂宮懸鍾之室)とある。ウィキソース「史記三家註/卷092」参照。
  • 鐘 … 『文苑英華』では「鍾」に作る。同義。
  • 盡 … 鳴り終わった。『全唐詩』には「一作徹」とある。
明光曉奏催
明光めいこう ぎょうそううなが
  • 明光 … 漢代の宮殿の名。明光殿。
  • 暁奏 … 朝、天子に奏上すること。
  • 催 … 促す(声がしている)。
一經傳舊德
一経いっけい きゅうとくつた
  • 一経 … 一部の経書。『漢書かんじょ』巻七十三、けん伝に見える故事。漢の韋賢(前142~前61)は学問を好み、宰相に至った。その子の玄成も父の学問を継ぎ、出世して宰相となった。当時、「子に黄金をかごいっぱい残すよりは、たった一部の経書を残してやった方がよい」(子に黄金満籯まんえいのこすは、一経にかず)という諺が流行ったという。ウィキソース「漢書/卷073」参照。また、韋賢についてはウィキペディア【韋賢】参照。
  • 旧徳 … 父上の遺徳。
  • 傳 … 伝える。『全唐詩』では「推」に作り、「一作傳」とある。『文苑英華』では「推」に作り、「集作傳」とある。
五字擢英材
五字ごじ 英材えいざいぬきんず
  • 五字 … 魏のしょうかい(225~264)の故事に基づく。司馬師(208~255、司馬の長男)が中書郎のしょうに命じて上奏文を起草させたが、気に入らず、何度も書き直させた。それを見た鍾会は虞松の原稿を読んで五字だけ書き直してやった。虞松は喜んで司馬師に見せ、鍾会が訂正してくれたことも伝えたところ、「真に王佐の才なり」と司馬師から称賛されたという。鍾会についてはウィキペディア【鍾会】参照。
  • 英材 … すぐれた才能。英才。「材」は『全唐詩』では「才」に作る。
  • 擢 … 抜擢された。『文苑英華』では「選」に作り、「集作擢」とある。
儼若神仙去
げんとして神仙しんせんりて
  • 儼若 … まさしく~のようだ。さながら~のようだ。
  • 神仙去 … 仙人が天上に去って行くかのように。
紛從霄漢囘
ふんとしてしょうかんよりかえるがごと
  • 紛 … (仙人が天上から)ひらひらと舞い降りるさま。
  • 霄漢 … 天上。「霄」は大空。「漢」は天の川。
  • 従 … 「より」と読み、「~から」と訳す。時間・場所の起点の意を示す。「自」と同じ。
  • 回 … 帰ってきた。舞い戻ってきた。『全唐詩』では「迴」に作る。『文苑英華』では「廻」に作る。
千春奉休曆
せんしゅん きゅうれきほう
  • 千春 … 千年。
  • 休暦 … 太平の御世。「休」は美・善の意。「暦」は暦数。
  • 奉 … 仰ぎ奉る。
  • 千春奉休暦 … 『文苑英華』では「客人朝與夕」に作り、「集作千春奉休暦」とある。
分禁喜趨陪
分禁ぶんきん 趨陪すうばいよろこ
  • 分禁 … 禁中の勤務場所を異にすること。作者は考功郎中として尚書省に所属し、韋舎人は中書省に所属していた。
  • 趨陪 … 天子のそばに仕えること。「趨」は、おもむく。走る。「陪」は、そばに並んでお供をする。
  • 喜 … 嬉しく思っている。
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