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酬蘇員外味玄夏晩寓直省中見贈(沈佺期)

酬蘇員外味玄夏晩寓直省中見贈
蘇(そ)員外(いんがい)味(み)玄(げん)が夏(か)晩(ばん)、省中(しょうちゅう)に寓(ぐう)直(ちょく)して贈(おく)らるるに酬(むく)ゆ
沈(しん)佺(せん)期(き)
  • 五言排律。闈・衣・微・歸・飛・輝(上平声微韻)。
  • ウィキソース「酬蘇員外味道夏晚寓直省中見贈」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』では「酬蘇員外味道夏晩寓直省中見贈」に作る。『文苑英華』では「同蘇員外味玄夏晩寓直省中」に作る。『唐詩別裁集』では「同蘇員外味元夏晩寓直省中見贈」に作る。
  • 蘇員外味玄 … 蘇味玄は蘇味道の弟であるが、人物については不詳。員外は官名で定員外の官。員外郎。『全唐詩』では「蘇員外味道」に作る。
  • 寓直 … 本来は自分の勤務する官庁以外の役所に宿直することであるが、ここでは単に宿直の意に使っていると思われる。
  • 見 … 「る」「らる」と読み、「~される」と訳す。受身の意を示す。「らるる」は「らる」の連体形。
  • 酬 … お返しをする。ここでは蘇味玄が詩を作って贈ってきたので、作者がこの詩を作って答えたもの。
  • 沈佺期 … 656~714。初唐の詩人。字(あざな)は雲卿。相州内黄(河南省)の人。上元二年(675)、進士に及第。考功郎中となったが収賄罪で驩(かん)州(しゅう)(ベトナム)に流された。のち呼び戻されて中書舎人、太子少詹(せん)事(じ)に至った。宋之問とともに七言律詩の定型を作り出し、「沈宋」と呼ばれた。ウィキペディア【沈セン期】参照。
竝命登仙閣
並(なら)びに命(めい)ぜられて仙閣(せんかく)に登(のぼ)り
  • 並命 … 「命(めい)を並(とも)にして」と読んでもよい。二人とも尚書省の員外郎に任命されたことを指す。
  • 仙閣 … 尚書省の異名。
通宵直禮闈
通(つう)宵(しょう) 礼(れい)闈(い)に直(ちょく)す
  • 通霄 … 一晩中。『全唐詩』では「分曹」(曹を分って)に作り、「曹」に対し「一作霄」と注する。分曹は、尚書省内の各部局に分かれての意。『前唐十二家詩』では「分霄」に作る。『文苑英華』では「分宵」に作る。
  • 礼闈 … 尚書省の別名。
  • 直 … 宿直する。
太官供宿膳
太官(たいかん) 宿(しゅく)膳(ぜん)を供(きょう)し
  • 太官 … 宮中の食膳を掌る官名。「大官」とも書く。
  • 宿膳 … 宿直者のための夜食の膳。
侍史護朝衣
侍史(じし) 朝(ちょう)衣(い)を護(まも)る
  • 侍史 … 天子または大官の身の回りの世話をする女官。
  • 朝衣 … 朝廷に出仕するときの服。朝服。『史記』司馬相如列伝に「是(ここ)に於いて吉日を暦(えら)び以て斉戒し、朝衣を襲(き)、法(ほう)駕(が)に乗る」(於是暦吉日以齊戒、襲朝衣、乘法駕)とある。法駕は、天子の乗り物。ウィキソース「史記/卷117」参照。また、西晋の張協「史を詠ぜし詩」(『文選』巻二十一)に「簪(しん)を抽(ぬ)き朝衣を解き、髪を散じて海隅(かいぐう)に帰る」(抽簪解朝衣、散髮歸海隅)とある。簪は、冠をとめるために髪にさすもの。海隅は、海の片ほとり。ウィキソース「詠史詩 (張協)」参照。
  • 護 … 手入れをしてくれる。
卷幔天河入
幔(とばり)を巻(ま)けば天(てん)河(が)入(い)り
  • 幔 … とばり。幕。
  • 巻 … 捲き上げる。
  • 天河 … 天の川。
  • 入 … 部屋の中に入ってくる。
開窓月露微
窓(まど)を開(ひら)けば月(げつ)露(ろ)微(び)なり
  • 開窓 … 『全唐詩』『唐詩別裁集』には「一作當階、又作披庭」と注する。『文苑英華』では「當階」に作り、「集作開牎初學記作披庭」と注する。
  • 月露 … 月の光に照らされた夜露。
  • 微 … 微かに光っている。
小池殘暑退
小(しょう)池(ち) 残暑(ざんしょ)退(しりぞ)き
  • 小池 … 小さな池のほとり。
高樹早涼歸
高樹(こうじゅ) 早(そう)涼(りょう)帰(かえ)る
  • 高樹 … 高い木々の上。
  • 早涼 … 初秋の涼しさ。
  • 早 … 『全唐詩』には「一作晩」と注する。
冠劍無時釋
冠剣(かんけん) 時(とき)として釈(と)く無(な)く
  • 冠剣 … 冠も帯剣も。
  • 無時釈 … 一時も身体からはずすことがない。釈は、ぬぐ。はずす。
軒車待漏飛
軒車(けんしゃ) 漏(ろう)を待(ま)って飛(と)ぶ
  • 軒車 … 身分の高い人が乗る乗物。轅(ながえ)が弓形に曲がっている。
  • 待漏 … 参内(さんだい)の時刻を待つ。漏は、漏刻。水時計。
  • 飛 … 軒車を飛ばす。飛ぶように軒車を走らせる。
明朝題漢柱
明朝(みょうちょう) 漢(かん)柱(ちゅう)に題(だい)せられ
  • 題漢柱 … 漢の朝廷の柱に名前が記されること。後漢の田鳳という人が尚書郎になったとき、容姿がはなはだ端正であったため、霊帝が感心して、賞讃の言葉を宮殿の柱に書きつけた故事に基づく。
三署有光輝
三署(さんしょ) 光(こう)輝(き)有(あ)らん
  • 三署 … 三つの署(役所)。本来は漢代の五官中郎署・左中郎署・右中郎署のこと。ここでは唐の尚書省・中書省・門下省の三省を指す。
  • 有光輝 … 輝きが生ずることであろう。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻四(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻九十七(排印本、中華書局、1960年)
  • 『沈佺期集』巻下([明]許自昌編、『前唐十二家詩』所収、万暦三十一年刊、内閣文庫蔵)
  • 『沈佺期集』巻三(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)
  • 『文苑英華』巻一百九十(影印本、中華書局、1966年)
  • 『唐詩品彙』巻七十二([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『唐詩別裁集』巻十七([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
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