酬蘇員外味玄夏晩寓直省中見贈(沈佺期)
酬蘇員外味玄夏晩寓直省中見贈
蘇員外味玄が夏晩、省中に寓直して贈らるるに酬ゆ
蘇員外味玄が夏晩、省中に寓直して贈らるるに酬ゆ
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻四、『全唐詩』巻九十七、『沈佺期集』巻下(『前唐十二家詩』所収)、『沈佺期集』巻三(『唐五十家詩集』所収)、『文苑英華』巻一百九十、『唐詩品彙』巻七十二、『唐詩別裁集』巻十七、他
- 五言排律。闈・衣・微・歸・飛・輝(平声微韻)。
- ウィキソース「酬蘇員外味道夏晚寓直省中見贈」参照。
- 詩題 … 『全唐詩』では「酬蘇員外味道夏晩寓直省中見贈」に作る。『文苑英華』では「同蘇員外味玄夏晩寓直省中」に作る。『唐詩別裁集』では「同蘇員外味元夏晩寓直省中見贈」に作る。
- 蘇員外味玄 … 蘇味玄は蘇味道の弟であるが、人物については不明。員外は官名で定員外の官。員外郎。『全唐詩』では「蘇員外味道」に作る。
- 寓直 … 本来は自分の勤務する官庁以外の役所に宿直することであるが、ここでは単に宿直の意に使っていると思われる。
- 見 … 「る」「らる」と読み、「~される」と訳す。受身の意を示す。「らるる」は「らる」の連体形。
- 酬 … お返しをする。ここでは蘇味玄が詩を作って贈ってきたので、作者がこの詩を作って答えたもの。
- 沈佺期 … 656~714。初唐の詩人。字は雲卿。相州内黄(河南省)の人。上元二年(675)、進士に及第。考功郎中となったが収賄罪で驩州(ベトナム)に流された。のち呼び戻されて中書舎人、太子少詹事に至った。宋之問とともに七言律詩の定型を作り出し、「沈宋」と呼ばれた。ウィキペディア【沈セン期】参照。
竝命登仙閣
並びに命ぜられて仙閣に登り
- 並命 … 「命を並にして」と読んでもよい。二人とも尚書省の員外郎に任命されたことを指す。
- 仙閣 … 尚書省の異名。
通宵直禮闈
通宵 礼闈に直す
- 通霄 … 一晩中。『全唐詩』では「分曹」(曹を分って)に作り、「曹」に対し「一作霄」とある。「分曹」は、尚書省内の各部局に分かれての意。『前唐十二家詩』では「分霄」に作る。『文苑英華』では「分宵」に作る。
- 礼闈 … 尚書省の別名。
- 直 … 宿直する。
太官供宿膳
太官 宿膳を供し
- 太官 … 宮中の食膳を司る官名。「大官」とも書く。
- 宿膳 … 宿直者のための夜食の膳。
侍史護朝衣
侍史 朝衣を護る
- 侍史 … 天子または大官の身の回りの世話をする女官。
- 朝衣 … 朝廷に出仕するときの服。朝服。
- 護 … 手入れをしてくれる。
卷幔天河入
幔を巻けば天河入り
- 幔 … とばり。幕。
- 巻 … 捲き上げる。
- 天河 … 天の川。
- 入 … 部屋の中に入ってくる。
開窓月露微
窓を開けば月露微なり
- 開窓 … 『全唐詩』『唐詩別裁集』では「開窗」に作り、「一作當階、又作披庭」とある。『文苑英華』では「當階」に作り、「集作開牎初學記作披庭」とある。『唐詩品彙』では「開牎」に作る。「窓」は、底本では「窻」に作る。「窗」「牕」「牎」とともに「窓」の異体字。
- 月露 … 月の光に照らされた夜露。
- 微 … 微かに光っている。
小池殘暑退
小池 残暑退き
- 小池 … 小さな池のほとり。
高樹早涼歸
高樹 早涼帰る
- 高樹 … 高い木々の上。
- 早涼 … 初秋の涼しさ。
- 早 … 『全唐詩』には「一作晩」とある。
- 涼 … 『唐五十家詩集本』『文苑英華』『唐詩別裁集』では「凉」に作る。異体字。
冠劍無時釋
冠剣 時として釈く無く
- 冠剣 … 冠も帯剣も。
- 無時釈 … 一時も身体からはずすことがない。「釈」は、ぬぐ。はずす。
軒車待漏飛
軒車 漏を待って飛ぶ
- 軒車 … 身分の高い人が乗る乗物。轅が弓形に曲がっている。
- 待漏 … 参内の時刻を待つ。「漏」は漏刻。水時計。
- 飛 … 軒車を飛ばす。飛ぶように軒車を走らせる。
明朝題漢柱
明朝 漢柱に題せられ
- 題漢柱 … 漢の朝廷の柱に名前が記されること。後漢の田鳳という人が尚書郎になったとき、容姿がはなはだ端正であったため、霊帝が感心して、賞讃の言葉を宮殿の柱に書きつけた故事に基づく。
三署有光輝
三署 光輝有らん
- 三署 … 三つの署(役所)。本来は漢代の五官中郎署・左中郎署・右中郎署のこと。ここでは唐の尚書省・中書省・門下省の三省を指す。
- 有光輝 … 輝きが生ずることであろう。
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