奉和聖製従蓬萊向興慶閣道中留春雨中春望之作応制(王維)
奉和聖製從蓬萊向興慶閣道中留春雨中春望之作應制
聖製「蓬萊従り興慶に向う閣道中の留春にて、雨中春望の作」に和し奉る 応制
聖製「蓬萊従り興慶に向う閣道中の留春にて、雨中春望の作」に和し奉る 応制
- 七言律詩。斜・花・家・華(平声麻韻)。
- 聖 … 『全唐詩』には「一作御」とある。
- 聖製 … 天子の作られた詩歌。御製。
- 蓬萊 … 宮殿の名。東の内裏大明宮の別名。
- 興慶 … 宮殿の名。南の内裏興慶宮。
- 閣道 … 高架の廊下。二階造りの渡り廊下。
- 留春 … 小宮殿の名。留春閣。「去りゆく春を惜しむ」とする解釈もある。
- 雨中春望 … 春雨にけぶる屋外の風景を望む。
- 応制 … 天子の命令によって作った詩文。
- この詩と同じ題の詩が李憕にもある。
- 王維 … 699?~761。盛唐の詩人、画家。太原(山西省)の人。字は摩詰。開元七年(719)、進士に及第。安禄山の乱で捕らえられたが事なきを得、乱後は粛宗に用いられて尚書右丞(書記官長)まで進んだので、王右丞とも呼ばれる。また、仏教に帰依したため、詩仏と称される。『王右丞集』十巻(または六巻)がある。ウィキペディア【王維】参照。
渭水自縈秦塞曲
渭水は自ずから秦塞を縈って曲り
- 渭水 … 黄河最大の支流。渭河とも。甘粛省隴西県の鳥鼠山に源を発し、長安を過ぎ、最後に黄河に合流する。ウィキペディア【渭水】参照。『書経』禹貢篇に「渭を導き、鳥鼠同穴より、東して灃に会し、又た東して涇に会し、又た東して漆・沮を過ぎ、河に入る」(導渭、自鳥鼠同穴、東會于灃、又東會于涇、又東過漆沮、入于河)とある。ウィキソース「尚書/禹貢」参照。また『山海経』西山経に「又た西二百二十里を、鳥鼠同穴の山と曰う。其の上に白虎・白玉多し。渭水焉より出でて、東流して河に注ぐ」(又西二百二十里、曰鳥鼠同穴之山。其上多白虎白玉。渭水出焉、而東流注于河)とある。ウィキソース「山海經/西山經」参照。
- 縈 … めぐる。
- 秦塞 … 昔の秦の国。とくにその都だった咸陽を指す。四方が塞がっていたので秦塞といった。
- 塞 … 『全唐詩』には「一作甸」とある。
黄山舊繞漢宮斜
黄山は旧と漢宮を繞って斜めなり
- 黄山 … 長安の西北、今の興平の近くにある山。漢の恵帝がここに黄山宮を建てた。
- 旧 … 昔のまま。
- 繞 … とりまく。
- 漢宮 … 黄山宮のこと。
- 斜 … 斜面を見せている。
鑾輿迥出千門柳
鑾輿迥かに出づ 千門の柳
- 鑾輿 … 天子の乗る車。
- 千 … 『全唐詩』には「一作仙」とある。
- 千門 … 宮殿の門。「仙門」だと蓬萊宮の門という意になる。
閣道廻看上苑花
閣道廻り看る 上苑の花
- 廻 … 『全唐詩』には「一作遙」とある。
- 上苑 … 上林苑。ここでは唐の御苑を指す。ウィキペディア【上林苑】参照。
雲裏帝城雙鳳闕
雲裏の帝城 双鳳闕
- 双鳳闕 … 一対の鳳凰を飾りつけた宮城の門。
雨中春樹萬人家
雨中の春樹 万人の家
- 万人家 … 万戸の家。長安の町家。
爲乘陽氣行時令
陽気に乗じて時令を行わんが為にして
- 陽気 … 春の気。
- 時令 … 時節に応じた政令。
不是宸遊玩物華
是れ宸遊 物華を玩ぶにあらず
- 宸遊 … 天子が出かけること。行幸。
- 玩 … 『全唐詩』には「一作重」とある。
- 物華 … 時節のすぐれた景色。
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